ブロックチェーンの特性を活かした社会課題へのアプローチとは?世界の事例まとめ

ブロックチェーンの特性を活かした社会課題へのアプローチとは?世界の事例まとめ

仮想通貨に用いられる基盤技術として知られるブロックチェーン。低コスト・高セキュリティのシステムを構築できることから、近年さまざまな分野への応用が期待されています。今回は、社会課題解決のためにブロックチェーンを活用した事例をご紹介します。

目次

1. ブロックチェーンとは

ブロックチェーンとは、「情報通信ネットワーク上にある端末同士を直接接続して、暗号技術を用いて取引記録を分散的に処理・記録するデータベースの一種」のことをいいます(総務省)。一定期間の取引データをブロック単位にまとめ、その取引データを鎖(チェーン)のようにつないで蓄積していく仕組みです。

ブロックチェーンで行われた取引はリアルタイムでネットワーク参加者全員に共有されます。データが分散して管理され、改ざんが起こらないようになっているため、セキュリティを高めるための大規模開発が必要ありません。これが結果的に低コスト・高セキュリティのシステムを作り出しています。

ブロックチェーンは、はじめに仮想通貨ビットコインの基盤となる技術として生まれましたが、その汎用性の高さから、近年は金融分野以外でもさまざまな企業や団体が取り入れはじめています。

2. ブロックチェーンを活用した社会課題解決の事例

本章では、ブロックチェーンを活用した社会課題解決の事例をご紹介します。

2-1. サプライチェーンの透明性を高め、カカオ農家に利益を還元するチョコレート

カカオ農家が受け取る利益はサプライチェーン全体の6.6%にすぎず、農家自身に利益が還元されにくい状況にあります。そこで、スタートアップで品質管理ソフトウェアを開発しているAkash氏は「Right Origins」という財団を立ち上げ、その本業で培ったブロックチェーン技術を応用し、サプライチェーンの透明性の実現を図っています。この事業を通して得た利益の80%は農協、15%は投資家に還元され、5%は財団に残る仕組みになっており、従来のサプライチェーンの2倍から5倍の価値を農家に提供しています。

2-2. コーヒー豆農家と消費者をブロックチェーンでつなぐアプリ

「Thank My Farmer」は、スイスを拠点に活動するFarmer Connect社がIBM社のブロックチェーン技術を活用して作った、消費者とコーヒー豆の生産者をつなげるアプリです。サプライチェーンの透明性を実現するため、次の業者へ届けるまでしか使わなかった製品情報をブロックチェーン技術でつなげ、業者間でシェアし、複雑で断片的だった情報を一本化することに成功しました。

アプリ内では、今飲んでいるコーヒーの原料となる豆がどこの農園からやってきて、自分のいるコーヒー店までどのように届いたのか、それに関連する業者や地図データを見ることができます。また、生産者IDを供給プロセスにつなげることで、生産者の身元や収入を裏付け、IDに記録された情報は生産者が会社や店を立ち上げる際にローンを組むための信用を作る手助けにもなります。

2-3. 衣服の素材や労働環境、製造者をトラッキングできるスマートタグ

スウェーデンのクリエイター、ビラル・バッティー氏が考案した衣服のスマートタグ「PaperTale」。従来、衣服のタグには生産国や素材の情報しか掲載されておらず、素材の出どころや、工場の従業員の労働実態を詳しく把握するのは困難で、消費者が「環境や人権に配慮された商品を買いたい」と思ったとしても、どんな商品が環境や人権に配慮されているか分からない状況にありました。

「PaperTale」は、このタグがついた衣服にスマートフォンを近づけることで、専用アプリが材料調達の方法から、製造方法、労働環境、製造者の情報、輸送の方法などものづくりの一連のプロセスを読み取り、音声つきで教えてくれます。消費者は購入した衣服の物語を垣間見ることができるだけでなく、水の使用量やCO2排出量など、製品製造においての環境フットプリントも計算できるようになっています。従業員の労働時間や、労働条件に関するフィードバックなどもブロックチェーン技術を使用して記録されているため、事業者のデータ改ざんを防ぎ、製品の透明性を確保します。

また、消費者はアプリを介して労働者に直接チップを渡したり、労働者やその子供が学校教育を受けられるように寄付したりでき、生産背景を知ることにとどまらず生産者を支援することが可能です。

2-4. 再エネ導入で気候変動を緩和し、CO2排出権を販売するコーヒー農家

収入が十分でないインドネシアの多くのコーヒー農家は、LPGガスの購入が難しいことから、森林伐採で得た薪を燃やすことで日々の生活の熱源を得ています。しかし、薪を燃やして発生するCO2が気候変動を助長する可能性があり、農家の貧困を深刻化させる悪循環に陥っています。

そこで、バリ島を拠点とする「su-re.co」はバイオガスキットを開発し、農家が育てる家畜の糞や家庭からでる残飯などを発酵させることで、クリーンなガスと有機堆肥を得られる仕組みを作りました。そしてsu-re.coは、バイオガスキットの導入により削減できたCO2排出量を、ブロックチェーンを活用して「CO2排出権」として販売するシステムの確立を目指しています。

削減されたCO2量に応じて農家には対価としてモバイルマネーが支払われる仕組みで、農家がバイオガスキットを導入する動機となり、インドネシアにクリーンエネルギーの利用を広げる契機となる可能性を秘めています。

2-5. ブロックチェーンで廃棄物の需要と供給をマッチングするプラットフォーム

オランダのスタートアップ企業「Excess Materials Exchange」は、廃棄物を出す企業と、それを資源として活用したい企業を結びつけるデジタルマッチングプラットフォームを開発しました。企業は、他の企業がどんな素材を保有しており、その素材の質や廃棄されるタイミングといった情報を必要としますが、そういった情報は機密性が高く、素材を保有する企業は情報をマーケットプレイス上に公開したがらないという問題がありました。そこで、ブロックチェーンを用いることでプライバシーを確保し、情報の透明性を担保しています。また、ブロックチェーンだけでなくAIを用いることでマッチングの最適化を図っています。

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3. ブロックチェーンを活用するためのヒント

ブロックチェーン技術は、仮想通貨の基盤となる技術として発明されましたが、データの透明性を担保する側面が注目を集め、現在ではさまざまな事業で活用され始めています。

特に、ブロックチェーン技術を用いてサプライチェーンの透明性を高める動きが進んでいます。チョコレートや洋服など、原料の調達から製造、販売を経て消費者の手に届くまでに多くのプロセスを経る商品はサプライチェーンが複雑化しやすく、これまではその追跡が難しいとされてきました。フェアトレード認証を受けた商品も市場に出回ってきているものの、消費者がその生産工程を直接知る機会は限られていました。

そこで、情報が改ざんされにくいという特徴を持つブロックチェーン技術を用いることで、どういう経緯があって私たちの元に商品が届いたのかが分かるようになります。製品の裏側で何が起きているかといった情報が手に入りやすくなることで、生産者を身近に感じられるだけでなく、生産者の買いたたきといったサプライチェーン上の問題が改善されていくこともあるかもしれません。

一方で、ブロックチェーンの課題も指摘されています。今議論が活発になっているのはエネルギー消費です。暗号資産の取引で承認作業「マイニング」を行う際に大量の電力を消費するとして、ビットコインは年間116.12テラワットの消費が指摘されています(2021年6月現在)。2025年までに世界中のブロックチェーンを100%再生可能エネルギー化・2040年までに暗号資産業界全体の排出量を実質ゼロにするなどの目標が掲げられていますが、ブロックチェーンが解決する社会課題と、ブロックチェーンが排出する環境負荷の両輪を注視する必要があります。

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