ホテル業界必見!サステナブルなアメニティ選び、どう工夫する?

ホテル業界必見!サステナブルなアメニティ選び、どう工夫する?

ホテルの宿泊客が変わるたびに取り換えられる、歯ブラシや石鹸などのアメニティ。衛生面の問題から、使いかけや未使用のものも廃棄されてきましたが、地球環境への影響を考慮し、アメニティのあり方も見直されつつあります。今回は、サステナブルなアメニティのアイデアをご紹介します。

目次

1.ホテル業界とSDGs

1-1. なぜSDGsに取り組む必要があるのか?

2015年にSDGs(持続可能な開発目標)が採択され、ホテル業界においても地球環境に配慮した取組みが進んできました。

SDGsの目標12「持続可能な生産消費形態を確保する」のターゲット12.5に「2030年までに、廃棄物の発生防止、削減、再生利用および再利用により、廃棄物の発生を大幅に削減する。」と定められています。2050年までに全世界の中間層が約69%増加すると予想され、それに伴い天然資源の需要が増加することから、現状の大量生産・大量消費を見直し、変えていかなければ、地球環境により甚大な被害をもたらすことが懸念されています。

では、なぜホテルが廃棄物の発生防止や削減に取り組むべきなのでしょうか。もちろん、廃棄物の発生防止や削減に取り組むことで、環境負荷が軽減されます。たとえばホテルの各部屋にアメニティを備え付けるのではなく、フロントに用意し、必要な分だけアメニティを取ってもらうようにするだけで、廃棄物量が抑えられます。

それだけでなく、ホテルは、宿泊客の「暮らし」に密着できる場でもあります。たとえば、アメニティに竹製歯ブラシを採用し、宿泊客に使ってもらう。そうすることで、宿泊客が心地よく滞在しながら環境に意識を向けるエシカルな1日の擬似体験を提供できるのです。ホテルでの擬似体験は、まさにSDGs 12.8「2030年までに、あらゆる場所の人々が持続可能な開発および自然と調和したライフスタイルに関する情報と意識を持つようにする。」を推進する一つの方法でもあると思います。

1-2. ホテル業界のアメニティ削減の取組み

ここでは2021年1月現在のホテルで取り組まれているアメニティ削減の取り組みをいくつかご紹介します。

星野リゾート:勝手にSDGs」と題して、客室でのペットボトル入りミネラルウォーターの提供をやめ、パブリックスペースにウォーターサーバーを設置する、使用済み歯ブラシを回収し、再資源化するなど、廃棄物の削減や自然エネルギーの活用に積極的に取り組んでいます。

スーパーホテルペットボトルから生まれたリサイクル食器の活用、朝食の生ゴミの堆肥化などに取り組むほか、アメニティの歯ブラシを未使用のまま返納したり、マイ箸を持参したりした宿泊客に対し、お菓子をプレゼントしています。

パークホテル東京ホテルラウンジやイベント開催時に使用するドリンクの容器を、土に還る素材である竹とバガス(さとうきびの繊維)で作られた生分解性 の紙コップ「WASARA」を使用しています。

年間5万人以上が宿泊する日本のホテル(2019年)。このように、ペットボトルや歯ブラシ、紙コップなど、アメニティを工夫することで、ホテルで消費される生活用品の大幅な廃棄物削減につながります。

2. サステナブルなアメニティ5選

本章では、ホテルで使用するアメニティをよりサステナブルにするための商品をご紹介します。

2-1.生分解可能な竹製歯ブラシ

株式会社豊和は、持ち帰って何度も使えるアメニティとして竹製の歯ブラシを開発しました。開発に着手したきっかけは、株式会社豊和の社長・山本さんがホテルに宿泊した際、膨大な量の歯ブラシが毎日のように廃棄されるのを見て、危機感と使命感を抱いたことでした。開発した竹製歯ブラシは、通常の歯ブラシの約2倍の価格ですが、決して竹製歯ブラシが高いのではなく、従来のプラスチック製歯ブラシが安すぎるためにこの価格差が生じているのだといいます。「安さ」だけで判断するのではなく、ものづくりをする人たちに適切な対価が支払われているのかを重視するようになってほしいと山本さんは訴えます。

2-2.ゼロウェイストな歯磨きタブレット

歯磨き粉のプラスチックチューブはリサイクルが難しく、チューブが分解されるまで500年かかるにもかかわらず、世界中で毎年約9億本ものプラスチックチューブが廃棄されています。そこで新たに開発されたのが、タブレット式の歯磨き粉。従来の歯磨き粉のようにしっかり泡立ち、ミントのフレーバーですっきりと歯磨きができます。また、タブレット自体にグルテンや乳製品などが入っていないため、アレルギーを持つ人やヴィーガン志向の人も利用できます。

2-3.NPOと連携した石鹸

ヒルトン・ホテルズ&リゾーツは、アメリカのNPO団体Clean the Worldと共同で、世界手洗いの日(10月15日)までに宿泊客が残した100万個の石鹸をリサイクルし、世界中で石鹸を必要としている人々に寄付しています。Clean the Worldは、リサイクル石鹸などの衛生製品を困っている人に提供して命を救うことをミッションに置き、過去10年間で、衛生に関する病気で死亡する5歳未満の子供の死亡率を60%減少させることに貢献。今回の共同プロジェクトでは、アメリカとカナダ、プエルトリコとドミニカ共和国のヒルトンホテルグループから宿泊客が残した石鹸を集め、粉砕消毒し、切断して新しい石鹸を作りました。

2-4.アップサイクルする仕組みのある剃刀

米国のアルバトロス・デザイン社が新しく始めたのは、カミソリの刃をナイフやフォーク、スプーンなどの携帯用カトラリーにアップサイクルする取り組み。同社の顧客はカミソリ購入時に小さな封筒を受け取り、使用済みのカミソリの刃が集まったら、その封筒に入れてアルバトロス・デザイン社に返送するだけ。なお、他社のカミソリの刃も同封できます。

2-5.堆肥化可能なアメニティを実現

スウェーデンのデザイン事務所OnMateriaが開発したのは、堆肥できるホテルのアメニティキット「Green Box」。Green Boxのアメニティは緑と白に色分けされており、宿泊客が使用後、自身で分別してゴミ箱に入れます。緑の部分は、ホテルのレストランで残った有機ごみと一緒に産業施設に運ばれ、メタン化プロセスを経て10週間後に土壌とバイオガスに。ごみを減らし、サーキュラーエコノミーを促進するアイディアとして、注目を集めています。

3. ホテル業界のアメニティをサステナブルにするポイント

これまで安価に仕入れて使用後は廃棄することが当たり前だったアメニティを、いきなりリサイクルするのはハードルが高いという方も多いのではないでしょうか。そこで、アメニティをサステナブルなものにするためにはどうすれば良いか、ポイントをまとめました。

3-1.アメニティの廃棄量を把握

まず、毎日どのくらいのアメニティを廃棄しているか、把握することから始めましょう。そのほか、どのアメニティの廃棄量が一番多いのか、廃棄する際にどのくらいのCO2を排出しているか、アメニティの廃棄物のうち、使い捨てプラスチックの占める割合はどれくらいか。アメニティの廃棄によってどのくらい地球環境に負荷をかけているかを知ることが重要です。

3-2.CO2排出を抑えたアメニティの回収スキームを考える

アメニティを廃棄する際、単に焼却処理するのではCO2の排出量が増えてしまいます。OnMateriaの堆肥化可能なアメニティの事例では、コンポストすることで余分なCO2の排出を抑えることができます。他にも、アメニティの長寿命化に向けた工夫ができれば焼却処理をしなくて済むので、CO2の排出量を抑えることができそうです。

3-3.NPOとの連携も検討

廃棄される予定だったアメニティをリサイクルしても、必ずしも自社でリサイクル製品を使う必要はありません。ヒルトン・ホテルズ&リゾーツのリサイクル石鹸の事例のように、NPOなど他のアクターと連携することで、リサイクル製品の活用できる選択肢が広がるのであれば、連携を検討することも必要です。

サステナブルなホテルを実現するアイデアをもっと知るには?

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