社会課題の解決を事業に。CSV事業開発のプロセスとは?

社会課題の解決を事業に。CSV事業開発のプロセスとは?

近年、緊急性の高い社会課題をビジネスで解決しようとする企業に注目が集まっています。それに伴い、ソーシャルビジネスや社会起業家などの言葉が広く知られるようになりました。社会問題の解決を事業として取り組むことが可能だと認知され始めているなか、CSR(事業に伴うリスクをマネジメントするもの)とCSV(事業機会やブランディングに繋がるもの)に注目が集まっています。

社会課題の解決を事業として取り組むためには、CSRとCSVのどちらの視点も重視して企業経営を行うことが重要です。今回は、社会問題の解決を事業にするための「CSV事業開発のプロセス」についてそのノウハウをご紹介していきます。

目次

1. 成功するCSVとは?国内事例をご紹介

CSVとは、「Creating Shared Value」の略称で、「企業が競争力や経済性の向上を追求しつつ社会的な課題解決に取り組むための考え方」です。2011年に経営学者のマイケル・ポーター氏が、寄付や慈善活動ではなく、ビジネスとして社会問題の解決を行うことで、「社会的価値」と「企業的価値」のどちらも高めることができると論じ、CSV事業という概念が世の中に広がりました。

CSV事業を行っていると、市民目線で事業に取り組んでいる企業だと消費者に認識されるメリットがあります。また、ビジネスとして社会問題の解決を行うことで、事業計画に基づいて持続的に取り組めるというメリットも存在します。近年では、大手企業からベンチャー企業まで、数多くの企業が独自の強みを活かしたCSV事業を行っています。以下、CSV事業に取り組む企業の例をご紹介します。

キリングループ

特定保健用食品(トクホ)に指定されている、コーラや無糖紅茶の販売、グループ内の医療品企業と共同で研究開発した乳酸菌を使用した製品を販売し、本業を通じた人々の健康増進に貢献しています。また、キリングループでは、ビールの原料であるホップ産地の地域活性化や、ワインの原料となっているブドウ農家への技術提供を通した産業の創造などを行っています。

【参照サイト】キリンホールディングス

伊藤園

緑茶の原料を生産している農家と直接契約し、伊藤園で使用する茶葉を生産してもらうかわりに、全ての茶葉を購入するCSV事業を行っています。高品質な茶葉を持続的に仕入れるという企業の目的を叶えながら、農家の安定的な収入を確保し、地域社会を盛り上げられるという仕組みとなっています。
【参照サイト】伊藤園

テーブルクロス

テーブルクロスは、「“食”を通して、世界中に幸せを」というコンセプトを掲げているベンチャー企業です。テーブルクロスが提供するグルメアプリから予約を行うと、広告料としてテーブルクロスに収益が入る仕組みとなっています。その収益の一部は国内外の子供の支援を行うNPOの運営資金として寄付される仕組みになっており、より多くの予約が行われることでより社会に貢献することができる事業となっています。
【参照サイト】社会貢献ができるグルメアプリ TABLE CROSS

2. CSV事業を創るプロセス

持続可能なCSV事業を創るために、どのようなプロセスを辿っていけば良いのでしょうか。ポーターが提唱する社会課題解決と利益の両立のための指針を考慮すると、以下の3つのプロセスを行っていくのが理想的です。

①製品と市場の見直し

CSV事業を作っていく上で、最初に行うべきことは製品と市場の見直しです。具体的には、自社製品の強みと弱み、特徴、デザイン、購買者層、差別化ができているポイント、どのような市場に属しているのかなど、多岐に渡って分析・考察することが必要になります。分析や考察を行う際には、内部と外部(消費者)の目線、どちらの視点も取り入れることが必須です。

製品と市場の分析・考察ができ、自社製品について深く理解できた段階で、自社製品の強みを活かして解決できる社会課題を見つける工程へ移っていきます。製品・サービスのメッセージと親和性の高い社会課題を見つけることができたら、既存の市場ではなく、新しい市場を開拓し、その市場にフィットする形で製品をデザインしブランディングしていくという流れになります。

②バリューチェーンの生産性の再定義

バリューチェーンにおいて資源やコストの非効率がある場合、そこを削ることで環境的・社会的な負荷を減らしながら生産コストなどの様々なコストを削減することできます。例えば、生産段階での省エネを推進することで、二酸化炭素の排出量を削減でき、コストの削減も同時に行うことができます。

また、商品やサービスを届けるまでに非効率な物流の流れをなくすことで、商品の品質の低下を防ぐことができます。広告であれば、非効率な宣伝をなくすことで、認知・集客効果ダウンを防ぐことができます。このようにして、購買物流や製造から、サービス展開に至るまでのバリューチェーンの生産性を再定義していくことが必要です。

③地域に密着し、課題解決の方法を探る

CSV事業を創る方法の1つとして、地域に密着するという方法があります。地域に密着した産業を創造するためには、企業の目的だけではなく、課題解決を通じた地域への貢献をする必要があります。また、地域の人々の雇用など、地域にとって何らかのメリットがあるような仕組みを構築する必要があります。CSVにおいては、事業を遂行することでそれぞれのステークホルダーに価値がもたらされるという構造を作っていくことが求められます。

3. 事業開発をするうえで注意するべき点

CSV事業を創るプロセスを踏まえた上で、事業開発で注意するべき点についてご紹介していきます。

徹底的に製品・市場を分析する

製品と市場を分析した結果、これまでとは異なる新しい市場を開拓する可能性もあります。開拓した市場での自社の優位性を確保するため、製品・市場の分析は徹底的に行われなければなりません。今回はその具体的な方法として、多角的な視点から分析できるVRIO分析をご紹介します。

VRIO分析

Value(経済的な価値)・Rarity(希少性)・Inimitability(模倣困難性)・Organization(組織)の4つ視点から、市場においての自社の強みや競争優位性などを多角的に分析することができます。

1. Value(経済的な価値)

自社の経営資源が「市場の機会に対して」、「競合他社の動きにどれくらい対応できるのか」という視点から分析します。これによって、外部要因の分析、市場に進出するタイミングを考えることができます。

2. Rarity(希少性)

自社のサービスや製品は、他社と比べてどれくらいの希少性があるのかという視点から分析していきます。希少性が高ければ高いほど、経営資源として優れているものになりえます。

3. Inimitability(模倣困難性)

他社が真似できない経営資源とは何か?という分析を行うための要素です。模倣困難性を分析する際には、以下のポイントを意識して考えましょう。

  • 自社の製品・サービスを模倣するには、どのくらいの時間と経済力が必要になるか
  • 外部から見て経営資源が判断しやすいか否か
  • 特許や制約などを必要としている製品・サービスなのか

上記のポイントを意識して分析を行うことで、模倣困難性を把握することができます。

4. Organization(組織)

自社の保有している経営資源をうまく活用できる組織体制が整っているか分析する要素です。いかに優れた経営資源を持っていたとしても、組織体制が整っていないと事業継続が難しくなります。自社の成熟度や意思決定の速さなどから、組織体制について分析を行いましょう。

徹底的な製品・市場の分析は、CSV事業を創るプロセスの中で重要なパートになりますので、このようなフレームワークを用いて分析を行う必要があります。

共感してくれるビジネスパートナーを探す

事業開発を行う際に、1社のみでは社会問題の解決を実現するのが難しいです。そのため、自社に共感してくれるビジネスパートナー(企業)を探し、協働するという方法があります。

共感してくれるビジネスパートナーを探す手法としては、企業のビジョンやミッションに重なり合う部分がある企業を探す、もしくは、自社と関わることで何らかのメリットがある企業を探すのが良いでしょう。具体的には、自社の強みと協力してくれる企業の強みが重なることで、付加価値が高い製品やサービスを提供できるというメリットが挙げられます。

協力することでお互いにメリットが得られる場合、一方通行ではなくWin-Winの関係性を構築しやすく、良い関係性が持続しやすいです。自社だけで事業開発の全てを行うのではなく、共感してくれるパートナーを増やす仕組みづくりが、事業開発の成功の鍵となります。

好循環を生み出す長期的な計画を策定する

企業の利益と社会問題解決のどちらも両立させる事業開発は、多くのプロセスが必要なため、短期間で行うことは非常に難しいです。そのため、CSV事業開発では、好循環を生み出すための長期的な計画が必須になってきます。計画を立てる際には、まずは企業のビジョンやミッションを明確化し、上記でご紹介したフレームワークなどを用いて、自社の強みを分析していきます。そして、共感してくれるビジネスパートナーを探し、長期的な計画を立てていく流れが理想的です。また、実際のアクションまで落とし込むためには、長期的な計画に具体的な数値目標や行動計画も取り入れましょう。

いかがでしたでしょうか。CSVに取り組む意義やCSV事業を創るプロセスについてご紹介してきました。2015年に持続可能な開発目標(SDGs)が掲げられてから、より一層CSV事業への関心が高まってきています。様々な先行事例がある中で、自社ならではの強みや特徴を活かしたCSVという観点を取り入れた事業づくりの方法を考えてみてはいかがでしょうか。

4. 自社の事業で共有価値を生み出すには?

本サイトを運営するIDEAS FOR GOOD Business Design Labでは、「Turn Ideas into Actions(アイデアを形に変える)」をコンセプトに、会員の方向けに(登録無料)SDGs・サステナビリティ・CSV・サーキュラーエコノミー関連プロジェクトの企画立案・立上・運営までをサポートしております。IDEAS FOR GOODならではの豊富な国内外の事例を活用し、御社の強みを生かした事業づくりについて考えてみませんか?IDEAS FOR GOODチームとの共創プロジェクトも可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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