【SDGs目標1】ビジネスで「貧困」にアプローチ!世界のユニークな事例とポイントを解説

【SDGs目標1】ビジネスで「貧困」にアプローチ!世界のユニークな事例とポイントを解説

現在、世界の約10人に1人が1日1.9ドル以下で生活しており、必要最低限の生活水準を満たすことができない人々がいます。貧困問題の解決は、世界規模で取り組むべき持続可能な開発目標(SDGs)でも掲げられており、早急なアプローチが求められています。今回は、企業が貧困問題に取り組む上で参考となる事例とそのポイントについて紹介していきます。

目次

1. 「SDGs目標1 貧困をなくそう」とは?

2015年9月、193の国連加盟国によって開催された「持続可能な開発サミット」で、持続可能な開発目標(SDGs)が策定されました。SDGsは、世界規模で取り組むべき17の目標と169のターゲットで構成されており、2030年までの達成を目指しています。

そのSDGsの目標1「貧困をなくそう」とは、「あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる」ことを目的として掲げられました。ここでいう貧困とは、単に収入や資産がないことだけではなく、飢餓・栄養不良、教育や基本的サービスへのアクセス不足、社会的な差別や排除、意思決定からの除外なども含みます。

目標1「貧困をなくそう」に付随するターゲットには以下のようなものがあります。

  • 2030年までに、現在1日1.25ドル未満で生活する人々と定義されている極度の貧困をあらゆる場所で終わらせる。
  • 2030年までに、各国定義によるあらゆる次元の貧困状態にある、すべての年齢の男性、女性、子供の割合を半減させる。
  • 各国において最低限の基準を含む適切な社会保護制度及び対策を実施し、2030年までに貧困層及び脆弱層に対し十分な保護を達成する。

世界の貧困状況は、年々改善されてきていますが、未だ多くの人々が、貧困が原因で命を落としています。世界銀行は2015年に「収入が1日1.9ドル以下」の状態を貧困と定義しました(絶対的貧困)。世界銀行が発表した貧困率の統計によると、2000年の世界の貧困率が27.72%であったのに対し、2017年は9.18%となっています。7年間で、世界の貧困率は10%以下にまで下がっていますが、政治や経済、紛争や難民、災害などの影響により、安全な住居がないなどの危機的な状態で暮らしている人たちが多く存在します。

2. 日本が抱える貧困問題とは?

貧困問題は、日本にとって他所ごとではありません。世界銀行が発表している世界開発指標によると、2013年の段階で日本の絶対的貧困層(1日の収入が1.9ドル以下)の人は、0.6%と世界と比較して少なくなっています。しかし、日本では相対的貧困(その国の世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態)に苦しんでいる人たちがいます。

厚生労働省が公表している相対的貧困率に関する調査では、日本の相対的貧困率は16.1%(2012年)となっており、「OECD経済審査報告書(2017年)」によると、これはG7(カナダ、フランス、ドイツ、イタリア、日本、英国、米国の7か国)の中で、アメリカに次いで2番目に高い値となっていることが分かります。
また昨今では、日本の子ども7人に1人が相対的貧困に陥っています。子供が相対的貧困に陥ってしまうと、食事が満足にとれないという身体的な問題だけではなく、きちんと教育が受けられない、教育格差問題をも引き起こしてしまいます。

3. 事例から学ぶ、貧困へのユニークなアプローチ

ここまでご紹介してきた貧困問題の実情を踏まえ、アプローチ事例をご紹介していきます。

ホテルで生まれる無駄を活用し、貧困問題にアプローチ

ヒルトンホテルは、NPO団体Clean the Worldと共同で、宿泊客が残した石鹸のリサイクルを行っています。リサイクル石鹸は、衛生用品がなく困っている人たちに届けられます。ヒルトンホテルの取り組みは、貧困問題の解決と廃棄物問題の両方にアプローチしているユニークな事例です。

貧困層にも自然の中で安らげる居住空間を

建築家のステファノ・ボエリ氏が手掛けた「トルード垂直の森」は、世界初の公営住宅、低所得者向けの住宅プロジェクトです。トルード垂直の森は、19階建て、125戸の高層住宅になっています。また、125本の木と5,200本の植物が育つ設計になっており、環境問題と住宅の不足問題の2つの解決につながる建築です。自然に囲まれた生活は、貧しい状況で暮らしている人たちの生活の質(QOL:クオリティオブライフ)を向上させる好機にもなるでしょう。

サプライチェーンマネジメントで貧困を根絶

インドネシアの小規模カカオ豆農家では、複数の仲介人が流通サプライチェーンに関わっており、いくら作って売っても、手数料が抜かれてしまい、安心して暮らせるだけの収入が得られないという労働搾取問題が発生していました。インドネシアのチョコレートメーカー「Krakakoa」は、カカオ豆の収穫、発酵、天日干し、良質なカカオ豆の選別から、固形化、包装までチョコレート作りに関わる全ての工程を管轄し、仲介人が入らない仕組みを構築しました。その結果、サプライチェーンが透明化し、農家の収入を向上させています。

環境を守りながら、雇用の創出も

アルゼンチンのNPO団体Ecolnclusion(YouTubeリンク)は、街中にゴミ収集箱を設置してペットボトルを集め、工場に運んで粉砕し、セメントと添加物と混ぜてエコレンガを作っています。エコレンガは、地方自治体が建設する建物、個人の建物に建材として使用されます。この循環モデルは、環境に配慮しているだけではなく、労働を必要とする人々にレンガを生産するという形で労働機会をもたらしています。また、リサイクルの重要性について人々の意識を高める、教育活動にもなっています。

ブロックチェーンを活用し、確実で透明性のある支援を

資金調達プラットフォームのCharity Starsは、寄付のための独自の仮想通貨「AidCoin(エイドコイン)」を発行し、ブロックチェーン技術を活用して、集金プロセスの透明性を大きく向上させました。AidCoinは寄付したあと、Aidchain(ブロックチェーン)によりお金の行く先を追跡することができます。そのため「いつ、誰に、どのくらい」の寄付金が届くのか見届けることが可能となります。

4. アイデアを支援につなげるためのポイント

ここまでご紹介してきた日本の貧困の現状や、貧困へのユニークなアプローチの事例を踏まえて、アイデアを実現するポイントについてご紹介していきます。

余剰品を活用して、貧困にアプローチする

貧困問題にビジネスでアプローチするため、取り組むべきポイントは「余剰品を効果的に活用する」ことです。上記でご紹介したヒルトンホテルのように、余剰品をリサイクルし、必要な人に届けるという仕組みであれば、新たに大きくコストをかけることなく貧困にアプローチすることができます。

飲食業界であれば、余剰となった食材をフードバンクや子ども食堂を運営しているNPOに提供することで、効果的に貧困問題にアプローチすることができるでしょう。余剰品を活用することは、貧困問題の解決に繋がるだけではなく、廃棄物削減という点で環境問題へのアプローチにもなります。

サプライチェーンマネジメントを取り入れる

サプライチェーンマネジメントを行うことで、仲介人を挟まず手数料をなくせるというメリットがあるだけではなく、生産から管轄することにより、生産品質の向上にも期待できます。サプライチェーンマネジメントで抑えるべきポイントは、AIブロックチェーンなどのテクノロジーを用いて生産、調達、販売などの流通ネットワークを可視化することです。

サプライチェーンの可視化により、どこでどのような取引が行われているのか、配送ルートはどのようになっているのかなどを確認することができます。それによって、取引は適切なのか、また配送ルートは最短距離なのかなどを判断することが可能になります。サプライチェーンマネジメントを行うことは、貧困問題の解決に繋がるだけではなく、適切な経営判断を行うための情報源の確保にも繋がりそうです。

ブロックチェーンを活用して、貧困問題に取り組む

現在、NPOや財団に寄付をしても、「いつ、どこで、だれに、どのように」お金が使われたのか確認することは難しいですが、上記でご紹介したAidcoinのような仕組みを活用して寄付をすれば、ブロックチェーンによってお金の流れを確認することができます。

また、ブロックチェーン技術を使えば、企業のコンセプトと一致している団体にフォーカスして寄付することができます。企業の売り上げの一部を「寄付」して、貧困問題の解決にアプローチしている場合、ブロックチェーン技術を活用した寄付の形を検討してみてはいかがでしょうか。

いかがでしたでしょうか。企業の社会的責任が問われている時代において、貧困問題にアプローチすることは、社会的信用を得る上で必須になりそうです。様々な先行事例がある中で、自社ならではの強みや特徴を活かした貧困へのアプローチ方法を考えてみてはいかがでしょうか。

5. SDGs目標1 「貧困をなくそう」の事例をもっと調べるには?

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【参照サイト】The World Bank ‘Regional aggregation using 2011 PPP and $1.9/day poverty line’
【参照サイト】The World Bank ‘World Development Indicators: Poverty rates at international poverty lines’
【参照サイト】厚生労働省 「相対的貧困率等に関する調査分析結果について」(2015年)
【参照サイト】OECD 「経済審査報告書」(2017年)
【参照サイト】厚生労働省 「子供の貧困に関する指標の推移」

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