IT業界は意外にも環境負荷が高い?今後注目必至の「デジタル・サステナビリティ」とは

IT業界は意外にも環境負荷が高い?今後注目必至の「デジタル・サステナビリティ」とは

紙の本が電子書籍に、CDやMDがデータに、旅券がEチケットに……デジタル化は私たちの生活に利便性をもたらし、必要となる資源を削減してきました。一方で、昨今ウェブサイトそれ自体のサステナビリティにも注目が集まっています。

IT業界は、資源を多くは使わない「エコな」業界だと思われがちですが、電力消費の側面から考えると実は環境負荷が大きく、データセンターの排出するCO2は航空業界に匹敵すると言われるほど。新型コロナでDXに拍車がかかるなか、IT業界のサステナブル化は急務となっています。今回、IDEAS FOR GOOD Business Design Labを運営するハーチ株式会社では、デジタル・サステナビリティの分野の先駆けであるイギリスのWholegrain Digital社からゲストをお呼びし、IT企業のサステナビリティについて考えるワークショップを実施しました。Wholegrain Degitalは、サイトのCO2計測ツールの開発や、Marks&Spencer、Network Railなど大手企業のサイト制作を手掛けています。本記事では当日の議論の様子をお伝えします!

デジタル・サステナビリティとは?

デジタル・サステナビリティとは、主にWebサイトの環境負荷を減らし、自然環境にも社会にも良いサイトの運用を行うこと。IT企業は、紙をほぼ使わないことや、リモートワークが可能で通勤時のCO2排出量を削減できるという点から「エコ」な業界だと思われる傾向があり、昨今では環境負荷を考慮した理由からDXを進めている企業も多くなってきていますが、データセンターや通信所、家庭でそれぞれ膨大な電力が消費されていることを考えると、デジタル分野の環境負荷はかなり大きくなっているのです。

今回レクチャーしていただいたWholegrain Digital社の創立者・Vineeta Greenwoodさんによると、オンラインでの活動による電力消費量は、製造業が盛んなドイツが出すCO2排出量に匹敵するといいます。また、データセンターで装置を冷却するために大量の水が使われていることも問題になっています。

デジタル・サステナビリティ実践のヒント

ワークショップ前半は、Wholegrain Digital社のVineetaさんからのレクチャーでデジタル・サステナビリティへの理解を深めました。サステナブルなWebサイトを運営するのに大切なことは、とにかくサイトを軽くすること。通信負荷の低いサイトはローディングに余計な電力がかからず、環境負荷が低くなります。

また、2Gしか使えない環境に住んでいる・災害で最低限の電力消費しかできない、など高速のネット環境が整っていない人は、通信負荷の高いサイトを閲覧できない可能性があります。しかし、そういった人の中にこそ、情報を必要としている人がいるかもしれません。必要な情報を必要な人に届けるためにも、Webサイトのデザインを工夫する意義はあるのだとVineetaさんは強調します。これが「Less is Moreの原則」。Webサイトをシンプルにしていくことは、環境負荷を下げると同時に、ユーザーエクスペリエンスも快適にしていくのです。レクチャーの中で出てきたWebサイトの環境負荷を低くする方法としては、以下のようなものが挙げられます。

そもそも、使う必要のない画像は使わない

装飾のためにやたらと画像を入れたり、関連性の低い画像を背景に使ったりしない。画像を読み込むだけでかなりの電力を消費すると言われています。

新たな画像形式で配信する

画像が不可欠な場面では、WebP(※画像の画質を担保したまま軽量化した画像を書き出すことができる新しい画像フォーマット。Googleによって開発。)などの次世代フォーマットを使う。ベクターやCSSで代用することも考える。

動画の使い方を見極める

自動再生をやめる。ファイルを圧縮し、極力軽い動画を使う。

サイトデザインに使う色を変える

白は最も電力を消費する色。環境負荷のより低い色(黒、グレー、青など)を使う。普段作業をするときもダークモードを使う。

必要以上のトラッキングをしない

サイト利用者のプライバシーを最優先し、追跡は最低限の情報だけに留める。解析ツールもMinimal GAPlausible Analyticsなどの軽いものを使う。

環境負荷の低いと言われるサイトの事例としては、下記のようなものも存在しており、こうしたサステナブルなサイト制作の流れはイギリスやイタリアなどヨーロッパ圏を中心に広がっています。

デジタル・サステナビリティを、サステナブルに実現するには

今後のSXの中でも大きな位置を占めていくであろうデジタル・サステナビリティ。しかしIT企業に務める人々が普段の業務に加え、デジタル・サステナビリティを実現するために大きく消耗してしまっては長期的な展望が望めません。そこで今回のワークショップの後半では、「デジタル・サステナビリティと従業員のウェルビーイングを同時に実現するためには?」というテーマでアイディエーションを行いました。各チームから発表された社内プロジェクトは下記のようなものでした。

Sustainable Media Challenge

各メディアで、一番「軽い」Webサイトデザインを作るコンテスト。環境負荷の低いWebメディアのサンプルを探ることができる。ゲーミフィケーションの要素を入れることで、みんなで楽しく実践。

Without Battery Monday

週1回、PCを充電しない日を作る。電源が切れる直前に他のメンバーに「ダイイングメッセージ」を残し、バッテリーが切れたら業務終了。PCと従業員の健康が守られる施策。

MTG改革

オンラインミーティングでは常にカメラをONにしなきゃいけない、という思い込みを捨て、顔出しナシで週次のミーティングをする。また、ときには森の中でミーティングをする。「Zoom疲れ」によるストレスを減らす。

デジタルデトックスプロジェクト

定期的に、業務時間中にオフラインで活動する時間を設ける(活動拠点として使う場所のDIYや、NPOへのボランティアなど)。常にPCの前に座っている状態ではなくなるので健康状態が向上し、地域や社会貢献にもなる。
graphic recording

難しい問題こそ、楽しく、クリエイティブに解いていく

今回のワークショップでの気付きは、Webサイトのデザインに画像をたくさん使わなくても、使える色が多少限られたとしても、伝えたい情報は表現でき、そうした制限からも美しいデザインが生まれるということでした。

「Webデザインはこうでなければならない」「記事にはたくさん画像を入れた方がいい」という固定観念を一度捨ててみて、愚直に、消費電力を減らせるかどうか、そしてどんな人々でもアクセスしやすいかどうか、を考えたWebサイトの運営を考えることが、今後のサステナブルなデジタル業界につながっていくはずです。そして、その過程で発生する作業を特定のメンバーが抱え込むのではなく、変化に伴う困難をチームで共有し、みんなでアイデアを出しながら考えていくことが重要になってきます。

なお、このワークショップは社内プロジェクトだけに留まらず、自社の事業をサステナブルに移行していきたい方々に向けても開催したいと思っていますので、IDEAS FOR GOOD Business Design Labからの今後の発表をお待ちください!

【関連ページ】英・Wholegrain Digitalに聞く。IT企業は本当の意味でサステナブルになれるのか?【ウェルビーイング特集 #2 脱炭素】
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