脱プラ時代にどう向き合う?サントリーに聞く、ペットボトルのサステナブルな未来

脱プラ時代にどう向き合う?サントリーに聞く、ペットボトルのサステナブルな未来

プラ新法の制定により関心が集まる、プラスチック容器・包装の扱い。気候変動や海洋プラ問題から「脱プラスチック」への動きが加速するなか、プラスチックを扱う事業者はどのように消費者とコミュニケーションを進めているのでしょうか。

2021年4月には、一般社団法人全国清涼飲料水連合会(以下全清飲)は、2030年までにペットボトルの水平リサイクルである「ボトルtoボトル※1」の比率を50%にする目標を発表しました。

※1…ペットボトルをペットボトルにリサイクルするシステムのこと

それから8ヶ月後の2021年12月、サントリーグループが、植物由来原料100%のペットボトルの試作品が完成したことを発表。そこで今回は、サステナブルボトルの開発の背景や消費者とのコミュニケーション、そしてその課題について、サステナビリティ推進担当の佐藤慶一さんにお話を伺いました。

話者プロフィール

サントリー食品インターナショナル 戦略企画本部 佐藤慶一氏
佐藤 慶一(さとう のりかず)氏
サントリー食品インターナショナル(株) 戦略企画本部
2005年入社。営業・人事部門などを経て、2019年よりサントリー食品インターナショナル(株)にて、ペットボトルの100%サステナブル化を担当。

きっかけは2011年。植物由来原料100%ペットボトルが生まれた背景

Q.植物由来原料100%ペットボトル開発の経緯を教えてください。

植物由来のペットボトルが注目されるようになったのは最近のことですが、実は私たちの植物由来ペットボトル開発のきっかけは10年以上前にさかのぼります。2011年、今回のペットボトルを共同開発したアネロテック社の講演がニューヨークで行われました。その講演を聞いた弊社社員が“何かヒントを得られないか”とすぐに連絡をとったのが第一歩でした。

植物由来原料100%ペットボトルの開発に成功

当時、弊社では既に植物由来30%のペットボトルを開発し、2013年から「サントリー天然水」に導入していたので、残りの70%をどのように植物原料にしていくかの研究をアネロテック社とともに進めてきました。2019年末には技術の実証に成功し、昨年に試作品が完成してようやく発表できた、という経緯です。まだ試作品の段階ですが、2030年までに実用化を目指しています。

Q.開発を始めてから約10年。環境問題に対する政府の対応や人々の意識の変化をどう捉え、どのようにコミュニケーションを取ってきたのでしょうか。

環境問題への関心や対応へのニーズが高まる前から“環境負荷の低いペットボトルや容器をつくっていきたい”という思いで先んじて取り組みを進めていますが、特に若い世代を中心に、環境問題への意識がさらに高まってきているということを感じています。

そうした方々に私たちの取り組みや課題について知ってもらうには、広告によるコミュニケーションだけでなく、草の根的な啓発活動を通じて目線を合わせることが有効だと考えています。昨年には、早稲田大学と協定を結んで学生向けに水平リサイクルの認知向上、分別行動の誘発に向けてどんな施策が考えられるかについてワークショップを実施しました。今後も、これからの社会を担っていく世代の価値観に合わせて地道な取り組みを進めていくことが大切だと考えています。

Q.植物由来で生産する新しい技術ということで、コストの面が気になります。

サプライチェーン全体を見ないとコストの計算ができないというのが正直なところです。効率的につくることができれば当然コストは下がりますし、環境負荷もより小さくなると考えています。ただ、事業そのものの持続可能性を確保するため、最適な生産の場所や規模について引き続き模索しています。

また、今回の試作品では、ウッドチップを原料として使用しましたが、今後も、豊かな森林づくりに際して間引かれる間伐材の活用を検討していきたいと考えています。

ボトルは資源。消費者とともに循環を進める

Q.ペットボトルをはじめ、プラスチックに対しては“そもそも使わないようにするべき”といった声も聞かれます。そのような中で佐藤さんがペットボトルのサステナブル化に取り組む想いを聞かせてください。

まずお伝えしたいのは、“ペットボトルは資源”と考えているということです。埋め立てられたり、海へ流出したりしている現状もあり、ペットボトルが悪のように見られてしまう側面もあると思います。一方で、使いやすく衛生的であるというペットボトルの利点は否定されるものではありません。

ペットボトルの飲み残し、付いたままのラベル、キャップが締まったままのペットボトルを適切に処理し、分別することでまたペットボトルにリサイクルができるのであれば、“ペットボトルは悪ではなく資源である”と私たちは考えています。ペットボトルを資源にするためによりよいリサイクルの方法は何かという点についてしっかり検討していきたいと思っています。

具体的には、リサイクルを促すコミュニケーションの方法として「ボトルは資源」というロゴの使用を開始しました。ふとした瞬間にお客様にご覧いただけることで、より多くのボトルがリサイクルされることを期待しています。一方で、「ボトルは資源」と伝える以上は、より良いリサイクルの方法や生産方法を模索しつづけるという姿勢を崩すわけにはいかないと考えています。

「ボトルは資源!サステナブルボトルへ」の新ロゴマーク
国内ペットボトル全商品へ順次展開する、「ボトルは資源」を訴えるロゴ

時代や地域によって変化する課題やニーズ。絶えず努力を続ける

Q.日本におけるボトルtoボトルによるリサイクルの割合はまだ少ないのが現実です。この現実があまり知られていないなかで、サントリーはどこを目指していくのでしょうか?

ボトルtoボトルのリサイクルには技術的な課題があり、これまでなかなか実用が進んできませんでした。ただ、2018年に発表した、リサイクルにかかるCO2排出量を削減できるFtoPダイレクトリサイクル技術のように、従来の仕組みよりも環境負荷を抑えた形でボトルtoボトルのリサイクルが可能になってきており、企業の壁を超えた連携を通じてペットボトルの水平リサイクルを実現していきたいと考えています。

全清飲での水平リサイクル率目標は2030年に50%を目指しており、「ボトルtoボトルがなぜ大切なのか」「分別することがどれほど重要なのか、なぜ分別する必要があるのか」を理解してもらえるよう地道にコミュニケーションを続けていきます。

また、ボトル資源の循環促進と並行して、植物由来原料を使用したペットボトルの導入を早く実現したいと考えています。サントリーは、2030年に世界中で販売するペットボトル全てを、リサイクル素材もしくは植物由来の素材でつくることを目標としています。2030年は通過点ですが、その時代や地域の課題、そしてニーズに対して真摯に向き合い、絶えず努力を続けていきたいと考えています。

編集後記

今回最も印象に残ったのは「ペットボトルは悪ではなく資源」という言葉でした。近年の環境問題への意識の高まりから、ペットボトルを含むプラスチック資源の利用そのものを減らそうという動きが出ています。そのような中、サントリーでは「資源循環の促進」と「植物由来原料の導入」という二つの取り組みを進め、その理解を得るための活動として学生に対する啓発活動やロゴの変更によるコミュニケーションなどを行っていることが分かりました。今後のサントリーの取り組みと、世の中の環境意識の変化にも注目していきたいところです。

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