増える在宅勤務。従業員の家の脱炭素を実現するコミュニケーションデザインと仕組みづくり
新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年は多くの企業が在宅勤務に切り替えました。サステナブル事業を行う企業が従業員の在宅勤務を推進する上で見落とされがちなのは、従業員の家の脱炭素。在宅勤務の増加に伴い、企業として脱炭素化にどのように取り組むべきか、そのポイントをご紹介します。
目次
1. GHGプロトコルスコープ4が必要?
GHGプロトコルとは、温室効果ガス排出量の算定、報告の基準として世界的に推奨されている基準です。企業が事業活動を行う上でどこまでの範囲を算定するかによって、スコープ1~3に分かれています。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、オフィスをあまり使わなくなることで、スコープ1および2は減少します。一見すると企業の排出する温室効果ガスが劇的に減少したように見えますが、在宅勤務中に発生した温室効果ガスが含まれていません。そこで、スコープ4として、すべての従業員の在宅勤務を対象とする議論が提唱され始めています。このまま在宅勤務が推進された場合、スコープ4となる範囲も考慮に入れて、企業は在宅勤務中に従業員が出す温室効果ガスの削減に取り組む必要が生じます。
2. 従業員の脱炭素を実現するには?
在宅勤務中に従業員が出す温室効果ガスの削減に対し、企業や各従業員はどのように取り組めば良いのでしょうか。本章では、温室効果ガス削減のアイデアをご紹介します。
2-1. 電力再エネ採用の補助
家庭のCO2排出量で最も多いのが電気であり、全体の46.7%を占めています。CO2の排出量を減らすことを目的に、再生可能エネルギーを採用する電力会社が出始めています。
環境に配慮した電力会社は数多くありますが、今回ご紹介するのは株式会社ボーダレスジャパンが立ち上げた「ハチドリ電力」事業。再生可能エネルギーをほぼ100%使用するハチドリ電力に切り替えるだけで、脱炭素化に貢献できます。また、毎月支払う利用料金の1%は、契約者が応援したい団体に寄付され、さらにもう1%は再生可能エネルギー発電所の増設に使われるため、社会貢献にもつながります。ハチドリ電力のような再生可能エネルギーの電力会社を使う場合には電力料金のコストが上がりますが、会社がその補助を担うことも考慮に入れる必要がありそうです。
【参照記事】より環境に配慮した電力会社を選ぶには?毎日使う電気で持続可能な未来をつくる、パワーシフトのすすめ
2-2. 家の断熱性も考慮に
電力に再生可能エネルギーを取り入れるだけでなく、少しでも省電力するための断熱性も考える必要があります。米コロラド大学ボルダー校の研究チームが開発したのは、室温を快適に保つ透明なシート。廃棄予定のビールが原料に使われているため、生産コストを抑えられるほか、廃棄物削減につながります。窓ガラスにこのシートを貼ることで、窓ガラスの断熱性を高め、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせます。
2-3. 家庭内でごみを減らす勉強会を開催
ハーチ株式会社・IDEAS FOR GOOD編集部は2019年12月から社内プロジェクト「ゼロウェイストチャレンジ」(オフィスで出る1か月の燃えるごみの重量を1kgに収める(=1スタッフ卵約1個分))に取り組んでいましたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響を受け、2020年2月から在宅勤務に。自宅でもゼロウェイストに取り組もうと、ごみ削減の活動家が集まったイニシアチブである530(ごみゼロ)weekと共同で社内勉強会(オンラインワークショップ)を開催。家庭ごみを減らす難しさや悩みを共有し、解決するためのアイディアを出し合いました。
【参照記事】【社内プロジェクトレポート】ゼロウェイストチャレンジ ~4か月目、530weekと共同社内ワークショップを実施。在宅でもごみゼロを~
2-4. 家庭内の脱炭素実現で出る課題も社内で議論
上記2-3の社内プロジェクト「ゼロウェイストチャレンジ」を在宅勤務中にも取り組めるよう、自宅ですぐにできるゼロウェイストのヒントをGoogleスプレッドシートでまとめ、スタッフ同士でも自身の取り組みや工夫、やってみて気づいたことを共有しあえる体制を整えています。結果、プロジェクト開始の1ヶ月前と比較して家庭ごみが約38%減少。家庭でもゼロウェイストに取り組むことで、「環境についての話題全般に以前より目がとまるようになった」「できるだけ捨てない前提で生活する意識が身についた」など、意識の改善が見られました。
【参照記事】【レポート】IDEAS編集部全員が1か月挑んだ「おうちdeゼロウェイスト」
3. 従業員の家庭内で脱炭素化を実現するポイント
本章では、従業員が脱炭素化に取り組むためのポイントをまとめました。
3-1. 従業員全員が脱炭素の重要性を把握する
普段生活する上では「なぜごみを減らさなければならないのか」「なぜ電気を無駄遣いしてはいけないのか」など気にせず過ごしている方も多いかもしれません。また、仕事が忙しいと自炊する時間がなかなかとれず、ついコンビニやファストフードで手軽に食事を済ませてしまいがちです。ごみを減らさないとどうなるのか、火力発電による電気を使い続けることで地球環境にどのような影響を及ぼすのかなど、一人ひとりが理解し、脱炭素の重要性を認識することが重要です。
3-2. サステナビリティに関する話題を増やす
同居する家族からの協力を得て、無理せずゼロウェイストに取り組むためにも、日頃から社内で環境問題やサステナビリティに関する話題を織り交ぜ、積極的にコミュニケーションをとっていきましょう。日頃からこれらの情報に触れておくことで、社内事業のカーボンニュートラルに向けた取り組みも加速することが期待できます。
3-3. 脱炭素化プロセスのコーポレートコミュニケーションもデザイン
脱炭素化の取り組みを個人に任せるだけでは限界があります。IDEAS FOR GOOD編集部の社内プロジェクトの事例のように、オンライン勉強会の開催や従業員同士で議論する場を設け、さらに社外に発信していくことで、会社が先導して取り組みを推進することが大切です。
カーボンニュートラルを実現する方法についてもっと学ぶには?
本サイトを運営するIDEAS FOR GOOD Business Design Labでは、「Make Sustainability Desirable.(サステナビリティに、ワクワクを。)」をコンセプトに、会員の方向けに(登録無料)SDGs・サステナビリティ・CSV・サーキュラーエコノミー関連プロジェクトの企画立案・立上・運営までをサポートしております。IDEAS FOR GOODならではの豊富な国内外の事例を活用し、御社の強みを生かした事業づくりについて考えてみませんか?IDEAS FOR GOODチームとの共創プロジェクトも可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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