自社商品をサーキュラーエコノミーで長寿命化させる!その意義と事例をご紹介

自社商品をサーキュラーエコノミーで長寿命化させる!その意義と事例をご紹介

近年、消費者向けのサービスはインターネット上で多様な形態で展開されてきています。シェアリングサービスのように「欲しいモノ」が消費者の手に届きやすくなっている現状がありますが、このような構造の変化をサーキュラーエコノミーの視点から捉えることで、環境負荷やコストの削減などさまざまなメリットが期待できます。

今回は、生活雑貨の分野でサーキュラーエコノミーを取り入れる意義と、モノをより長く使うために工夫を凝らし、環境負荷を削減しながら新たなビジネスチャンスを見出している事例をご紹介します。

目次

1. サーキュラーエコノミーが必要な理由

「地球やわたしたちの体にやさしいものを選びたい」「働く人々の権利が守られる商品を選びたい」といった志向が見られ、環境・社会的配慮をした製品やサービスに対する消費者のニーズは高まっています。消費者庁の2019年の調査によると、「環境に配慮した商品やサービスを選択する」について「心掛けている」と回答した人の割合は56.9%(「心掛けていない」は12.4%)と、2013年調査の45.5%(「心掛けていない」は19.7%)と比較しても消費者の環境配慮への意識が高まっていることが読み取れます。

世界的には脱プラスチックの動きが目立ちますが、資源をいかに無駄にせず、有効活用していくかという議論が進んでいます。ここではその議論の中でキーワードになっている「サーキュラーエコノミー」やエコな消費のトレンド・アイデアについて解説し、「なぜ必要なのか」を説明していきます。

1-1. そもそもサーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーとは

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、従来の「Take(資源を採掘して)」「Make(作って)」「Waste(捨てる)」というリニア(直線)型経済システムのなかで活用されることなく「廃棄」されていた製品や原材料などを新たな「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく資源を循環させる経済の仕組みのことを指します。

環境負荷と経済成長をデカップリング(分離)させ、持続可能な成長を実現するための新たな経済モデルとして世界中で注目を集めており、EU(欧州連合)では2015年12月に「サーキュラーエコノミーパッケージ」が採択されるなど、経済成長政策の中心に据えられています。

3Rとはどう違う?サーキュラーエコノミーの概念図

2050年までに100%サーキュラーエコノミーを実現するという目標を掲げているオランダ政府は、下記の図を用いてサーキュラーエコノミーの概念を説明しています。

サーキュラーエコノミーを「Linear Econony(直線型経済)」だけではなく、リサイクルを中心とする「Reuse Economy(リユース経済)」とも明確に区別しています。

オランダ政府 From a linear to a circular economyより引用
サーキュラーエコノミーの3原則と、重要なポイント

国際的なサーキュラーエコノミー推進機関であるエレンマッカーサー財団は、サーキュラーエコノミーの3原則として、下記を挙げています。

  1. 自然のシステムを再生(Regenerate natural systems)
    有限な資源ストックを制御し、再生可能な資源フローの中で収支を合わせることにより、自然資本を保存・増加させる。
  2. 製品と原材料を捨てずに使い続ける(Keep products and materials in use)
    技術面、生物面の両方において製品や部品、素材を常に最大限に利用可能な範囲で循環させることで資源からの生産を最適化する。
  3. ゴミ・汚染を出さない設計(Design out waste and pollution)
    負の外部性を明らかにし、排除する設計にすることによってシステムの効率性を高める。

これらの原則に基づくと、できる限りバージン素材(新品の素材)の利用を避け、回収後のリユースやリサイクルがしやすいよう解体を前提としたモジュールデザインを導入し、修理や部品交換などを通じて製品寿命をできるだけ長くすることがポイントとなります。特に使い捨てされやすいような商品においては、このポイントが重要になってきます。

1-2. 今こそサーキュラーエコノミーをビジネスに取り入れるべき理由

サーキュラーエコノミーをビジネスに取り入れるべき理由はさまざまですが、最も重要なポイントは現在のリニアエコノミー(直線型経済)がもはや持続可能な経済の形ではないということです。人口が増加し、一人あたりの所得平均も上昇していくことが推計されており、当然ながらこのままでは資源の利用量も生活を維持するために増加していくと考えられます。

資源の利用が増える一方、供給できる資源の量にも限りがあります。存在する資源をいかに有効利用するか、廃棄物を出すのではなくいかに循環させるかを考えることは、今後ビジネスを存続できるかどうかを左右すると言っても過言ではありません。これまでの大量生産・大量消費型の経済は気候変動や海洋汚染、自然環境の破壊といった負の外部性をもたらしてきており、これがビジネスにとっての大きなリスクとなるのです。

 

地球を守るため、投資家や顧客のニーズが高まっているために取り組むのではなく、事業を行った先にある持続可能な豊かさを実現するために、事業に必要な資源を循環させていく必要があるという認識が重要です。サーキュラーエコノミーをビジネスに取り入れることが地球環境問題の「自分ゴト」化でもあり「みんなゴト」化でもあるのです。このような内発的な動機付けが、サーキュラーエコノミーを目指すビジョンと実際のビジネスモデルを一致させるためのポイントとなります。

1-3. チェックしておくべきキーワードとその意義

サーキュラーエコノミーが求められる理由が分かった上で、関連するキーワードを確認しておきましょう。背景にある問題や、自社のビジネスに与えるポジティブな影響を十分に理解しておくことで、長期的に自社のみならず地球社会に恩恵をもたらす可能性がグッと高まります。

プラスチックフリー

プラスチックフリー(Plastic Free)は、プラスチックを使用しないことを意味し、「脱プラスチック」や「ノープラ」などと表記されることもあります。近年その必要性が高まっている背景にはプラスチックによる海洋汚染問題がありますが、忘れてはいけないのは石油由来原料から製造されたプラスチックが大量に使い捨てされているということです。さらにUNEPによると日本の国民一人あたりのプラスチック包装のゴミ排出量は世界第2位となっており、日本はプラスチックの過剰利用国であることがわかります。このような事実にもとづき、プラスチックの使用そのものを減らす「リデュース(Reduce)」やプラスチック包装を使わない形で商品を循環させる「サーキュラーエコノミー」の動きが高まっているのです。

シェアリングエコノミー

シェアリングエコノミー(Sharing Economy)とは、個人が所有する遊休資産(使われていない資産)を、主にインターネット上のプラットフォームを通じて貸し借りする仕組みのことです。配車サービスのUberや宿泊施設の貸し出しサービスであるAirbnbなどがその先駆けとして知られています。また、高額なバッグやカメラなどのシェアリングサービスも普及しており、利用者はそれらを購入することなく低価格で利用でき、提供者は貸し出すことで収入が得られるというメリットがあります。

「使っていないモノをシェアする」ことは廃棄物を削減できるだけでなく、安いモノを使い捨てするというスタイルから、品質が高く良いモノを長く使い続けるスタイルへの移行を促し、消費者の選択の幅を広げることにもつながります。ただし、シェアリング型サービスの全てをサーキュラーエコノミーのサービスとして定義できるわけではない点には注意が必要で、サービスにおいて交換される製品は持続可能な原材料に基づいて循環可能な形で作られている必要があります。

アップサイクル

アップサイクル(Upcycling)とは本来捨てられるはずの廃棄物にデザインやアイデアといった新たな付加価値を持たせることで、別の新しい製品に生まれ変わらせることです。リサイクルと比較すべきポイントは環境への負荷です。廃棄物をいったん原料に戻す際にエネルギーを必要とするリサイクルと比べ、アップサイクルは廃棄された物の素材や形を活かして再生するためそのようなエネルギーが必要ありません。

また、単純な再利用であるリユースと比較し、異なる用途のために加工を施すことで製品寿命を延ばすことができるというメリットがあります。廃材を活用した家具や、自動車部品を活用した衣服・バッグがアップサイクルで商品化されているほか、さまざまな業界で可能性が期待されています。

2. 生活雑貨のサーキュラーエコノミーを実現するアイデア5選

ここからは、生活雑貨の分野で商品を捨てることなく長寿命化させている、サーキュラーエコノミーを取り入れたビジネスモデルをご紹介します。

2-1. 成長したら次の子どもに引き継げる子ども服プラットフォーム

子供の年齢や好みに合わせてオーガニックコットンの服や帽子、タオルなどのセットを販売し、子供が成長して着られなくなった服を返却すると、次の服を購入する際に割引が受けられる仕組みです。返却された古着は同じプラットフォーム内でまた販売され循環していきます。「子供の成長によって何度も買い換えなければならない」という子供服特有のニーズと「ムダ」に着目しているのがポイントです。

2-2. ブランドタグの付け替えでファッションの廃棄削減

アパレルメーカーから余剰在庫を買い取り、ブランドタグや洗濯表示タグの付け替え加工をし、「Rename」という新たなブランド名で再販するビジネスモデルです。タグの付け替えにより、元のブランドを毀損する心配なく売り切ることが可能となっています。

2-3. お金を介さず、バッグを交換できるマッチングサービス

FREITAGは、同社製品で不要になったバッグをユーザー同士で交換できるプラットフォーム「S.W.A.P」を展開しています。あえてお金を介さずに、同じように愛着を持って使われたバッグに出会い、また長く使ってもらうサービスです。

2-4. 電気機器を自分で修理!モノを長持ちさせるワークショップ

参加者自身が壊れた電気機器を修理するワークショップ「リペアラボ」。無料で貸し出される場所と工具を使って、熟練エンジニアのアドバイスを受けながら、参加者自身が修理することで、自分で解決する力とモノを大切にする心を養います。

これまでご紹介したシェアリングやアップサイクルとは異なるユニークな事例ですが、製品を修理して長く使い続ける「リペアリング」もサーキュラーエコノミーの重要な要素の一つです。

2-5. ネットショッピングでも容器を回収し、リユース促進

米テラサイクル社が立ち上げた、世界初となる循環型のショッピングプラットフォームです。これまで使い捨てにされていた一般消費財や食品の容器に着目し、繰り返し利用可能な耐久性の高い素材に替えました。商品配送後は購入者の自宅から容器だけを回収し、洗浄、補充した上でリユースします。これにより、従来直線型だった購入、消費、処分という流れを循環型へと移行しています。

3. 自社商品を活かす、サーキュラーエコノミーのポイント

3-1. ターゲット特有のニーズと「ムダ」に着目

買い替えの頻度が高い商品のような、ユーザー目線での「ムダ」に着眼してみましょう。新たな収益が期待できるだけでなく、中古品を扱うことで全体の調達・製造コスト削減につながる可能性があります。

また、シェアリングサービスにおいては、高額な製品を利用したいというニーズに応えることができるため、ユーザー層の拡大を狙えるという意味で大きなメリットがあります。導入に際しては、自社商品の特性やニーズを分析し、シェアリングサービスに適しているかを見極めることが大切です。

3-2. 価値を「ブランド」から「商品そのもの」へ

売れ残ってしまった商品に新たなタグを付けて再販売するビジネスモデルを紹介しました。売れ残った商品をそのままの形で再販売するという方法もありますが、ブランドという看板を外して販売することでユーザーは商品そのものの品質やデザインを基準として選択しやすくなります。したがって、ブランド毀損を憂慮する必要がなく比較的自由な価格設定が可能となり、在庫消化率の上昇が期待できます。

さらに、メーカーや小売業者が再販売のためにこのようなプラットフォームに売れ残り在庫を提供することで、むしろ「商品をムダにしないブランド」というポジティブなブランドイメージ構築も期待できます。

3-3. ユーザー同士の「交換」で、リユース商品への「愛着」を育む

近年さまざまな形態で広がりを見せているシェアリングサービスですが、消費者どうしがつながるフリマアプリのような形態では「写真での見た目」と「価格」に価値が左右されがちです。サービスにおける料金設定やユーザー同士のつながりの設計を工夫することでより一層シェアリングの利点を活かすことができます。

今回紹介した「S.W.A.P」のように製品そのものの品質だけでなく「誰かが愛着を持って使ってきた」ということに価値を見出し、これを起点につながりを生み出すことでその製品の「健康寿命」を延長させ、より少ない資源で多くの循環を生み出すことが可能となります。

3-4. 「自分で直して使い続ける」心と技術を育てる

市場では次々と高性能の新製品が生まれる一方、買い替えを促す直線型経済が浸透したこの社会ではまだまだ「製品寿命の延長による環境負荷の削減」には十分に目が向けられていない状態です。

一度買った製品を自分でメンテナンスしながら長く使い続ける技術は、資源の削減やリサイクルコストの削減といった点で環境負荷の削減に貢献できますが、先端技術にとらわれず「長く使えるものづくり」をすることで差別化を図ることもできます。

3-5. 「サービス全体の環境負荷」を考えたプラットフォームを構築する

店舗に足を運ばずとも欲しい商品が手に入るのが大きな強みであるネットショッピングですが、環境負荷の側面では課題が山積しています。ネットショッピングのサービスを構築していく中で、資源の循環だけではなく配送時の環境負荷への配慮も必要です。

商品の配送を業者に委託して終わりではなく、発送スケジュールの工夫や店舗を活用した独自の物流拠点の構築、受取方法の変更などの余地があります。これまで当たり前とされてきた「業者が家に届ける」という形を考え直すことで、サービス全体の環境負荷とコストの削減が期待できます。

4. アイデアを事業に取り入れるためのBDLのワークショップとは?

いかがでしたでしょうか。製品のリサイクルに留まらず、アップサイクル、シェアリング、リペア(修理)、リユースなど、すでにある製品を活かす形でサーキュラーエコノミーを実践していく方法はアイデア次第でまだまだ発見できそうです。さまざまな先行事例がある中で、自社ならではの強みを活かしたビジネスモデルを考えてみませんか?

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【参照サイト】サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは・意味

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