脱炭素の先を見据える。国内外のサーキュラーなメーカーの取り組み事例と回収のメソッド

脱炭素の先を見据える。国内外のサーキュラーなメーカーの取り組み事例と回収のメソッド

コロナ禍でV字回復が続く製造業。海外需要の回復や在宅勤務による電気機器の広がりにより純損益が前期比35.6%増加と好調です(2021年3月)。また、2050年までに温室効果ガスの排出量ゼロを目指すカーボンニュートラル宣言が2020年に出される中、サーキュラーエコノミーをはじめとする脱炭素の先を見据える動きが欧州を中心に出始めています。

メーカーがサーキュラーエコノミーを事業に組み込む際に着目されるのが製品の長寿命化や回収の仕組み。今回は、サーキュラーエコノミーに取り組む国内外のメーカーや、回収のメソッドについてご紹介します。

目次

1. 環境・社会・経済をつなげるウェルビーイング

産業部門におけるCO2排出量は4億1,800万トンですが、そのうち製造業は3億2,600万トンで、産業部門全体のCO2排出量のうち約78%を占めています。製造業による脱炭素化や環境負荷の軽減に向け、今後大きな変革が見込める領域であると言えます。

また、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、世界は大きな転換点に立っています。コロナからの経済復興においては環境に配慮した形で回復を目指す「グリーンリカバリー」が叫ばれ、気候危機に立ち向かうために脱炭素とサーキュラーエコノミー(循環経済)への移行が世界の共通言語となりました。また、コロナによって健康や命の大切さに改めて気づいたり、今までの「当たり前」が当たり前ではなくなったりしたことで、私たち一人ひとりの価値観も変化してきています。

脱炭素(Less Bad)のみならず、環境を再生しながら経済システムを新たに構築していくこと(More Good)を目指し、社会で働く人々の健康や幸福度を高めることも重視しながらより良い社会の実現を目指す「ウェルビーイング」が提唱され始めています。ウェルビーイングは、脱炭素やリジェネレーション(経済を通じた環境の再生)、サーキュレーション(循環)、ダイバーシティ(多様性)、格差の是正といったキーワードで、環境・社会・経済をつなげていくものです。今回は、その中でサーキュラーエコノミーを軸にメーカーの事例を紹介していきます。

2. 製造業で広がる循環の取り組み

本章では、持続可能な資源の循環を生み出す国内外の取り組みについてご紹介します。

2-1. 商品を「修理する権利」:イケアの店舗で家具に第二の人生を与える「Circular Hub」

イケア・ジャパン株式会社は、家具に第二の人生を与え、顧客にサステナブルな暮らしのアイデアを届けるスペース「Circular Hub(サーキュラーハブ)」を日本で初めてIKEA港北にオープンしました。2021年夏までに、全国の他8店舗(仙台・新三郷・立川・Tokyo-Bay・長久手・鶴浜・神戸・福岡新宮)でも順次展開する予定です。

IKEA港北の「サーキュラーハブ」では、顧客から買い取ったイケアの家具や展示品を購入できるほか、従業員による家具の組み立てを見学できるコーナーや、商品のメンテナンス方法などに関するワークショップ「Learn & Share area」を設け、顧客がより簡単かつ手頃な価格で「修理する権利」を得てサステナブルな暮らしを実現できるような提案を行っています。このような場があることで、製品を長く使ってもらえる仕組みを作っています。

2-2. 「分解」で長寿命化:環境に優しいエシカルスマホ「Fairphone3」

オランダのスタートアップ企業であるFairphone社は、紛争鉱物を使用しないで製造されたスマートフォン「Fairphone3」を製造・販売しています。原料の調達情報をすべて公式サイトで公開しているほか、Fairphone3の製造地・中国での労働環境の向上や透明化、教育研修、労働者の幸福度の上昇にも取り組んでいます。また、Fairphone3が壊れた際、修理しやすいよう、接着剤ではなくねじを使って部品を接続しているのも特徴です。消費者に不要なスマートフォンをリサイクルしてもらいやすくするため、Fairphone3の購入時に20〜40ユーロを還元する取り組みも実施しています。製品のメンテナンスだけでなく、製品をモジュール化することでスマートフォン部品の長寿命化に貢献しています。

2-3. 「回収」に地域を巻き込む:さとうきびストローの使用で野菜づくりに貢献

株式会社4Natureは、生分解可能なさとうきびストローを飲食店に導入してもらう際、店舗に回収用のガラス瓶を無償で提供しています。使用済みのさとうきびストローをそのガラス瓶に集めてもらい、ストローが溜まったタイミングで店舗が連絡すると、4Natureに登録しているボランティアが回収しにいくというシステムです。回収したストローは「青山ファーマーズマーケット」で引き取り、農家にコンポストとして利用してもらいます。

このように、単に生分解可能なストローを販売するだけでなく、飲食店で使われたストローが農家の手にわたり、野菜を育てるためのコンポストに活用され、育った野菜が提供されるという循環型システムの構築を目指している点がポイントです。

2-4. 製造時の炭素も回収:工場で排出されるCO2を香水の原料に

米国の大手化粧品メーカー「コティ」は香水を製造する際の環境への負荷を減らすため、工場で排出されたCO2を回収してエタノールを生成し、製品に使うことを発表しました。この方法であれば工場のCO2排出量を減らすことができ、香水の製造に必要な水や土地も少なくて済むため、環境保全に大きく貢献できます。同社は2023年までに、フレグランス製品の大半に、CO2を回収してできたエタノールを使うことを目指すといいます。炭素の回収技術は注目が集まっており、その商品化に踏み切った先進的な事例です。

2-5. 広がる環境再生の輪を設計:土に還るおむつ「DYCLE」

麻を原料にして製造された、堆肥化可能なおむつ「DYCLE」。乳児の便が付着したおむつを回収バケツに投入し、発酵させます。そこに微生物の入った炭の粉を一緒に混ぜ、嫌気性発酵を促進させると同時に消臭します。バケツが満杯になったらコンポスト会社に運ばれ、そこでコンポストが行われ、1年後には上質な堆肥が出来上がります。大量にできた堆肥は、今度は素材として苗床を育てる会社や有機農家に運ばれ、果物やナッツの木を植える際に使われます。数年後にりんごの実がなると、それらからお茶やジャムなどの食品を作ることができ、地域ビジネスが育ち、さらに果物の木を冬に剪定する際には枝から炭を作ることも可能です。このように、自然界では芋づる式に複数の成果物が出来上がり、複数の収入源が作られていきます。

こうした一方通行型のリニアエコノミーではなく、身近にある「廃棄物」を自然の生態系に馴染む形で、何らかの資源にしていくブルーエコノミーを実践しており、循環から再生につなげていく仕組みを作っています。
【参考記事】土に還るおむつ「DYCLE」から考える、リジェネラティブ・ビジネス

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3. 注目したい回収のメソッド

2章では事業の中で回収の仕組みを組み込む事例を紹介しましたが、本章では、製品や廃棄物を回収する方法についてもご紹介します。

3-1. 使い捨て容器がない循環型ショッピングプラットフォーム「Loop」

米テラサイクル社が立ち上げた、世界初となる循環型のショッピングプラットフォーム「Loop」。これまで使い捨てにされていた一般消費財や食品の容器に着目し、繰り返し利用可能な耐久性の高い素材に作り替えました。商品配送後は、購入者の自宅から容器だけを回収し、洗浄、補充した上で再び商品の容器として使われます。メーカーは各ブランドのパッケージを優れたデザインと機能を備えたものへと進化させることができる上、短期的には高価なパッケージにはなるものの、長期的にはコスト削減が期待できます。

2021年5月からイオンと提携し、イオンの店舗でLoopの容器が使われた商品を購入できるようになりました。使用済み容器を返却ボックスに返却すると、購入時に支払った容器代がLoop公式アプリ経由で返金される仕組みになっています。

3-2. 廃棄物を可視化することで資源の循環を加速させるアプリ「GOMiCO」


レコテック株式会社は廃棄物のデータを収集・可視化するアプリ 「GOMiCO」 を開発しました。たとえば、ある飲食店がゴミを廃棄する際にゴミの量や種類などの情報をアプリ内に記録すると、店舗から排出される日々の廃棄状況が「見える化」され、店舗は無駄に排出してしまっているものが何かを把握でき、ゴミの削減に役立ちます。

また、GOMiCOに入力された情報を集約し、地図上にマッピングした形で表示させることもできます。このデータを共有することで、廃棄物が資源として循環し、サーキュラーエコノミーを実現することが可能になります。

3-3. 廃棄物の需要と供給をマッチングするプラットフォーム

廃棄物を出す企業とそれを資源として活用したい企業を結びつけるデジタルマッチングプラットフォームをAIとブロックチェーンを駆使して開発しているアムステルダムのスタートアップ「Excess Materials Exchange」。たとえば、カフェでは毎日大量のコーヒーの豆かすが廃棄されますが、水のフィルターを作ったり、インクの顔料として活用したりすることができ、まだまだ活用できる原料になり得ます。廃棄物を積極的に利用したい企業とマッチングさせることで、廃棄物の削減につながります。

4. メーカーが脱炭素の先へ向けて取り組むべきポイント

ご紹介した事例に共通するのは、資源や製品の循環型サイクルの構築です。生産者が製品の生産・使用段階だけでなく、廃棄・リサイクル段階まで責任を負う「拡大生産者責任(Extended Producer Responsibitily:EPR)」という考え方がOECDによって提唱されており、生産者は製品をつくって終わり、ではなく、廃棄段階でもなるべく廃棄物が出ないような回収システムを構築する、廃棄物を資源化し、循環させる仕組みづくりの役割も求められます。

リサイクルの負担を消費者に全て任せるのではなく、消費者ができるだけリサイクルしやすい設計までを生産者が整えることでメーカーとしてのブランド力にも関わります。そんなメーカーが今後も増えることが期待されます。

5.IDEAS FOR GOOD Business Design Labとは?

本サイトを運営するIDEAS FOR GOOD Business Design Labでは、「Turn Ideas into Actions(アイデアを形に変える)」をコンセプトに、会員の方向けに(登録無料)SDGs・サステナビリティ・CSV・サーキュラーエコノミー関連プロジェクトの企画立案・立上・運営までをサポートしております。IDEAS FOR GOODならではの豊富な国内外の事例を活用し、御社の強みを生かした事業づくりについて考えてみませんか?IDEAS FOR GOODチームとの共創プロジェクトも可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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