脱炭素化で加速する運送業者が実施するSDGsの取り組みとは?
CO2排出・大気汚染・人手不足・・様々な課題を抱える物流業界ですが、調達・メーカーに関わるどのビジネスにおいても物流業界の存在は近年ますます大きくなっています。BtoCはもちろん、BtoBであっても自社のサステナビリティのスタンスを保つために、サプライチェーンマネジメントの一環としてサステナビリティに意識した物流・運送業者を選択することが重要です。今回は、物流・運送業者のSDGsへの取り組みや選ぶポイントについて解説します。
目次
- 1. ECに移行する消費の場
- 2. 物流業界が直面するSDGsリスク
- 3. SDGsから見る物流業界の取り組み
- 3-1. クリーンエネルギーへの転換(SDGs目標7)
- 3-2. 同業者でトラックを共有する共同輸送(SDGs目標8)
- 3-3. 客貨混載で地域のインフラを確保(SDGs目標9)
- 3-4. 荷物の包装を減らす(SDGs目標12)
- 3-5. トラックの空きスペースを有効活用(SDGs目標13)
- 3-6. 目的地への移動を予定している人が配達係に(SDGs目標13)
- 4. 運送サービス、どう選ぶ?
1. ECに移行する消費の場
新型コロナウイルスの感染拡大により、オンラインで買い物をする消費者が増加傾向にあります。株式会社サイバーエージェントが、緊急事態宣言が解除された2020年6月に実施した調査によれば、自粛期間前と比較して自粛期間中の「総合通販サイト・アプリ」「宅配サービス」「フリマアプリ」での購買が全世代で増加しています。一方、実店舗での買い物は、テイクアウトを除いて減少傾向にあります。緊急事態宣言が解除された後も感染収束の兆しがなかなか見えないことから、実店舗での買い物を控え、引き続きオンラインで買い物をする方が多くなることが予想されます。
2. 物流業界が直面するSDGsリスク
オンラインでの買い物が増えるにつれ、二酸化炭素(CO2)排出量や梱包材などの廃棄物の増加が懸念されます。国土交通省が2020年4月に公表した「運輸部門における二酸化炭素排出量」(2018年度)によると、運輸部門からの排出量は18.5%を占めています。自動車の燃費改善等により運輸部門におけるCO2排出量は減少傾向にあるものの、このうち貨物自動車輸送による排出量は36.6%です。2020年以降、オンラインでの買い物のニーズが増加傾向にあることから、輸送によるCO2排出量がさらに増加することが予想されます。また、オンラインで買い物をした時の包装紙や梱包材は一度しか使われないことがほとんどで、廃棄物の増加に結び付いています。
さらに、物流業界では近年人手不足が深刻化しています。トラック運転手や作業員が十分に確保できないため現場が疲弊し、事業所によっては現状のサービス水準を維持することが困難な状況でした。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大の影響によって経済が停滞し、他業種の余剰人員が物流業界に流入したことで人手不足は一時的に解消された傾向にあります。しかし、これは人手不足の問題が根本的に解決されたとはいえない状況です。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、オンラインで買い物をするニーズが高まるにつれ、物流業界は大気汚染や人手不足など、従来問題視されていたリスクがさらに高まっているといえます。
3. SDGsから見る物流業界の取り組み
では、こういったリスクを含め、物流業界ではどのような取り組みが行われているのでしょうか。本章では事例をご紹介します。
3-1. クリーンエネルギーへの転換(SDGs目標7)
ドイツの大手運送会社DHLは、2025年までに自転車や電気自動車を全体の配達の約7割に用いることで、CO2排出量の削減を目指します。
日本郵船は高出力燃料電池を搭載した商用船の実用化に向け、国内初の実証実験を始めることを2020年9月に発表しました。燃料に水素を活用することで燃料利用時のCO2排出量がゼロになります。船舶用燃料電池の開発に成功すれば、2024年に中型観光船として実験船を就航させる予定です。また、この実験結果を受け、貨物船への導入の可能性も探ります。
参考事例:Deutsche Post DHL Group – committed to the global goals
参考事例:高出力燃料電池搭載船の実用化に向けた実証事業を開始
3-2. 同業者でトラックを共有する共同輸送(SDGs目標8)
日本通運は、商品カテゴリや配達先別に荷物を積み合わせて一括配送する取り組みを行っています。配送を効率化することで、環境負荷の軽減やトラック運転手の人手不足の改善につながります。また、JR貨物と協業した事例では、復路の空コンテナに荷物を積載することで無駄がなくなり、CO2排出量が削減されました。
参考事例:共同配送事例
3-3. 客貨混載で地域のインフラを確保(SDGs目標9)
ヤマトホールディングスは地域の⾃治体やバス会社と協⼒し、乗客と荷物を同時に運ぶ「客貨混載」を進めています。客貨混載によって、過疎化や⾼齢化が進む中⼭間地域におけるバス路線網を維持し、住民の生活基盤が安定します。また、路線バスの空きスペースで宅急便を輸送することで配達のための輸送車を手配する必要がなくなり、CO2排出量の削減が見込めます。
参考事例:ヤマトホールディングスSDGs
3-4. 荷物の包装を減らす(SDGs目標12)
フィンランドのRePack社は再利用可能な包装「RePack」を提供しています。顧客は、荷物が届いた後、空になったRePackを郵便ポストに投函します。RePack社は届いたRePackを清掃し、送り元の企業に再送するしくみです。RePackの原料は古い冷蔵庫などをリサイクルしたポリプロピレンで丈夫なため、20サイクル(40回の郵送)以上使用できます。寿命がくるとRePackは新製品にアップサイクルされるため、ごみとCO2排出量を大きく削減することができます。
フランスとドイツに拠点を置くスタートアップLivingPackets社が開発したのは、郵送用の電子ボックス「THE BOX」。THE BOXには約5㎏までの荷物を入れることができ、スマート機能の電源である電池は1回の充電で1,000回まで使えます。また、住所も電子表示されるため、郵送の際に宛名を書くステッカーも不要です。発送中は、LEDランプを備えたカメラが箱の中の商品を監視しており、荷物の現在位置や温度、湿度、衝撃、密閉状況などをリアルタイムでインターネット上のサイトに映し出します。
参考事例:宅配ごみを減らす。ポストで返せる再利用可能な配送パッケージ
3-5.トラックの空きスペースを有効活用(SDGs目標13)
オーストラリアのSendle社は、他の運送業者のトラックの空きスペースを格安な価格で購入する取り組みを行っています。大量の運搬を依頼する大企業に比べて、少量の運搬を依頼する中小企業は送料の割引率が良くないという現状があります。Sendle社は、格安な価格で購入したトラックの空きスペース部分を、即日配達にこだわらない中小企業向けの運搬スペースに充てることでトラックの空きスペースを無駄にせず、余分なCO2排出量を減らす効果が期待されます。
3-6. 目的地への移動を予定している人が配達係に(SDGs目標13)
ドイツのスタートアップ企業TiMMi Transportは、目的地への移動を予定している人に徒歩、自転車または車によって荷物を運んでもらうP2P(Peer to Peer)のソーシャルデリバリーサービスを展開しています。小売店や消費者は独自に配達を手配する必要がなくなるため、輸送によるCO2排出量を削減することが期待できます。
4. 運送サービス、どう選ぶ?
前章では、物流業界のさまざまな取り組みについてご紹介しましたが、どのように運送サービスを選べば良いのでしょうか。
自社のGHGプロトコルのスコープ3に関わるため、運送サービスを選ぶ際はクリーンエネルギーへの転換など、脱炭素に取り組んでいるかという観点での選定は重要です。しかし、クリーンエネルギーだけに着目するのではなく、梱包材や共同輸送など、物流・運送業者がサステナビリティに対してどのような取り組みを行っているのか、様々な角度から見て検討するべきではないでしょうか。
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