【イベントレポート】東京のローカルプロジェクトに学ぶ都市型ウェルビーイングのつくり方。企業はどのように地域の人々の生活を豊かにできるのか?

【イベントレポート】東京のローカルプロジェクトに学ぶ都市型ウェルビーイングのつくり方。企業はどのように地域の人々の生活を豊かにできるのか?

近年、GDPを指標とした成長のバックラッシュを受け、「環境」「社会」「経済」のすべてに配慮したウェルビーイングシティのあり方が全世界で模索されています。行政のレベルでそれらが考案されているだけではなく、新型コロナの蔓延を通じて人々が自分にとっての「豊かさ」について正面から考えはじめたのではないでしょうか。実際に欧州の各都市では「ウェルビーイング」がまちづくりのテーマとしても掲げられ、経済成長だけではなく、そこに暮らす人々にとっても、自然環境にとっても良い影響をもたらす施策が検討されています。

今回は、それぞれ芝浦と表参道を拠点に活動を展開する、株式会社SHIBAURA HOUSEの伊東勝氏と株式会社4Natureの平間亮太氏に、東京のローカルプロジェクトでのウェルビーイングな実践をご紹介いただきました。

目次

1. ウェルビーイングとは?

ウェルビーイングとは心身と社会的な健康を意味する概念で、定訳はなく、満足した生活を送れている状態、幸福な状態、充実した状態などの多面的な幸せを表す言葉です。IDEAS FOR GOODでは3つの「P」、環境(Planet)、社会(People)、経済(Prosperity)に則して捉えています。「ウェルビーイング」という言葉自体は2019年頃から徐々に注目を集め、2020年のコロナ禍で一気に注目されるようになりました。

フランス・パリでは徒歩15分圏内で済むよう、サイクリングロードや歩道を整備する街づくり「15分都市(ウォーカブルシティ)」が構想として生まれ始めています。3Pに分けて考えると、以下のようなメリットが挙げられます。

  • 環境:CO2排出量が減る
  • 社会:自動車より7倍多くの人が移動できる。自動車事故が減り、まちの安全が向上する
  • 経済:自転車や徒歩移動だと地域の商店に気軽に入店できるようになるため、地域の商店の売上が伸びる

ウェルビーイングは元々幸福な場所に宿っているのではなく、それぞれの街に問題があり、その街の課題をクリエイティブに解いていくプロセスです。街の課題を解決するため、先進的なウェルビーイングの取り組みを実施している海外の事例を3つご紹介します。

①オランダ・アムステルダム

オランダ・アムステルダムは2020年4月に「ドーナツ・シティ宣言」を掲げ、世界でも積極的にサーキュラーエコノミーを実践する都市として有名です。屋台の飲食物から建築物まで、100%サーキュラーで運営する音楽フェス「DGTL Amsterdam」を開催したり、アムステルダムの運河でプラスチックごみを拾うツアー「Plastic Whale」を実施したりしています。

②スペイン・バルセロナ

2012年のスペイン金融経済危機から人間中心の都市では立ち行かなくなるとして、スペイン・バルセロナでは経済ではなく人間中心な都市のあり方を模索しています。都市を生態学的な観点から捉え、データサイエンスを使った分析、廃棄物処理、エネルギー供給などをバルセロナ内で完結させることを試みています。

道路を住民の手に取り戻す「Superblock Project」を立ち上げ、スーパーブロック内は地元住民が使うよう、徒歩や自転車移動をメインにすることで地域のコミュニケーションが盛り上がるような設計になっています。

③アメリカ・ポートランド

アメリカ・ポートランドは自然と都市の境界を定めたコンパクトシティで、19世紀のゴールドラッシュから発展した街です。アメリカの他の都市がさらに発展していく中、ポートランドはあらかじめ都市限界点を定め、その結果、全米で最も住みやすい街、全米で最も自転車移動に適した街と称されています。

そんなポートランドで、地元の大学生が考案した、社会と環境の持続性を掲げたコインランドリー「Spin Loundry Lounge」が誕生しました。環境に優しい洗剤・柔軟剤・洗濯機が使えるだけでなく、ランドリーにカフェが併設されており、ランドリーの待ち時間に仕事や勉強の場所としても使えます。

2. 東京のローカルプロジェクト

次に、東京でウェルビーイングを推進する「SHIBAURA HOUSE」と「4Nature」について、それぞれゲストからご説明いただきました。

2-1. SHIBAURA HOUSE

東京都港区にある田町駅から徒歩5分の場所に位置するSHIBAURA HOUSEは、元々1952年に創業した広告会社です。今も広告会社として既存のお客様を大切にしつつ、SHIBAURA HOUSEとしてコミュニティスペースを地域のために開放しています。

伊東さんは子供の頃、東京にどんどん新しい建物や人が増えていくなかで、隣の会社が何をやっているか分からないことや、オフィス街であるがゆえに土日は人が消えてゴーストタウンのようになってしまい、人と人との繋がりの薄い状態が気になっていたといいます。社会のIT化に伴い、広告製版の仕事も徐々に減る中、伊東さんが会社を継いだ2007年頃に、社屋を地域のコミュニティスペースも兼ねたオフィスに改装しました。1階と2階は地域の人が使えるスペースにし、9時から17時まで、近所の子供たちが無料で自由に遊べるようになっています。3階や5階はコワーキングスペースやイベントスペースがあり、業種や会社を問わず、働く人々が自由に使えます。

また、SHIBAURA HOUSEは循環・学びの場でもあります。素焼きの状態で沢山残ってしまった有田焼の器を、実際にオランダのデザイナーと組んでアップサイクルし販売したり、野菜の皮を捨てずに活用する方法をシェフと子供が模索したりするイベントも開催しているのです。

2-2. 4Nature

4Natureは2018年に設立された会社で、飲食店に生分解可能なサトウキビストローを置いてもらい、使い終わったサトウキビストローを回収・堆肥化して循環するしくみを構築しています。

現在、4Natureが手掛ける事業には「コミュニティコンポスト」と「コミュニティマーケット」があります。コミュニティコンポスト事業は消費者が主体となり、会員が共同で家庭の生ごみを堆肥化することで生ごみの削減に貢献しながらその堆肥の活用方法を模索する活動です。回収されたコンポストは、たとえば藍染めに使う藍を屋上で育てている人に使ってもらっています。

コミュニティマーケットでは、東京・歌舞伎座でファーマーズマーケットを開催し、こだわりを持って丁寧に作られた野菜を、農家と直接コミュニケーションを取りながら購入できる場を設けています。

コミュニティコンポストとコミュニティマーケットをつなぐのが新事業である「CSAループ」で、こだわりをもって作られた野菜が定期的に届く仕組みです。消費者は野菜の代金を事前に支払うことで、農家はそれを資金源とすることができます。また、農家は消費者の出した生ごみを受け取り、堆肥として使うことで循環させています。

3. 都市型ウェルビーイングを実現するポイント

最後に、都市型ウェルビーイングを実現するポイントを2つにまとめました。

3-1. 関わってもらう人のグラデーションを作る

コミュニティに関わろうとしてくれる人には、「仕事で忙しいのでそんなに沢山活動できない」「もっと積極的に活動したい」など、色々な人がいます。どんな立場の人であってもコミュニティに関わることのできるよう、活動量や活動内容にあえて差をつくり、グラデーションのようにして、忙しい人でも緩くつながりを持ってもらうことが大切です。

3-2. 生活する場所にしていく

東京の特定の場所を単に「仕事する場所」「寝るためだけの場所」と位置づけてしまうと、ウェルビーイングを実現していくことが難しくなってしまいます。「生活するための場所」として小さなコミュニティを複数つくり、職場や家族、友人ではない、同じ地域に住む人とのコミュニケーションを増やしていくことが、場所を豊かにする第一歩になります。

最後に

いかがでしたでしょうか。イベントでは、海外都市の事例も参考にしながら、日本そして東京ならではのウェルビーイングな施策について議論を深めました。今回ご登壇いただいたSHIBAURA HOUSEさんや4Natureさんのような活動が起点となり、今後は東京でもサステナブルな暮らしを実現しようとするコミュニティの広がりに期待が高まっていくはずです。

BDLでは今後もサステナブルな事業開発に役立つさまざまなイベントを開催していきます。ぜひご注目ください!

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