レジ袋有料化をチャンスに。海外のユニークな脱プラ事例から考える、サステナブルな小売の未来

レジ袋有料化をチャンスに。海外のユニークな脱プラ事例から考える、サステナブルな小売の未来


使い捨てされたプラスチック製品が行き着く場所、海。いま世界の海では海洋プラスチック問題による生態系への影響が深刻化しています。欧州を中心にストローやスプーンなどの使い捨てプラスチック製品に関する規制が進む中、日本では2020年7月1日よりレジ袋の有料化がスタートしました。小売業界がレジ袋の削減をきっかけに脱プラの動きを加速させるためには、今後どういった取り組みが必要になるのでしょうか。既に脱プラの動きが加速している海外の事例からそのヒントを探っていきます。

目次

1. 脱プラはなぜ必要?その動向は

スーパーのレジ袋や食品トレーなど、私たちの生活のあらゆる場面で利用されているプラスチック製品。プラスチックは様々な形に成形しやすく、軽量で丈夫。非常に便利な素材です。一方で、その便利さから世界中でプラスチックの生産量は増え、海洋プラスチック問題や地球温暖化を引き起こす原因にもなっています。

プラスチック廃棄量の予測

2017年に公表されたScience advancesの報告書によれば、1950年以降に生産されたプラスチックは83億トンを超え、63億トンがごみとして廃棄されています。回収されたプラスチックごみの79%が埋立あるいは海洋等へ投棄され、リサイクルされているプラスチックは9%に過ぎません。現状のペースでは、2050年までに120億トン以上のプラスチックが埋立・自然投棄される予測で、海洋中のプラスチック量が魚の量以上に増加すると言われています。

海洋へ放棄されたプラスチックで、特に問題になるのが「マイクロプラスチック」です。プラスチックごみの多くは、川から海へ流れ、波や紫外線の影響を受けることで細かく砕かれ、小さなプラスチックの粒子となります。5mm以下になったプラスチックはマイクロプラスチックと呼ばれ、世界中の海に存在しています。プラスチックは容易に自然分解されることはなく、多くが数百年以上の間、残り続けます。

このマイクロプラスチックを海洋生物が体内に取り込み、食物連鎖を通して私たちの体内にも蓄積されていると言われています。2019年には、WWF(世界自然保護基金)が「平均的すると人は1週間にクレジットカード1枚分(約5g)のプラスチックを摂取していることが分かった」と発表しました。マイクロプラスチックによる人体への影響はまだ研究中ですが、海洋中に漂うマイクロプラスチックを回収することはほぼ不可能なので、世界ではプラスチックごみ自体を削減する方向に動いています。

産業セクター別の世界のプラスチック生産量(2015)

また、2018年に発表されたUNEPの報告書『シングルユースプラスチック』によれば、2015年のプラスチック生産量を産業セクター別にみると、容器包装セクターのプラスチック生産量が最も多く、全体の36%を占めています。各国の一人当たりのプラスチック容器包装の廃棄量を比較すると、日本が米国に次いで世界2位であり、小売業界での過剰なプラスチック使用が露呈する結果となりました。

レジ袋に限って言えば、日本で毎年排出される廃プラスチックのうち、レジ袋が占める割合は2%程度で、プラスチックごみ削減の効果を疑う声もあります。しかし、レジ袋は一般消費者の生活に深く浸透し、使い捨てプラスチック製品の象徴とも言えるものです。経済産業省のウェブサイトには、レジ袋有料化の目的について「普段何気なくもらっているレジ袋を有料化することで、それが本当に必要かを考えていただき、私たちのライフスタイルを見直すきっかけとすることを目的としています」と記されており、レジ袋の削減をきっかけに海洋プラスチック問題をはじめとした地球規模の課題に関心を向けることが必要だとわかります。

では、小売業界がレジ袋の削減をきっかけに脱プラの動きを加速させるためには、今後どういった取り組みが必要になるのでしょうか。既に脱プラの動きが加速している海外の事例からそのヒントを探っていきます。

2. 海外のユニークな脱プラアイデアとは?

2-1. バラ野菜用のリユース可能なネット袋


英国の大手スーパーチェーン「Lidl(リドル)」は、バラ売りの野菜や果物を入れるための使い捨てビニール袋を廃止し、2019年8月8日から英国全土の店舗で100%再利用可能なポリエステルのネット袋「Green Bag」を導入しました。

CSR責任者を務めるジョージナ・ホール氏は、「25年前に英国リドルの初店舗をオープンさせたときから、プラスチック削減に力を入れてきました。これまでさまざまな施策を打ってきましたが、今回の発表はお客様に再利用へシフトしてもらう新たな選択肢を提供したといえるでしょう。」と述べています。

同社は、2022年までにプラスチックパッケージを20%削減することを目指しており、2025年までに自社ブランドのパッケージを100%、リサイクルや再利用、詰め替えにする方針を打ち出しています。

2-2. 海洋プラ汚染問題への意識を高めるエコバッグ


グローバル展開する大手スーパーマーケットの「TESCO」が、毎年一人あたり約300枚のプラスチック袋が廃棄されているマレーシアで、2018年におこなったエコバッグ販売キャンペーンです。

人々に使い捨ての袋が海の生物に与えている悪影響を認識してもらうために、このキャンペーンで販売されたエコバッグには絶滅危機にある海の生物がデザインされました。ユニークな絵柄の中に含まれているバーコードをスキャンすると割引が受けられるという金銭的なインセンティブを設計し、買い物客の積極的なエコバック利用を促しました。

エコバッグのデザインをしたGraham Drew氏は、「袋が一枚再利用されることは、すなわち海に捨てられる袋を一枚減らすことにつながる。私たちはこのキャンペーンを通して、より多くの人が袋の再利用という習慣を身につけることを望んでいる」と語りました。

2-3. エコバッグ持参を促す、持ち歩くのが恥ずかしいレジ袋

Image via Shutterstock

カナダ・バンクーバーのスーパー「East West Market」が、エコバッグを持参し忘れた客に渡す有料レジ袋を「持ち歩きたくない」デザインに変えた取り組みです。

レジ袋を有料にしてもなかなかレジ袋の利用が減らないことを問題視し、あえてレジ袋を「The Colon Care Co-op(コロンケア協同組合)」、「Dr. Toews Wart Ointment Wholesale(Dr. トーズいぼ軟膏卸売)」、「Into the Weird Adult Video Emporium(奇妙なアダルトビデオ店へ)」といった人前で持ち歩くには恥ずかしい内容にデザインしました。

オーナーのデヴィッド・リー・キーオン氏は、「お客さんがエコバッグを本当に忘れないように支援したいのです。当店の袋を持っているのを見かけた他の人にとっても、自分の袋を忘れないようにするきっかけになります。」と語っています。

このEast West Marketの取り組みは、環境破壊の一端を担うことが「恥ずかしいこと」だと人々に身をもって実感させる、よい機会にもなるかもしれません。

2-4. 植物由来の野菜コーティングで包装削減&長持ち


イギリスの大手スーパーマーケット「ASDA」は、2019年より、アメリカのスタートアップ「Apeel Sciences」と提携し、青果物の鮮度を長時間保つ「Apeel」という特殊素材の試用実験を開始しました。

Apeelは、自然由来の成分を使用したコーティング剤で、野菜や果物の表面に塗布し「第二の皮」をつくることで水分の蒸発や酸化を抑え、鮮度を長持ちさせます。何も塗っていない状態と比較すると、約2~3倍長く鮮度を保つことができます。

同社は、このApeelを用いることで食品の腐敗によるフードロスの削減を目指しています。さらに、青果物の鮮度を保つための包装をする必要がなくなるため、現在問題になっているプラスチックゴミの削減も期待されています。

2-5. 大手スーパーも乗り出した量り売り戦略


イギリスの大手スーパーマーケット「ASDA」は、2020年5月より、プラスチック削減に向けた新たな取り組みとして「サステナビリティストア」を目指し、イギリス・リーズ市の店舗でリフィルコーナーを設置し、試験的にオープンすると発表しました。

自社ブランドのコーヒー豆、パスタ、米などに加え、ケロッグのシリアルやユニリーバの茶葉などの大手メーカー製品の協賛を得ることにより、多くの食料品を量り売りで販売する予定です。顧客は持参した「マイ容器」にそれらの食料品を入れ、量に応じて支払う仕組みになっています。また、野菜や果物、キノコ等の食材もプラスチック包装を使用せず販売される予定です。

今回発表された「サステナビリティストア」は、現段階では実験としての位置づけですが、実際に来店した顧客からフィードバックを受けてサービスを改善し、利便性や環境負荷のバランスが上手く機能すれば、他店舗にも同様の取り組みを展開していく方針です。

3. 事例から学ぶ、脱プラ実践のためのヒント

レジ袋を有料化しても、人々の使い捨てプラスチック製品への意識が変わらなければ、プラスチックごみの削減や海洋プラスチック問題の解決には繋がりません。

レジ袋だけにとどまらず、リユースできるバラ野菜用ネット袋のように、店舗で使用されているプラスチック容器包装をリサイクル・再利用できるものに変更していくことや、ASDAのサステナビリティストアのように、リフィルコーナーを設置し詰め替え方式に切り替えることは、スーパーという誰もが利用する場所でできる大きな意識の変化に繋がるのではないでしょうか。

資源や環境を犠牲にして成り立つ利便性は、もはや持続可能ではありません。このような、消費者の環境意識に基づく先進的な海外の事例をヒントに、日本の小売業界でも試行錯誤を重ねてより良い環境問題の解決策が見出されていくことを今後も期待したいと思います。

4. 実践のためのBDLのワークショップって?

いかがでしたでしょうか。海外では様々な先行事例がある中で、日本はようやくレジ袋の有料化がはじまり、小売業界における脱プラの動きはますます加速していきます。自社ならではの強みを活かした脱プラ施策を実践するための方法を考えてみませんか?

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【参照サイト】Production, use, and fate of all plastics ever made | Science Advances
【参照サイト】【WWF報道資料】動画「YOUR PLASTIC DIET」 先週食べたのはクレジットカード、今週も食べるとペン?
【参照サイト】singleUsePlastic_sustainability.pdf
【参照サイト】プラスチック製買物袋有料化 2020年7月1日スタート(METI/経済産業省)
【参照サイト】プラスチックを取り巻く国内外の状況 – 環境省

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