【2022年最新版】従業員のメンタルヘルスをケアする世界の企業アイデア

【2022年最新版】従業員のメンタルヘルスをケアする世界の企業アイデア

メンタルヘルスの問題はますます深刻に

新型コロナウイルスの拡大を受けて、「コロナ鬱」や「コロナ離婚」などの言葉も登場するなど、仕事や生活に不安やストレスを感じている方も少なくないのではないだろうか。新型コロナに限らず、世界的なパンデミックや大きな災害が、人々のメンタルヘルスや睡眠の問題を引き起こすことはよく言われる。

データ分析専門の東京大学の鳥海不二夫准教授が、2020年1月から緊急事態宣言が出された4月にかけて、新型コロナに関するSNS上のおよそ1億件の投稿を収集し分析したところ、「コロナ」という言葉が、「ストレス」という言葉とともに投稿された件数は1月に比べると80倍以上に急増していたという。

ここでは、IDEAS FOR GOODでこれまで取り上げてきた、世界の企業によるメンタルヘルスを良い状態に保つアイデアをご紹介する。

会社ができる、従業員のメンタルヘルスをケアする制度

01. 精神状態を回復させる「メンタルヘルス休暇」制度


アメリカのオレゴン州で、学生が自分の精神状態をケアするために「メンタルヘルス休暇」を取ることを許可する法律ができた。この法律は、同州の学生たちによる提案がもとになり、怪我などの身体的な理由だけでなく、精神的な理由で学校を休むことを認めるもの。3ヵ月ごとに最大5日間の休みが取得でき、それ以上になる場合は、学校長などへの申請が必要になる。
学生がズルをして学校を休むことを案じるよりも、止められたかもしれない死を増やさないことに目を向けることが大切だということを、「メンタルヘルス休暇」は教えてくれる。

  • 国名:アメリカ
  • 団体(企業)名:オレゴン州

 

02. オフィスや街など、周辺環境の緑化

▶︎ 「都市の緑化でメンタルヘルス向上」米ペンシルバニア大学が発表
米ペンシルベニア大学の研究者らが、街中の空き地や荒廃地を緑化すると、「うつ」が減少するなど住民のメンタルヘルスが大幅に改善されるという新たな調査結果を発表した。

緑の多い地域に住む住民は、緑が少ない地域の住民に比べ、精神的に不安定であるという自己申告が62.8%減少。さらに、犯罪や暴力などが減ることもわかった。なお、ごみと雑草を取り除いただけの区画、何もしなかった区画の周辺に住む住民については、大きな変化は見られなかった。

  • 国名:アメリカ
  • 団体(企業)名:ペンシルベニア大学

 

03. 子育てのストレスをそのままにしない。専門家の支援を「買う」

▶︎ 世界最大のスーパー・ウォルマートが「子育て支援」を販売へ

世界最大の小売チェーン「ウォルマート」は2022年7月、赤ちゃんの世話について専門家に相談できるサービスの販売を開始した。たとえば「生後6ヶ月までの赤ちゃんの寝かしつけサポート」など、子育てに関するサポートがオンラインショップで普通に購入できるようになるのだ。

これまで、約10万世帯をサポートした同サービス。子育てで余裕がないときにこそ、他人を頼れる良い仕組みだ。

  • 国名:アメリカ
  • 団体(企業)名:ウォルマート

 

04. 子育てのストレスをそのままにしない。専門家の支援を「買う」

新型コロナですっかり定番となったオンライン会議。しかし、体がずっと椅子に縛りつけられ、その会議が従業員のストレスの原因となっているとする論文もある。

そこで金融大手シティグループは、2021年3月に「ズーム・フリー・フライデー」の導入を発表し、金曜日には社内のビデオ会議を行わない方針を示した。また、英金融大手HSBCも、金曜日の午後にビデオ会議を行わないというトライアルプログラムを実施している。会議がなく、自分の時間を持てることこそが大事なのだ。

  • 国名:アメリカ・イギリス
  • 団体(企業)名:シティグループ・HSBC

 

最新テクノロジーによるメンタルヘルス向上方法

05. うつ病の兆候をすぐ発見できるAI


マサチューセッツ工科大学が研究するニューラルネットワークを活用したテクノロジーが、うつ病患者の早期発見に転機をもたらすかもしれない。うつ病の発見は、これまでも特定の質問への回答を分析して判定するなど、機械学習を用いた方法が開発されてきたが、AI技術を研究するMITコンピュータ科学・人工知能研究所(以下、CSAIL)が進める方法は、決まった質問ではなく、自然な会話の中からうつ病の兆候を発見するという。

ニューラルネットワーク(Neural Network)とは、AI領域の一つで、人間の神経回路を人工的な数式モデルによって表現したものだ。それまでの機械学習が、人によって決められたルールに基づき答えを導き出すのに対して、人間の脳を模したニューラルネットワークは、訓練することによって学習し、答えを出すためのルールを自ら発見することができる。

  • 国名:アメリカ
  • 団体(企業)名:マサチューセッツ工科大学

 

06. 顔の表情から、こころの健康状態が「見える」テクノロジー

▶︎ ストレスがたまるサイトは? こころの健康状態を可視化するAI分析アプリ「Misu」

デジタル機器をよく使う人のメンタルヘルスを向上させるアプリ「Misü(ミス)」は、PCにインストールすると、25万人のデータに基づいて作られたAIが自動的かつ定期的にユーザーの顔を撮影し、精神状態を分析するアプリだ。そして目を細める、眉間にしわを寄せるといったわずかな変化を細かく分析し、ポジティブな状況かネガティブな状況かを教えてくれる。

ウェブサイトを見ているときには、リアルタイムで精神状態のスコアを表示。ユーザーはそのスコアを参考にしながら、ネガティブな気持ちになりそうなサイトを避けるなどの対策を取ることができる。また、日別、時間別、さらにはフェイスブックやイラストレーターといったアプリケーション別でも気持ちの変化をグラフ化してくれるので、どんな時にどんなふうに、どんなアプリを使っていたかを踏まえて、自分の健康状態を良く保つことが可能になる。

  • 国名:アメリカ
  • 団体(企業)名:Misu

 

07. リラックスできる画像や映像を届けるウェルネスアプリ


「Moodrise」は脳科学に基づき、リラックス効果や気分を上げる画像、映像などを提供するユニークな最新ウェルネスアプリだ。このアプリの大きな特徴は、脳科学に基づいて、コンテンツを提供することで、脳内の神経伝達物質を増加させ、精神状態を改善するということ。研究者、医師、学芸員などの協力を得ながら、開発されたという。

「Happiness(幸福)」「Confidence(自信)」「Energy(活動力)」「Focus(集中)」「Calm(穏やかな気持ち)」「Connection(人との繋がり)」の6つの中から、自分が悩んでいることを選ぶだけ。幸せな気持ちを求めるならセロトニン、自信を持ちたいならドーパミンを増やすコンテンツを自動で提供してくれる。

  • 国名:アメリカ
  • 団体(企業)名:Moodrise

 

社外でも。メンタルについての「対話」を生む事例

08. チャットで気軽にカウンセリングを受けられるアプリ


Spillは、オンラインで文字を打ち込むことによるカウンセリング(テキストカウンセリング)を提供し、メンタルヘルスケアへのアクセス改善を目指すスタートアップだ。

英国のメンタルヘルスケアにおいては、「安価な公的医療を受けるために数か月待つ」もしくは「1回1万円かかる民間カウンセリングを受診する」の選択肢から選ばざるを得ない状況がある。その中でSpillは第3の道として「いつでもどこでも無料で気軽に相談できる」という解決策を提案している。

  • 国名:イギリス
  • 団体(企業)名:Spill

 

09. 「大丈夫じゃなくても大丈夫」メンタルヘルスケアに取り組むカフェ


米シカゴにオープンしたカフェ「Sip of Hope」は、収益の100%が自殺予防とメンタルヘルス教育のために使われる。店内は一見普通のお洒落なカフェのようだが、店全体がポジティブなメンタルヘルスを促進し、困難な状況にいる人々を助けるためにある。

壁にはカフェのモットーである「It’s ok not to be ok.(大丈夫じゃなくても大丈夫)」の文字が大きく描かれており、店内にはメンタルヘルスに関する情報を提供するスペースが設置されている。また、店で働くすべてのバリスタは、Mental Health First Aid(こころの応急処置マニュアル)の訓練を受けている。

  • 国名:アメリカ
  • 団体(企業)名:Sip of Hope

 

10. 「世界一幸せな国」を自宅で体験できるバーチャルツアー


フィンランドへの観光を促進する団体である「Visit Finland(フィンランド政府観光局)」が始めた、バーチャルでフィンランド流のウェルビーイングが体験できるキャンペーン「バーチャル Rent a Finn(レント・ア・フィン)」。

それぞれのレクチャーは、テーマに精通したフィンランド人のハピネスガイドが日常生活で大切にしている「幸せ」をもとに進められ、また参加者はそのレクチャーに必要なものを事前に用意することでバーチャルながらもより自分の体験として内容を受け入れられるよう工夫がなされている。旅をできない中でも、ストレスから解放されて気分転換ができる。

  • 国名:フィンランド
  • 団体(企業)名:Visit Finland

 

まとめ

いかがだっただろうか?新型コロナの影響でこれまでの日常がガラリと変わり、自分が気づかない間にストレスを溜め込んでしまっている人も多いだろう。

WHOも、“Coping with stress during the 2019-nCoV outbreak(コロナウィルス蔓延中のストレスへの対処)”と題する文書も公表し、「このような危機に際して、悲しみやストレス、恐怖、怒りを感じるのは普通のことなのだ」と、訴えている。こんなときだからこそ、誰もが自分自身を大切に過ごして欲しい。

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「IDEAS FOR GOOD」からの転載記事です。

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