サステナビリティ推進のために押さえておきたい、CSVとは?先進事例もご紹介

サステナビリティ推進のために押さえておきたい、CSVとは?先進事例もご紹介

サステナビリティに基づく事業戦略の必要性が高まるなか、顧客や株主、地域社会にとっての価値を創造するCSV型のビジネスに注目が集まっています。SDGsの登場とともに広く認知されるようになりましたが、CSVが提唱されたのは2011年にさかのぼり、国内外ではすでに多くの成功事例が存在しています。今回はサステナビリティの推進力を一気に高めるCSV事業の成功のポイントを探るべく、国内外の事例を厳選し、ご紹介します。

目次

CSVとは?CSRとの違いを比較

CSVとは・意味

CSV(Creating shared Value)とは、「企業が競争力や経済性の向上を追求しつつ社会的な課題解決に取り組むための考え方」です。簡単にいうと、慈善活動や寄付などではなく、事業として「社会貢献」を行うことで、「企業の利益」と「社会的価値」のどちらも追求することができるという考え方です。2011年にハーバードビジネスレビュー上で経営学者のマイケル・ポーター氏によって提唱されたことがきっかけで、CSVが世の中に広まりました。昨今では、「SDGsへの取り組みが求められている」「サステナビリティに基づく事業戦略が必要となっている」ことなどから数多くの企業がCSVに基づいた事業を展開しています。

また、CSV型のビジネスが注目を集めているなかで、ESG投資(環境、社会、企業統治の3つの要素に配慮している企業への投資)も拡大を見せています。経済産業省によると、日本のESG市場は2014年から2016年の2年の間だけで、70億ドルから4,740億ドルまで成長していることがわかっています。ESG投資が広がれば、SDGsへのアプローチを加速させることに繋がることなどから、今後も世界的に広がっていくことが予測されています。

【関連記事】今さら聞けない、ESG投資とは?サステナビリティ推進の必須用語を解説

CSRとCSV。その違いとは?

CSVとしばしば比較される言葉としてCSR(企業の社会的責任:Corporate Social Responsibility)がありますが、両者には明確な差異があります。

CSR
(Corporate Social Responsiblity)
企業の社会的責任
CSV
(Creating Shared Value)
共通価値の創造
期待される価値 善い行い コストと比較した経済的便益と社会的便益
方向性 シチズンシップ、フィランソロピー、持続可能性 企業と地域社会が共同で価値を創出
行動 任意あるいは外圧によって 競争に不可欠
利益 利益の最大化とは別物 利益の最大化に不可欠
テーマ 外部の報告書や個人の嗜好によって決まる 企業ごとに異なり、内発的
予算 業績やCSR予算の制限を受ける 予算全体を再編成する
例えば… フェアトレードで購入する 調達方法を変えて品質・収穫量を向上させる

ポーター&クラマー(2011)「共通価値の戦略」『ダイヤモンド ハーバード・ビジネス・レビュー』 2011年6月号(ダイヤモンド社)を元に作成

CSRは、企業活動が引き起こす公害や人権侵害などの問題を背景として提唱された「企業活動が社会に与える影響に責任を持つべき」という考え方です。「CSR=社会貢献活動」というイメージを持たれがちですが、「外部不経済」を解消し、地球環境や社会の持続可能性を担保するのがCSRの本質です。すなわち、CSR活動は「自社のビジネスの存続を脅かすリスクに対応する」ことにもつながる重要な要素の一つであると言えます。

一方のCSVは、社会のニーズや問題に取り組むことで『社会的価値』を創造し、同時に、『経済的価値』を創造するというアプローチです。営利企業がその本業を通じて社会的問題解決と経済的利益をともに追求し、かつ両者の間に相乗効果を生み出そうとする試みです。

CSRとCSVを比較すると、CSVは社会課題の解決と経済的利益の追求の両方を軸とする一方で、CSRはそれ自体が経済的利益を志向するものではなく、「ビジネスを行う基盤となる環境や社会をサステナブルにすることで長期的な事業遂行を可能にする」ものであるということが分かります。

「CSRは守り、CSVは攻め」といった表現をされることもありますが、その両方の考え方をもとに自社の存在意義(=パーパス(※))を見つめ直すことが、本業を通じた社会課題解決において欠かせません。

パーパス(Purpose):ビジネスにおいては、組織や企業の存在理由や存在意義、つまり「何のためにこの会社があり、何のために事業をするのか」を意味する。

サステナビリティにCSVが必要なワケ

企業経営を考えるうえで、サステナビリティ(持続可能性)は欠かせない要素です。デンマークの実業家で、大学院大学至善館の教授であるピーター.D.ピーダーセン氏の理論では、企業経営において「社会と共発展できること」は、企業の生存戦略を考えるうえで、必須条件だと考えられています。CSV型のビジネスモデルが生み出す価値には、以下のようなものがあるとされています。

企業価値の向上 環境・社会価値の創造
新しい市場が開拓できる 未解決の環境問題・社会課題への対応が進む
自社の商品・サービスがより売れるようになる 満たされていない現世代の基本的ニーズが満たされる
自社の評判が高まり、顧客ロイヤルティーが向上する 経済発展の在り方が変わることによって、将来世代の生存・発展可能性が高まる
自社のブランド価値が高まる より健全で安心・安全な社会が実現される
より士気の高い、忠誠心ある人材が確保・維持できる 希望、夢、感動、幸せ、充足感のある暮らしが広まる

ピーダーセン氏ウェブサイトをもとに作成

また、CSV型のビジネスモデルであれば、従来の「自己変革力(抜本的革新的の継続)、市場占有率(マーケットシェア)、品質(製品・プロセス品質)、価格(プライシング)」などの差別化要素だけではなく、新たに「グリーン・イノベーション(環境分野の革新+持続可能な経済社会の追求)」という観点から、他社との差別化を図ることができます。グリーン・イノベーションによる差別化は、環境・社会的価値の創造に貢献すればするほど、企業価値が高まるというものです。社会と共発展できるサステナブルな企業づくりは、今日において必須になりつつあります。

CSVの先進事例をご紹介【国内編】

サステナビリティの推進力を高めるアイデアにつながる、CSV事業の国内事例についてご紹介していきます。

国内事例①(日本環境設計 BRING)

BRINGでは、捨てられるTシャツから、新たなTシャツを作り出しています。新たなTシャツの原料を石油由来のポリエステルに頼ることなく、古い繊維から再生ポリエステルを作り出すことで、循環型経済を実現しています。また、BRING Tシャツブランドのオーナーである日本環境設計株式会社は、服の直接回収もセットになった製品販売を行っています。商品の購入者がBRINGのサイトで商品を注文すると、着なくなった服をリサイクルに送るための発送封筒も一緒に届き、その服を封筒に入れてポストに投函することで、工場に送られてリサイクルされる仕組みになっています。さらに、リサイクル後には再び新たな製品を製造・販売を行っています。

このような工程をすべて同一ブランドで行うことで環境への負荷が抑えられ、シャツの製造過程での透明性も確保されています。社会的課題解決と経済的の価値のどちらも追求することが可能であること、古き良きものに新しい価値を与えるという視点の重要性もこの事例から学ぶことができます。

【公式サイト】BRING
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【関連記事】IDEAS FOR GOOD 石油問題に一石を投じる。捨てられたTシャツから作る「BRING Tシャツ」

国内事例②(花王 バイオIOS)

2019年に販売を開始した、花王の衣料用濃縮液体洗剤「アタックZERO(ゼロ)」は、10年以上かけて、世界初の技術により開発した「花王史上最高」の洗浄基材「バイオIOS」を使用しています。基材とは、洗剤の主成分の界面活性剤のことで、原料は東南アジアで栽培されるココヤシやアブラヤシの種子から採取した天然油脂です。アブラヤシの果肉から採れる油は、界面活性剤には不向きだとされていましたが、花王は長年にわたる研究開発の末、それを可能としました。

この事例のユニークなポイントは、世界で生産される天然油脂のなかで生産量が1位で、しかも、使われずに余剰になっている油脂を有効活用したサステナブル(持続可能)な界面活性剤であることです。また、サステナビリティを追求しつつ、衣料をきれいにするという人々の要求や願いに対する機能を損ねずに、資源問題へも効果的なアプローチができている点で、事業を通じて社会も環境もよくする先駆的なCSVビジネスといえます。

【公式サイト】花王 花王の顔 バイオIOS

国内事例③(セブン-イレブン・ジャパン なないろ保育園)

お子さんが産まれても女性が働ける環境を整えたいという思いから、セブン-イレブンは2017年の10月から内閣府が進める企業主導型保育事業として、「なないろ保育園」をスタートしています。なないろ保育園は、待機児童問題へのアプローチ、多様な人材の獲得、地域での新しい価値や役割を提供しています。なないろ保育園をスタートさせたことにより、「働く場所と子どもを預ける場所は同時に見つかってとても助かった」「勤務先の産休から6ヶ月で復職できるとは考えていなかった」などの声が寄せられています。

なないろ保育園をスタートさせたことによって、その地域で暮らしている人々から「セブン-イレブン」は、地域社会に貢献していると捉えられています。その結果、地域住民から支持されるお店になっており、実際にセブン-イレブンの利用者増加に繋がっています。本業を通じて地域の課題を解決することで、顧客ロイヤルティを高めている事例といえます。

【公式サイト】セブン-イレブン・ジャパン セブンなないろ保育園特集

CSVの先進事例をご紹介【海外編】

ここからは、CSV事業の海外事例についてご紹介していきます。

海外事例①(インドHelpUsGreen(ヘルプアスグリーン) )

HelpUsGreenは、インドの寺院などで使い終わった花を回収し、それをアップサイクルしているスタートアップベンチャーです。毎日、廃棄されるはずだった1.5トンの花を回収し、それをバスソープや堆肥、お香などのハンドメイド商品へと生まれ変わらせています。

パッケージデザインにもこだわっており、包み紙に「インドの聖なる植物トゥルシーの種」を練り込むことで、捨てられてもその場で自然にかえり、芽が出てくるという仕組みになっています。また、HelpUsGreenは、インドの下層階級の女性を積極的に雇用し、正当な対価を支払っています。

この事例のユニークなポイントは、利益のみならず、廃材となる花をアップサイクルしてゴミ問題へのアプローチも効果的に行っている点です。また、社会的に立場が弱い女性を雇用し、正当な賃金を支払っています。このビジネスが成功すればするほど、廃棄物が減り、社会的に弱い立場になっている女性が守られるモデルとなっています。

【公式サイト】Help Us Green

海外事例②(エジプト mumm)

エジプトのスタートアップベンチャーmummは、健康的な家庭料理の提供を通じてエジプト女性をエンパワーするオンラインプラットフォーム兼宅配サービスです。オンラインで健康的な食事を注文できるなどの理由から人気となり、2年間で110人以上の雇用を創出し、7,000人の顧客に対して4万5,000食を届けています。mummで雇用されている人々は、難民や失業者などです。mummは世界経済フォーラムにより、地域におけるトップ100のスタートアップの1社として認識されています。

mummは、顧客に対して健康的な食事を提供するだけではなく、難民などの雇用に困っている人々を採用することで社会的価値を生み出している企業です。エンパワメントを通じて貧困・経済格差の問題にアプローチする、先進的な事例といえます。

【公式サイト】mumm

海外事例③(ペルー Inka Moss)

ペルーのアンデス山脈の山間に暮らしている人々は、ペルーの中でも最も貧困状態にあります。Inka Mossは、そこで暮らす人々の生活を向上させるため、海抜3,500メートル以上のアンデス特有の非常に特殊な気象条件でのみ成長する、white moss(水ごけ)に着目したビジネスを展開しています。具体的には、自然を再現する垂直庭園や緑の屋根の建設に
使用されている、水ごけの「収穫と収集」「乾燥」「プレスとパッケージング」「発送と輸出」など、サプライチェーンの川上から川下まで管理しています。

この事例のユニークなポイントは、海抜3,500メートル以上のアンデス特有の気象条件のみで生息する、水ごけに着目した独自性の強いビジネスを展開している点です。また、ペルーの雇用問題にもアプローチしているという、社会貢献性もあります。この事例のように、CSV型のビジネスを考える際には、自社ならではの商品やサービスを考えてみてはいかがでしょうか。

【公式サイト(スペイン語)】Inka Moss
【YouTube】NESsT 「Inka Moss – Bringing Sustainable Income to People in the Highlands of Peru」

サステナビリティを推し進めるCSV。求められる戦略とは?

ここまでご紹介してきたサステナビリティを推し進めるCSVの国内外の事例を踏まえて、求められる戦略や注意すべき点についてご紹介していきます。

CSV型のビジネスは長期視点で考える

サステナビリティを推し進めるCSVを考えるうえで、大切になってくるのは長期視点でビジネスを考えていくことです。先にご紹介した花王の「バイオIOS」のように、本質的に企業と社会に価値を提供できる商品やサービスを提供しようとすると、調査や実験、マーケットの選定など、数多くの工程が必要となり、膨大な時間がかかってしまう可能性があります。加えて、より社会課題施工が強いビジネスでは価値の提供(課題解決)と利潤を両立できるようになるまでに時間を要するため、CSV型のサステナビリティ事業を考えるうえでは、長期視点を持つことは必須になってくるでしょう。

共感を得られるパートナーと協働する

CSV型のサステナビリティ事業を行うメリットとしては、自社の取り組みや価値観に共感してくれる他社や地方自治体、国などの政府機関が協力してくれる可能性があることなどが挙げられます。

自社だけではなく、協力してくれるパートナーとCSV型のサステナビリティ事業を考えることで、強みが重なり合い、付加価値が高い商品やサービスを提供することができます。また、参入していない市場に新規参入できる機会を得ることができるなどのメリットも考えられます。

既存の商品やサービスに新たな価値を見出す

既にある、自社の商品やサービスに新たな価値を見出すことができれば、CSV型のサステナビリティ事業を効率的に作り上げることができます。例えば、自社で衣料品を扱っている場合、既出のBRINGのように要らなくなった服を回収し、それをリサイクルして新しい衣料品に生まれ変わらせる(アップサイクル)を行うなど、既存の商品やサービスに新たな価値を見出すことを検討してみてはいかがでしょうか。

いかがでしたでしょうか。CSV(共有価値の創造)型のサステナビリティ事業が注目を集めている昨今において、CSV活用の観点は重要になりそうです。様々な先進事例がある中で、自社ならではの強みや特徴を活かしたCSV型のサステナビリティ事業の確立方法を考えてみてはいかがでしょうか。

【関連記事】社会課題の解決を事業に。CSV事業開発のプロセスとは?

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【参考文献】Peter David Pedersen Official Web Site 「IDEAS」
【参照サイト】花王 ニュースリリース 「花王史上最高の洗浄基剤「バイオIOS」を開発」
【参照サイト】総務省 「エジプト」

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