【SDGs目標2】飢餓をゼロにする企業の重要な役割とは?世界のユニークな事例とポイントを解説

【SDGs目標2】飢餓をゼロにする企業の重要な役割とは?世界のユニークな事例とポイントを解説

日本に住んでいると飢餓問題に触れることは多くありませんが、未だ世界では飢餓に苦しんでいる人がいます。自然災害や紛争、また貧困や食糧不足など、様々な要因で飢餓問題が深刻化しています。今回は、SDGsの目標2に掲げられている「飢餓をゼロに」を実現するために、企業が担うべき重要な役割と、飢餓をなくすために企業が取り入れることができる、世界のユニークな事例について解説していきます。

目次

1. SDGs 2.「飢餓をゼロに」とは

SDGsの目標2「飢餓をゼロに」とは、世界中の人々に安全で栄養のある食料を確保し、飢餓をなくすこと。栄養不足で苦しんでいる人をなくし、持続可能な農業を推進していくことを掲げた項目です。この目標では、以下のようなターゲットが定められています。

  • 2030年までに、飢餓を撲滅し、すべての人々、特に貧困層および幼児を含む脆弱な立場にある人々が一年中安全かつ栄養のある食料を十分得られるようにする。(2.1)
  • 開発途上国、特に後発開発途上国における農業生産能力向上のために、国際協力の強化などを通じて、農村インフラ、農業研究・普及サービス、技術開発および植物・家畜のジーン・バンクへの投資の拡大を図る。(2.a)

2030年までの達成を目指すSDGsですが、飢餓に苦しめられている人は2014年から年々増加しています。国連食糧農業機関(FAO)が2020年に発表したThe State of Food Security and Nutrition in the World 2020によると、現在6億9000万人(世界人口の8.9%)、約11人に1人が飢餓に苦しめられていることがわかっています(2019年)。現在、飢餓に苦しんでいる人が多い地域は、アジアとアフリカとなっています。2030年には、アフリカ地域が世界の飢餓で苦しんでいる人の半数を占めるまでに増加すると予測されており、早急な対処が求められています。

2. なぜ飢餓がなくならないのか

なかなか解決されない飢餓問題には、先進国での食料事情が関連しています。三井物産戦略研究所のレポート「世界の穀物需要の行方」(2017年)によると、主要な穀物(コメ、小麦、トウモロコシ)などの消費量は世界的に年々増加していますが、日本などの先進国では、穀物の摂取量は減少傾向にあります。その一方で、牛の飼料としての穀物の消費量が増え続けています。経済が成長するにつれ「食肉文化」へと転換していく傾向があり、今後も先進国を筆頭に、飼料としての穀物需要が高まることが予測されています。

現在数多くの新興国では、耕地面積の多くを自国で消費する食用穀物の栽培にあてていますが、昨今の先進国の食肉文化の成長を支えるため、飼料の穀物栽培を行うための耕地面積を拡大しています。食糧難の問題が深刻であるにもかかわらず、先進国の食肉文化の成長を支えるために飼料の穀物栽培の耕地面積が拡大しているという矛盾があり、飢餓問題が解決しない要因となっています。

また、気候変動による自然災害も飢餓がなくならない一つの要因です。温室効果ガスなどの排出量が多くなると、気温の上昇や降雨量が変化し、干ばつなどの自然災害が発生します。発展途上国など、農業システムに人口の大部分が依存している地域では、気候変動による自然災害の影響を受けやすく、食糧難の問題につながっています。

さらに、紛争や貧困の問題は飢餓に直結しています。人々の生活・生命を脅かす問題は深刻な飢餓に繋がりやすく、さまざまな要因が存在していることがわかります。直接的に飢餓問題にアプローチする方法もありますが、関連する環境・社会問題の解決が飢餓の撲滅を推進していくことに繋がっていきます。

3. 事例から学ぶ、飢餓をなくすためのユニークなアプローチ

ここまでご紹介してきた「なぜ飢餓はなくならないのか」という観点を踏まえ、飢餓をなくすためのユニークなアプローチの事例をご紹介していきます。

飢餓と廃棄の現場をマッチングして飢餓をゼロに

Feeding Americaの無料アプリ「MealConnect」は、廃棄予定の余剰食料を抱える事業者と数千のフードバンクや食事提供プログラムとを結びつけるマッチングプラットフォームです。このアプリは、事業者が廃棄予定の余剰食料を掲載すると、アルゴリズムが最適な地元の食料貯蔵所や食料配給プログラムを選定し、マッチングしてくれるという利点があります。「MealConnect」から、食品廃棄問題の解決に繋がるアプローチの方法を学ぶことができるでしょう。

自然の力を借りて飢餓をゼロに

インド発の「MittiCool」は、粘土と水の循環によってできた冷気で食品を冷やすことができる、電気を一切使わない画期的なエコ冷蔵庫です。「MittiCool」は、約5000円ほどで購入することができ、所得の低い人でも食料を安全に保管することができます。
技術革新によって、製品の利便性を追求する傾向がありますが、「MittiCool」は、身の回りにあるものを違った視点から見つめ直すことで生まれました。製品を開発し、飢餓問題にアプローチする方法の一例として参考になる考え方・捉え方ではないでしょうか。

値付けの工夫で飢餓をゼロに

有名カナダ人シェフのジャガー・ゴードン氏が、トロントで始めた全米初となる「値札のないスーパーマーケット」。このスーパーマーケットは、”pay-what-you-can”方式で運営されており、各商品に対して、支払う金額は購入者が全て決めることができます。この支払い方式によって、経済的に苦しんでいる人でも、食品を購入することができる仕組みとなっています。スーパーマーケットで扱っているモノ(新鮮な野菜やお惣菜、ペットフード)は、他のスーパーやレストラン・食品製造工場などから、廃棄予定のモノを寄付という形で集めたもので、食料廃棄の削減にも繋がっています。

土壌を豊かにする有機農法で飢餓をゼロに

人気アウトドアブランドのパタゴニアは、有機農業をベースとし、光合成の活性化と炭素が外に出ないよう、あえて「耕さない」農法で育つ穀物「カーンザ」を使ってビールを作りました。現在、パタゴニアは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションを掲げ、アウトドア製品、ビール製造業の他に、オーガニック食品も揃えています。

この事例のユニークなポイントは、有機農業を行い、飢餓をなくすためにアプローチしている点です。豊かな土壌を守る有機農法により、持続的にその土地で作物を収穫することができます。食糧難に苦しむ地域にとって、継続的に作物を収穫できる土地は極めて重要です。持続的に作物を収穫できる土壌づくりにつながる、有機農業は今後さらに注目されるでしょう。

昆虫の保護で飢餓をゼロに

国際的な科学批評紙「Biological Conservation」によると、昨今では、地球上の昆虫の種類のうち40%以上が減少しており、昆虫の総質量が毎年2.5%ずつ減少しています。そんな中、深刻な昆虫減少をストップさせるための解決策をフランス人のデザイナーのマレーネ・ヒューソード氏が示してくれました。マレーネ・ヒューソード氏はキングス・カレッジ・ロンドンの科学者と協力し、都市で暮らす虫たちの避難所「PLEASE STAND BY」を発表しました。PLEASE STAND BYは、ミツバチやチョウなど昆虫に適した環境にこだわり、家具自体は自然に土にかえっていく素材が使用されています。PLEASE STAND BYの家具は、人間と昆虫たちが共存可能な社会を作り出していく為の視点の持ち方を教えてくれます。

4. アイデアを実現するポイント

ここまでご紹介してきた世界の飢餓の現状、飢餓をなくすためのアプローチの事例を踏まえて、アイデアを実現するポイントについてご紹介していきます。

食品廃棄削減への取り組みを飢餓問題につなげる

今後地球に訪れる人口増加による食料危機を防ぐという観点から考えても、食品廃棄をなくすことが大事になります。例えば、飲食店や食品加工業などの場合、廃棄予定の食品をフードバンクに寄付する、また、子ども食堂に寄付することで食品廃棄をなくすことができ、飢餓問題・子供の貧困問題にアプローチすることができます。

消費者庁が公表している食品ロス削減に関する資料によると、日本国内では年間で2,842万トンと大量の食品が廃棄されていることがわかっており、現在数多くのメディアなどで、企業が注力して取り組むべき問題と挙げられています。今後、食品関連の事業を行っている企業は、食品廃棄問題にアプローチすることは、企業の社会的責任として必須になってくるでしょう。

飢餓の要因となる温室効果ガスの排出量を減らす

温室効果ガスの排出量を減らすことで、気温の上昇や降雨量の変化など気候変動の防止に効果的にアプローチでき、自然災害の発生を防ぐことができます。それが、開発途上国で暮らす人々が安定的に食料を確保できることに繋がります。

企業が飢餓問題にアプローチする方法として、効果的かつ現実的に行えるものとしては、温室効果ガスの排出量を減らすという方法があります。社内で使っている電気を環境にやさしいLED照明に変えるなどの方法が現実的に取り組みやすいでしょう。

LED照明は、省電力かつ寿命が長く、廃棄の処理が容易というメリットがあります。その他には、太陽光発電や風力発電などのクリーンエネルギーを積極的に使い、温室効果ガスの排出量を減らすという方法があります。まずは、現実的に始めやすいものから飢餓問題へのアプローチを検討してみてはいかがでしょうか。

社内で使っている製品を環境に配慮したモノに変えていく

CO2の排出量が少ない製品を積極的に使っていくことは、気候変動を止めることに繋がり、飢餓問題へのアプローチにもなります。現在、日本ではまだあまり浸透していませんが、海外では商品のカーボンフットプリント(生産工程から消費・廃棄に至るまでのライフサイクルを通じた温室効果ガスの排出量)の表記がある商品が多くあり、二酸化炭素の排出をできるだけ抑えている製品が数多く展開され、消費者から支持されています。社内で使っている製品を環境に配慮したモノに変えていくことは、飢餓問題にアプローチできるだけではなく、企業のサステナブル・ブランドの確立にも繋がるでしょう。

いかがでしたでしょうか。飢餓をなくすためのアプローチ方法を考えるうえで、気候変動や食品廃棄の問題は、切り離せない問題になりそうです。様々な先行事例がある中で、自社ならではの強みや特徴を活かした飢餓問題へのアプローチ方法を考えてみてはいかがでしょうか。

5. SDGsへの取り組み事例をもっと調べるには?

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【参照サイト】消費者庁消費者政策課 食品ロス削減関係参考資料(2019年)
【参照サイト】Biological Conservation
【参照サイト】農林水産省 知ってる?日本の食料事情

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