サステナブルなビジネスアイデアを高校生と考える。BRITA Japanと亀岡市のプラごみゼロアクション

サステナブルなビジネスアイデアを高校生と考える。BRITA Japanと亀岡市のプラごみゼロアクション

SDGsやサステナビリティが企業の活動においても意識されるようになったものの、それを社内でどのように浸透させるのか、またビジネスとして地域にどのように広げていけば良いのか悩んでいる方もいるのではないでしょうか。

今回IDEAS FOR GOOD Business Design Lab編集部は、京都の亀岡高校・南丹高校の学生とともに地域でのビジネス展開を考える、ドイツの浄水器メーカーBRITA Japanのもとを尋ねました。BRITA Japanはどのように亀岡市という地域に入り込み、サステナブルな事業を展開したのでしょうか。また、高校生からどのようなインスピレーションを得たのでしょうか。2020年12月17日に行われた成果発表会の様子をレポートします。

登壇者

マイケル・マギー氏(BRITA Japan株式会社 代表取締役社長)

ミシガン大学 ビジネススクールにてMBA取得。
フィリップス エレクトロニクス ジャパン 家電事業部 Sales & Marketing Director就任。その後、スリーエムジャパン株式会社 Asia Pacific担当 Business Development Managerとして貢献。2016年11月1日付で、BRITA Japan株式会社 代表取締役社長に就任。

桂川 孝裕 氏(亀岡市長)

東京農業大学農学部(現 地域環境科学部)を卒業、京都府立農芸高等学校の教員として赴任。その後、亀岡市役所に入庁。2003年、「世界に誇れる環境先進都市の創造」を行動指針の一つとして掲げ、亀岡市議会議員選挙に出馬し、当選。2007年には京都府議会議員に当選し2期務めた後、2015年から現職。2018年12月、2030年までに使い捨てプラスチックごみゼロのまちを目指し、「かめおかプラスチックごみゼロ宣言」を行う。2019年、亀岡市長2期目当選。全国初のプラスチック製レジ袋提供禁止条例制定と、「世界に誇れる環境先進都市」の実現に向け挑戦中。

亀岡高校 探究文理科 代表者
南丹高校 人間科学分野選択 代表者

環境先進都市と家庭用浄水器メーカーが包括連携協定を締結

家庭用浄水器メーカーとしてマイボトルの普及を目指すBRITA Japan。日本の特定の地域で活動を展開したいと、2018年から「プラスチックごみゼロ」宣言をしている亀岡市に声を掛け、連携に至りました。現在はその協力体制の中で、ペットボトル削減に向け、マイボトル対応型の給水スポット整備と併せてマイボトル普及を目指しています。

BRITAマイボトル
BRITAの浄水ボトル

亀岡市は、2020年3月に「使い捨てプラスチック」のごみをゼロにすべく、ペットボトルの他にも「プラスチック製レジ袋の提供禁止に関する条例」を制定。全国で初めて「プラスチック製レジ袋提供禁止(有料でも提供しないルール)」を打ち出し、エコバックの持参が当たり前になる社会を目指しています。

商材の普及に止まらず、環境教育用教材を共同開発

BRITA Japanと亀岡市が目指すのは、マイボトルやエコバックなどの普及だけではありません。それらを使う市民の意識が変わらなければ本質的な変化は起こらないとして、高校生への環境教育用教材を開発したのです。「学習指導要領」および「エシカル消費普及・啓発活動(消費者庁)」に則って開発された高校生向けの教材は、亀岡市にある2つの高校(亀岡高校・南丹高校)にて、実際に環境に関する授業のなかで使用されました。

高校生がなるべく問題を自分ごと化して考えられるよう、教材に使用するトピックは「ペットボトル」など身近なものに絞られました。亀岡高校・南丹高校は新型コロナ禍でオンライン交流会も実施し、互いのアイデアと知見を深めました。

知識を柔軟に応用する高校生

それでは、そうした環境教育教材を使って学びを深めた高校生は具体的にどんなアイデアを考案したのでしょうか。それぞれの高校別にみていきます。

亀岡高校

自分たちの足で歩き、自分たちの手で調べる

亀岡高校の生徒たちはまずフィールドワークを実施し、学校周辺のごみの現状を確認しました。改めて意識して歩くと多くのごみがあることに気付き、そして一定の期間に渡って定点観測をしたことでそれらが短期間で集まったゴミであることを認識したといいます。

また、亀岡高校1年生全員を対象にアンケートも実施。その結果、マイバック・マイボトルの使用はかなり浸透しているものの、ごみ拾いや学習への参加の割合は小さく、「マイクロプラスチック」など専門的な知識を備えている人も少ないことがわかったといいます。

亀岡高校
亀岡高校・発表の様子

発表を行った生徒たちは、ごみに対する意識の違いは単に学習機会に恵まれたかどうかだと結論付けていました。ごみについて学ぶ機会があれば、生活の中で自ずと意識されていくため、他の学科や学校の生徒にも学習機会が提供されるよう、亀岡市とBRITA Japanに提言を行いました。ごみの問題に対する認知を広める上では、SNSや駅の掲示板など、高校生がよく目にする媒体を使用することも推奨しています。

南丹高校

高校生が楽しく動くためのアクションを、実直に考える

南丹高校の生徒たちは、同級生を含む高校生がどうすれば楽しく環境アクションに移してくれるか、実直に考えた結果、「有名人を巻き込む」という選択肢にたどり着きました。ただ高校生に人気のある有名人ではなく、もともと環境問題に興味を持っている人など、有名人の行う環境活動もリサーチしながらアプローチをしたといいます。

南丹高校
南丹高校・発表の様子

また、マイボトルを使用を呼びかける動画も作成。「学校の中で一番水を飲んでいるのは部活動生」という結論にたどり着き、部活動中に水筒で水を飲んでいる動画を撮影しました。BRITA Japanの浄水機能のついた水筒は、ボトルが空になってもそれぞれが水道から給水でき、新型コロナ禍の部活動にとても便利だといいます。

また南丹高校の生徒たちは、給水スポットを地図上に示す「mymizu」のアプリに目をつけました。亀岡市は、東京に比べて格段に給水スポットが少ないことから、水筒だけではなく給水スポットを同時に普及することを亀岡市長に提言しました。給水スポットが設置されれば、「my mizu」のアプリだけではなく、駅などでのポスター貼付も検討していくといいます。

BRITA Japanと亀岡市からのコメント

集合写真
BRITA Japanのマイケル・マギー社長は、「フィールドワークやアンケート調査、動画撮影など、自分たちの身近なところで実際にアクションを起こしながら、学びを深めていたのが印象的だった」と語りました。また、友人との、家族との、他の関係者との「つながり」を大切にするコレクティブインパクトを高校生に見せつけられ、BRITA Japanでも応用していきたいとコメントをしました。

亀岡市の桂川孝裕市長は、「どうすればもっと高校生が問題を認知してくれると思いますか?」「ポスターはどんなところに貼ればいいと思いますか?」など、高校生からの生の声を聴きながら、亀岡市として今後それらの提言を積極的に取り入れていく姿勢を見せていました。亀岡市では若者の意見を取り入れた指針が今後示されていくでしょう。

編集後記

「環境教育」というと、大人が高校生にインプットをする構図をつい思い浮かべてしまいますが、今回の記者会見で印象的だったことは、高校生が自らプロジェクトを企画し、学んだことを自分の生活に積極的に取り入れており、大人もそこから学ぶ姿勢でした。中には、「家族と食事をしているときにそれとなく環境の話が出るようになった」という生徒も。生活の中に「環境への配慮」という視点を取り入れ、オリジナリティに溢れたアクションを考えた高校生から、今回行政や企業側が学ぶことも多かったのではないでしょうか。

「SDGs教育」「環境教育」といっても何から手をつけて良いのかわからない教育機関と、若い世代からの柔軟な意見を欲している企業のコラボレーションは今後ますます加速していくはずです。今回は環境先進都市として画期的な取り組みを行う亀岡市がそのつながりを媒介し、学校・企業・行政の三者がそれぞれの強みを活かしながら、地域での具体的なネクストステップを考えたコラボレーションの好事例だったと言えます。

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【参照サイト】かめおかプラスチックごみゼロ宣言の背景

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