企業や自治体が進める、カーボンニュートラルなまちづくり事例まとめ

企業や自治体が進める、カーボンニュートラルなまちづくり事例まとめ

パリ協定の発効など国際社会の動向を踏まえ、世界は脱炭素に向けて舵を切っています。日本は2020年10月に、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)を目指すことを表明しました。今回は「まちづくり」をキーワードに、カーボンニュートラルを達成するための事例を中心にご紹介します。

目次

1. カーボンニュートラルなまちづくりとは

1-1. カーボンニュートラルとは

「カーボンニュートラル」とは、ライフサイクル全体で見たときに、二酸化炭素(CO2)の排出量と吸収量とがプラスマイナスゼロの状態になることを指します。大きく分けて2つの文脈で使われ、1つはエネルギー分野において、植物由来のバイオマス燃料などに関し、「燃焼するときにCO2を排出するが、植物の成長過程で光合成によりCO2を吸収しているので、実質的にはCO2の排出量はプラスマイナスゼロになる状態」のことです。

もう1つは、社会や企業における生産活動において、「脱炭素化に向けて最大限の努力をしたうえでやむをえず出てしまうCO2排出分を排出権の購入や植樹などによって相殺し、実質的にゼロの状態にすること」の意味合いで用いられます(今回は、後者の文脈で使用します)。

企業や団体などは、一般的に以下のような取り組みを通して、カーボンニュートラルを目指します。

  • CO2排出量の削減
  • 再生可能エネルギーへの切り替え(化石燃料を使わない)
  • 廃棄物の削減
  • 輸送削減のため、より消費地に近い場所での生産をサポートする
  • 輸送の電化
  • 森林再生などのプロジェクトへの資金提供によるカーボンオフセット

1-2. まちの脱炭素化に取り組む必要性

CO2排出量の総量のうち、家庭部門や都市において社会経済活動を行う業務部門(オフィスや商業等)、運輸部門(自動車・鉄道等)からの排出量が全体の約5割を占めています。日本の総人口の94%が都市計画区域に居住し、人口のほとんどが都市に集中しているため、今後も家庭部門におけるCO2は都市で多く排出されることが予想されます。都市が脱炭素化に取り組むことが、日本全体のCO2排出量を削減する上で重要です。

1-3. カーボンニュートラルを目指す都市

前述のように、日本は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにするカーボンニュートラル(脱炭素社会の実現)を目指すことを表明しています。これを受け、「2050年までに二酸化炭素排出実質ゼロ」を表明した自治体は、東京都・京都市・横浜市を始めとする368自治体(40都道府県、214市、6特別区、89町、19村)となりました(2021年4月26日時点)。表明した自治体の総人口は約1億1,011万人にのぼります(都道府県と市区町村の重複を除外して計算)。カーボンニュートラルを目指す都市は今後ますます増えていくことが予想されます。

2. カーボンニュートラルなまちづくりの事例

本章では、カーボンニュートラルなまちづくりの事例をご紹介します。

2-1. 地下鉄の排熱を住宅やオフィスの暖房に活用

イギリス政府は2050年までのカーボンニュートラル必達を掲げ、2025年以降の新築の家へのガスボイラー設置を禁止しています。そこで、ロンドン北部イズリントン地区では、地下鉄から発生する排熱を家庭や企業の暖房として活用する世界初のプロジェクトが進行中です。現在、ロンドンの暖房需要の38%を満たすほどの熱が地下鉄で浪費されていると推定されており、排熱が冬場の代替熱源となることが期待されます。

2-2. 建物のエネルギー効率を可視化してグリーン化を促すプロジェクト

2030年までに40%、2050年までに80%のカーボンニュートラル化を目標とするニューヨーク市。建物のエネルギー効率改善を図るべく、2020年10月から「大型建物のエネルギー効率の可視化」の取り組みを開始しました。25,000平方フィート(約2,300平方メートル)以上の面積を擁する建物を対象に、水とエネルギーの利用・排出や効率性を一定基準に基づき算出したあと、A~Dの4段階で評価し、その等級を建物入り口付近に掲示することを義務付けるもので、実施しない管理会社には罰金が課せられる仕組みです。2024年には、このエネルギー効率化対策は次のフェーズに入る予定で、一定のエネルギー効率改善指標にそぐわない事例に対しても罰金が課せられるようになります。建物の付近を通りかかった人々にも建物の等級が見えるようになっており、建物所有者に等級の改善を促す効果が期待されます。

2-3. 海の力でカーボンニュートラルを目指す横浜ブルーカーボン

SDGs未来都市としてさまざまな気候変動対策に取り組む神奈川県横浜市。海に生息する海草・海藻類によって吸収・固定される炭素「ブルーカーボン」と、海洋でのエネルギー利活用によるCO2の削減効果にあたる「ブルーリソース」を活用した独自のカーボン・オフセット認証取引制度、「横浜ブルーカーボン」事業を運営しています。ブルーカーボンを活用したカーボン・オフセット認証取引制度としては、世界でも唯一となる取り組みです。

3. 都市のカーボンニュートラル化のためのポイント

都市のカーボンニュートラル化に向けて意識したいポイントについてまとめました。

3-1. 協力・連携のための情報公開・発信

各自治体がカーボンニュートラル化へのプロジェクトを効果的に進めるためには、他の自治体や企業、NPO、住民を巻き込みながらカーボンニュートラルへのロードマップを策定し、各セクターが具体的なアクションプランを実行していくことが求められます。横浜ブルーカーボンの事例においては、プロジェクトの目的や地域の課題、進捗状況に関する積極的な情報公開・発信がなされており、一般市民を含めたあらゆる個人・団体が参加しやすい形となっています。

3-2. トレードオフへの理解を得るための説明責任・透明性

たとえカーボンニュートラル化を推進する取り組みであっても、その地域に弊害をもたらす場合もあるため、リスクも含めた住民による理解が不可欠です。ニューヨークのエネルギー効率可視化の取り組みのように評価を伴うケースは、不適切な評価を受けると評価される側の風評被害となる可能性があります。また、再生可能エネルギーの導入を進めた地域において、景観悪化や騒音等のトラブル、災害リスクといった懸念への十分な説明がなされず、地域での合意形成の不足によって導入が見送られた事例もあります。

したがって、必要な情報を住民に開示し、透明性を確保すること、環境への影響や経済効果を検証した上で住民に取り組みの必要性を説明し、納得してもらうことが必要です。

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