広がるヴィーガン市場。世界の事例と企業がヴィーガン対応を始めるヒントを解説
「特殊な思想を持つ人」として考えられてきたヴィーガンですが、アカデミー賞の食事で100%ヴィーガン料理が採用されたり、日本でも少しずつ有名ラーメン店やカフェのメニューにヴィーガン料理を目にする機会が増えたりしています。
ヴィーガン対応の波は食に留まらず、ファッションや金融商品の中にも取り込まれ始めています。今回は、そんな世界の事例や、ヴィーガン対応を進めるためのヒントをご紹介します。
目次
1.ヴィーガンとは?
ヴィーガンは「生活全体から動物由来のものを排除しよう」という「完全菜食主義」(ヴィーガニズム)の考え方と、その実践者のこと。肉や魚を食べないだけでなく、動物由来である卵、牛乳や乳製品、はちみつも口にしません。
どの程度厳格にヴィーガンを実践するかは人によって異なり、いくつか分派があります。代表的な分派の一つは、動物由来のものを食生活から排除するだけにとどまる「ダイエタリー・ヴィーガニズム」。もう一つの代表的な分派である、生活すべてから動物由来のものを排除する「エシカル・ヴィーガニズム」は、革製品やウールの服などを身につけず、動物実験をもとに生産された化粧品や薬品も使いません。一方、週1日など、自主的に頻度を決めてヴィーガンの食事を実践する「パートタイム・ヴィーガン」の実践者もいます。
2.ヴィーガンになる動機・種類
人々がヴィーガンになる理由は主に以下の3つです。
- 健康上の理由:動物性食品を食べないことでやせたい、健康的な生活を送りたい、といった目的でヴィーガンになる人が多いです。ただし人により体質に合う・合わないがあり、栄養学的な知識がないと体調不良になる人もいるので注意が必要です。
- 環境問題の対策:畜産の過程では、多くの温室効果ガスを排出します。また、魚の獲りすぎの影響も心配されており、「それなら植物由来の食べ物だけにしよう」とヴィーガンを選ぶ人も。
- 動物保護のため:動物愛護、動物の権利保護といった理由からの選択です。「ファクトリーファーミング」と呼ばれる集約型畜産に反対する立場や、「殺生はしない」という宗教的な理由からヴィーガンになる人もいます。
3.世界のヴィーガン
現在、欧米を中心にヴィーガンになることを選ぶ人が増えています。アメリカでは2014年には400万人のヴィーガン人口が、2017年には1960万人近くに上昇していると推定されています。ドイツでもヴィーガンが多く、特にベルリンでは約300万人の人口のうち約8万人がヴィーガンだと言われています(2017年の発表)。ヴィーガン向けレストランも多く、「ヴィーガンの首都」として世界的に有名です。
2020年2月にはアカデミー賞授賞式でふるまわれた食事が100%ヴィーガン料理であったことも話題になりました。HappyCow という13万店舗を超える世界中のベジタリアン・ヴィーガン向けのレストランを教えてくれるアプリ(英語)も開発され、人気を呼んでいます(2020年10月現在)。
4.ヴィーガン対応を実践する業界の事例
ここでは、ヴィーガン対応を進める様々な業界のユニークなアイデアを3つご紹介します。
4-1.リンゴでできたレザー財布
エシカル消費の波に乗って、動物性の皮革を使わない合皮(フェイクレザー)が増え始めています。一方で、フェイクレザーには塩化ビニール(PVC)やポリウレタン(PU)といったプラスチックの材料で作られている商品も多く、その環境負荷も無視できません。
そこでカナダのファッションブランドが、大量に廃棄されるリンゴの皮に着目して商品の開発を進めました。さらに収益の一部は、東アフリカの電気がない場所に住む子供たちのための、ソーラーパネル式ライトがついたバックパックの寄贈に使われます。
4-2.ヴィーガンのための上場投資信託
ニューヨーク証券取引所では、ヴィーガンと気候変動対策のためのETF(上場投資信託)が誕生しています。2019年9月に米国証券取引委員会に登録され、2020年1月から投資受付を開始しました。
すでにESG(環境・社会・ガバナンス)に考慮したファンドが数多く上場していますが、他に類を見ない動物保護・クルエルティフリーに特化した投資商品として注目を集めています。
4-3.ヴィーガンのホテル
Hilton London Banksideにヴィーガンなスイートルームが誕生しています。ヴィーガンフードの提供だけでなく、室内の備品にはフェイクレザーやオーガニックコットンといった動物性のものを全く使わない工夫や、環境負荷をかけない清掃などヴィーガンな暮らしを実践するアイデアが凝縮されています。
5.事例から考える「ヴィーガン」
いかがでしたでしょうか。食べ物だけでなく、ヴィーガンを巡るさまざまな業界の対応をご紹介しました。一方で、ヴィーガン対応を進めるうえでの問題点も多くあります。ヴィーガンファッションの例に挙げられるように、合皮にすることで商品の劣化を早めてしまったり、環境負荷の高い代替素材を採用してしまうと本末転倒になりかねません。他にも、代替素材を輸送するカーボンフットプリントも考慮する必要があります。トレードオフになる問題点を透明化したうえで、何が最適なのかを専門組織や他業界の視点から考えることが重要です。
特にサステナビリティへの事業変革においては、理念と行動のズレはエンドユーザーを遠ざけてしまうことにつながります。ヴィーガン対応はエンドユーザーの信条に関わることなので、裏切ることのないようサプライチェーンの見直しや社員の意識変革なども徹底したいところです。
6.さらにヴィーガン対応の事例を調べるために
本サイトを運営するIDEAS FOR GOOD Business Design Labでは、「Make Sustainability Desirable.(サステナビリティに、ワクワクを。)」をコンセプトに、会員の方向けに(登録無料)SDGs・サステナビリティ・CSV・サーキュラーエコノミー関連プロジェクトの企画立案・立上・運営までをサポートしております。IDEAS FOR GOODならではの豊富な国内外の事例を活用し、御社の強みを生かした事業づくりについて考えてみませんか?IDEAS FOR GOODチームとの共創プロジェクトも可能ですので、ぜひお気軽にお問い合わせください。
【参照サイト】ヴィーガンとは・意味
【参照サイト】ヴィーガンファッションとは・意味
※本記事の執筆にあたり、Business Design Labが提供する国内外の事例検索機能IDEAS Explorer(会員登録後閲覧可能)を使用しています。
Leave your comment