今さら聞けない、ESG投資とは?サステナビリティ推進の必須用語を解説

今さら聞けない、ESG投資とは?サステナビリティ推進の必須用語を解説

昨今では、企業の財務状況や事業の成長率だけではなく、「環境に配慮できているか」「地域社会に貢献できているか」などを含めて投資先を選ぶ「ESG投資」が注目を集めています。世界的に猛威をふるっている新型コロナウイルスによって、数多くの企業の業績が低迷しているにもかかわらず、ESGの視点で高い評価を受けている企業の業績は、全体平均よりも高いパフォーマンスを維持しています。そのような背景もあり、今後さらに「ESG投資」への注目が高まると考えられます。今回は、サステナビリティ推進には欠かせない「ESG投資」について、事例を踏まえながら解説していきます。

目次

1. ESG投資とは?

ESG投資とは、「Environment(環境)」、「Social(社会)」、「Governance(企業統治)」の3つの要素を十分に考慮している企業へ投資することを指します。非財務指標にあたる環境、社会、企業統治に重点を置いた上で、企業経営を行うのは社会的に意義があり、長期的な安定と成長が見込めるため、短期間ではなく10年以上のスパンで高いリターンを狙うことができます。

ESG投資が広まった背景には、2006年に国連が投資プロセスにESG投資を組み入れる「責任投資原則(PRI)」を提唱したことが関係しています。経済産業省の発表によると、責任投資原則(PRI)に署名している機関は、世界的に増加傾向にあります。日本においては2018年時点で、保険会社、DBJ(日本政策投資銀行)など、63の機関が署名しています。投資にESGの視点を組み入れることは、社会貢献性がある、長期的に捉えると運用メリットがあるなどが挙げられ、欧米を中心に今後も世界的に広く浸透していくと考えられます。

ここからは、ESG投資のそれぞれの要素が具体的に何を指しているのかご紹介していきます。

環境(E): CO2排出による気候変動や、工場の廃水による水質汚染などの環境問題への対策、再生可能エネルギーの使用そして生物多様性の確保などを指します。
社会(S):適正な労働条件や、男女平等といった職場の人権対策、事業を通じた地域社会への貢献などを指します。
企業統治(G):業績悪化に直結する不祥事を回避し、リスク管理をするための情報公開や法令遵守などを指します。

「環境や社会に配慮した投資」という意味で、ESG投資とSRI(社会的責任投資)は、同じように捉えられることがありますが、SRIは明確に「環境・社会・企業統治」への投資を指していないという特徴があります。昨今では、ESG投資をおこなう投資家が増えていることもあり、企業もESGに配慮した企業経営をおこなっている傾向があります。

2. より良い投資、日本そして世界で一般化

環境問題や貧困問題、人権問題など、世界規模で取り組むべき社会課題が数多くあり、早急な対応が求められています。ESGの観点を取り入れた投資を行うことで、それらの社会課題に対してアプローチしている企業の後押しできるという、社会貢献の側面があり、世界全体の投資が、ESG評価が高い企業に集まっています。現在、世界全体の約4分の1に相当する約23兆米ドルがESG投資となっており、日本の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)もESG投資をおこなっています。

「Global Sustainable Investment Alliance」によると、ESG投資の伸び率は、2014年から2018年までで、アメリカでは38%伸びており、日本では307%伸びています。日本の場合は、2014年から2018年までで投資額が約4倍にまで膨らんでおり、ESG投資が注目されていることが伺えます。

世界全体の投資傾向が、ESG投資をおこなっている企業に向いていることから、企業が投資を受けるためにESG項目の改善努力を行うことが必須となってくるでしょう。財務数値にばかり企業が目を向け、自然破壊や労働者の人権蹂躙といった不健全な行動を取ってしまうと、社会的信用を失うだけではなく、事業資金の調達が困難になる可能性が高まります。今後、よりよい企業を目指していく、競争が激しい市場で生き残っていくという観点から考えると、ESG投資を受けることは企業が存続するために必要不可欠なものになってくると考えられます。

3. 金融の力でサステナビリティを推進するアイデア3選

ここまでご紹介してきた、ESG投資の重要性を踏まえて、ESG投資を行う上で知っておきたい金融の力でサステナビリティを推進するアイデアをご紹介します。

カーボンフットプリント削減量に連動して利子が変わるローン

2019年7月、オーストラリアのゴールドコースト空港を運営しているクイーンズランド空港株式会社(QAL)が、空港の再開発に向けて、コモンウェルス銀行やウェストパック銀行からあわせて1億豪ドルの融資「サステナビリティ・リンクド・ローン」を確保しました。この融資契約の特徴は、気候変動の原因となる炭素の削減に力を入れていることです。空港の照明をLEDに変えたり、空調を炭素排出量の少ないものに変えたり、荷物運搬システムの運転モーターのエネルギー効率を改善したりすることに資金が使われます。

「サステナビリティ・リンクド・ローン」は、カーボンフットプリントの削減目標に応じて利子が変動します。利子を気候変動に取り組むインセンティブとする点が、ユニークかつ気候変動対策として効果的であるといえます。出資側と投資を受ける側の企業が協力して、気候変動への対策を加速させているオーストラリアならではの事例です。

気候変動問題は深刻化しており、国連が掲げたSDGs(持続可能な開発目標)の目標13「気候変動に具体的な対策を」にも含まれています。世界規模で取り組むべき課題として気候変動が扱われてきている背景もあり、今後、出資側と投資側が協力して、気候問題へ取り組む流れは広がっていくでしょう。

見えない価値に投資。本業として寄付に取り組む投信

コモンズ投信は、企業の「見えない価値」に対し比重を置いて投資判断を行い、持続的な価値創造を目指している日本企業30社を厳選した投資信託「コモンズ30ファンド」を運用しています。また、そのファンドの運用収益の一部で、社会起業家に寄付をする「コモンズSEEDCap」を運営しています。

コモンズ投信が寄付を本業としておこなっているのは、寄付を社会への「長期投資」として捉えているからです。数多くの社会課題を抱える日本ですが、見えない未来を信じて、投資や寄付という形で企業やNPOを応援することができれば、次の社会をよくするための一歩になるでしょう。

顧客の意思を汲み、預金でエシカル投資を行うオンラインバンク

Thrive Market(オーガニックECサイト)の創始者Gunnar Lovelace氏が、オンラインバンク・プラットフォーム「Good Money」を立ち上げました。サービスに登録すると、Good moneyの普通株の一部が割り当てられ、会社の部分的なオーナーとなることができます。銀行(Good money)の投資先は、顧客(オーナー)の投票によって決められます。投資先の候補は、クリーンエネルギーや森林再生など「サステナブルな事業」のみとなっています。顧客は、無料で登録することができ、ATMでの引き出しにも料金がかからない仕組みとなっています。

従来では、企業に対する一般消費者の表現方法は主に購買活動に限られてきました。しかし、Good moneyでは、投資家ではない一般の顧客の意思を尊重した投資の仕組みが構築され、預金を通じて企業に対する態度を表現することが可能となりました。このような仕組みづくりは、ステークホルダーエンゲージメントがますます重要視されている現代の企業経営において必須の取り組みといえます。

Image via Good Money

預金で社会貢献。顧客の意思を汲み、エシカル投資を行うオンラインバンクGood Money

4. 事例に見る、ESG投資の可能性とは?

世界的猛威を振るっているコロナウイルスの影響などもあり、テレワーク化が急速に進んでいたり、働き方が見直され始めたりと業界問わず大きな変化が起こっています。これをきっかけに、これまで当たり前に受け入れられてきた価値観や慣習をもう一度考え直す動きが活発になっています。企業や投資のあり方に関しても、アフターコロナの時代に合った環境や社会、ガバナンスといったESG・サステナビリティの観点から見直されつつあります。
企業が利益のみを追求する資本主義のもとで競争する時代から、サステナビリティを追求し、人々にとって価値を生み出す企業が評価される時代へと変化してきました。サステナビリティを推進していく中で、ESG投資や今回ご紹介した事例のような、出資側と投資側、企業と顧客が二人三脚になって利益だけではなく社会課題に対してアプローチしていく、お金の流れが重要になってくるでしょう。

また、サステナビリティを推進し、ESG投資を受けるためには「人間と自然」「企業と顧客」「経済と環境」などのように「分断」して捉えるのではなく、根幹の部分では全てが繋がっているという捉え方が必要になってくるでしょう。「つながり」を意識することで、企業経営のあり方が利益追求のみになってしまうことを避けることができます。また、つながりを意識した企業経営は、社会的信用を得ることにつながり、ESG投資の対象になるだけではなく、顧客から支持される企業ブランドを確立することができるでしょう。

ESG投資で注目される事例をもっと知るには?

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