世界で広がる脱プラ規制法令。プラスチック削減のためのポイントとは?

世界で広がる脱プラ規制法令。プラスチック削減のためのポイントとは?

近年、世界中で問題となっているプラスチック問題。日本でも、カフェやレストランなどで紙製のストローが使われるようになったり、2020年7月1日からレジ袋が有料化されたりと、消費者に近い小売業界を中心にプラスチック規制に向けて動き始めています。カーボンニュートラルに日本が進み始めた昨今、石油を原料とするプラスチックも削減に向けてますます議論が活発化していきます。

この記事では、世界のプラスチック関連法令をビジネスパーソンが抑えておくべき理由と、世界で広がるプラスチック削減に向けた法令についてご紹介します。

目次

1.世界のプラスチック関連法令について知っておくべき理由

1-1. ESG投資の動向把握に

ESG投資の世界全体の投資残高は、2018年に31兆ドルまで拡大し、2年前に比べて34%増加しています。ESG投資の判断で考慮する要素の一つとして、「E(環境)」では気候変動に関する項目が中心となっており、脱炭素や資源循環が注目を集めています。

特に近年各国が進めるサステナビリティ関連法令はESG投資を行う機関投資家の動きにも影響を与え、世界経済や企業の株価にも大きな影響があるため、ビジネスパーソンであれば各国のサステナビリティに関する規制法令は知っておく必要があります。廃棄物や資源循環に関心が持たれており、今後各国においてプラスチックなどへの法規制が進んでいく中で、ますます関心が高まっていくと考えられます。

1-2. 先進企業の情報収集に

世界各国がプラスチックの法規制を進めており、それぞれの企業が安価・軽量・密封可能なプラスチックの代替案を検討しています。小売企業がメーカーへプラスチック包装の廃止を要求する例もあり、そうした企業との取引に先立つリスクマネジメントとしても、どのように環境問題の解決と経済合理性を両立するべきか、その過程をウォッチしていく必要があります。

1-3. 新たなビジネスチャンスのヒントに

各国の法規制を受け、企業は使用済みプラスチックの回収やリサイクルに取り組まなければなりません。しかし、米マッキンゼー・アンド・カンパニーによれば、世界で使用済みプラスチックのリサイクル率を現在の12%から50%に引き上げることによって、2030年には年間600億ドル(約7兆円)の市場が生まれると予測され、新たなビジネスチャンスになると考えられます。

脱プラスチックの流れを規制と捉えるのではなく、ビジネスチャンスにするヒントを得るためにも法令の把握は必須と言えそうです。

2.プラスチック問題と国の政策

2-1.脱プラスチックに向けた世界の動き

2018年6月に開催された主要7カ国首脳会議(G7サミット)において、日本と米国を除く5ヶ国(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、英国)および欧州連合(EU)が「海洋プラスチック憲章」に賛成しました。海洋プラスチック憲章では、「2030年までに100%のプラスチックが、リユース可能、リサイクル可能、または実行可能な代替品が存在しない場合には、熱回収可能となるよう産業界と協力する」「廃水および下水からプラスチックおよびマイクロプラスチックを除去する技術の研究、開発および使用を促進する」といった内容が定められています。

2019年6月に開催された20カ国・地域首脳会議(G20サミット)では、海洋プラスチックごみ削減に向けた国際枠組みを創設することを大筋合意しました。

2-2.プラスチックの何が問題なのか

世界では、約800万トンものプラスチックごみが海に流れ込んでいるといわれています。その82%が適切に処理せず排出しているアジアの国々から出ており、先進国が廃プラスチックをこれらの国々に輸出していることが原因の一つとしてあげられています。このままプラスチックごみが増え続けると、2050年には海にいる魚の重量よりも、海にあるプラスチックごみの重量の方が多くなるという推測もあります。

海洋プラスチックの中でも特に問題なのが、マイクロプラスチック。マイクロプラスチックとは、波や紫外線の影響を受けて5mm以下に細かく砕けた状態のプラスチックのことを指します。マイクロプラスチックは自然に分解されることはなく、半永久的に海に溜まり続けます。また、歯磨き粉や洗顔料などに含まれるマイクロビーズもマイクロプラスチックの一種であり、途中で分解されることなくそのまま海に流れ込みます。近年、魚の体内からマイクロプラスチックが検出されており、食物連鎖を通して人間の体内にもマイクロプラスチックが蓄積されていくことが懸念されます。一度海に広がってしまったマイクロプラスチックを回収することは困難であり、だからこそ、そもそもプラスチックごみが海に流れ込まないよう、プラスチックごみ自体を減らしていく必要があります。

3.プラスチック削減に関する世界各国の法令

本章では、プラスチック削減に関する世界各国の法令についてご紹介します。

3-1.インド:使い捨てプラ禁止

インドでは、2022年までにすべての使い捨てプラスチック製品の製造、使用および輸入を禁止します。すでに2019年10月2日から、カップ、皿、小型ボトル、ストロー、ビニール袋、特定の種類の小袋の計6種類の使い捨てプラスチック製品が禁止されています。

3-2.イタリア:包装なしで販売する食料品の値下げ

イタリアでは、包装なしで販売する食料品等の値下げを促すために、店主に金銭的なインセンティブを与える法案の可決が議論されています。包装なしで販売される食料品や洗剤のほか、量り売り用のディスペンサーや再利用可能な容器で販売される飲料・シャンプー等の液体物を、各店の店主が値下げすることを想定した法案です。

3-3.ニュージーランド:テイクアウトカップ禁止

ニュージーランドでは、リサイクルが困難なポリ塩化ビニルやポリスチレンでできた包装や飲料容器を段階的に禁止する施策がとられています。ポリ塩化ビニルやポリスチレンは、肉用トレーやテイクアウト用の容器、コーヒーカップなどに使われています。「プラスチックのサーキュラーエコノミー」を目指し、政府が主導してプラスチック使用の廃止を進めようとしている点が注目されます。

3-4.スコットランド:飲料購入時のデポジット付与

スコットランド政府が、ペットボトルや缶で飲み物を買う際に20ペンス(約30円)のデポジットを付与する制度を発表しました。空になったボトルは飲食店やホテル、地域の回収場所などに返却すると、その20ペンスが戻ってくるシンプルな仕組みです。この取り組みによって、現在捨てられているペットボトルのゴミが90%(1日に約31,000本、1年間で1,100万本以上)減少すると推定されています。

4. 法令から学ぶ、世界の脱プラ・ゼロウェイストの動き

ここまでご紹介してきた各国の法令を踏まえて、プラスチック削減を実現するポイントについてご紹介していきます。

4-1. 使い捨てプラスチックを提供しない

ビニール袋やストローなど、使い捨てのプラスチック製品を減らすことが、シンプルかつ最も効果的です。たとえストロー1本であっても、町中でポイ捨てされれば最終的に海に流れ着く危険性があり、海洋汚染の一因となります。プラスチックの代替品を用いる、量り売りなど包装せずに商品を販売するなど、工夫次第で気軽に取り組むことができるのではないでしょうか。

4-2. プラスチック製品を回収するしくみをつくる

使い捨てプラスチック製品を提供した場合であっても、プラスチック製品を回収してリサイクルすることで、焼却処分にかかる二酸化炭素排出量を削減することにつながります。たとえば、コンタクトレンズを販売するHOYA株式会社 アイケアカンパニー(アイシティ)では、使い捨てコンタクトレンズの空ケースを回収する活動を行っています。使い捨てコンタクトレンズの空ケースはポリプロピレンというリサイクルに適した素材で作られており、リサイクル工場で粉砕された後、他の製品に作り替えられています。2010年から空ケースの回収活動を始め、2020年9月時点での二酸化炭素削減量は1005.27トン(東京ドーム60.2個分)になるそうです。

いかがでしたでしょうか。プラスチックが海洋汚染の一因になるとはいえ、「軽くて丈夫」というプラスチックのメリットはフードロスの解決や輸送コストの低減につながるなど、プラスチックを使い捨てしないことが重要になります。「今すぐプラスチックを代替品に置き換えるのは難しい」という場合は、使い捨てプラスチックを回収するしくみをつくることを検討してみてはいかがでしょうか。

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