SDGsウォッシュをどう防ぐ?気をつけたいワードや参考事例を紹介

SDGsウォッシュをどう防ぐ?気をつけたいワードや参考事例を紹介

気候変動や海洋プラスチックの問題が深刻化するなか、近年は「サステナブル」や「SDGs」など、環境や社会に配慮していることを示す表記を見かけることが増えてきました。さまざまな企業がブランドイメージを向上させたいと思ってそれらのワードを使うなか、それが逆に「SDGsウォッシュ」だとして批判を受けたり、企業の評価を下げたりと、不本意な結果を招くことがあります。

2021年4月、米美容誌アルーアがサステナビリティに関連するいくつかの表現を廃止し、「環境に対してごまかさず真剣に向き合う」と宣言。国内では、電通が「SDGsウォッシュ」を避けるためのヒントを載せたコミュニケーションガイドを発行するなど、さまざまな企業がついやってしまいがちな「ウォッシュ」表現に光を当てた取り組みも少しずつ増えています。

知らず知らずのうちにマイナスとなる広報・宣伝をしてしまうのではなく、誠実で正直な企業コミュニケーションをしたい。本記事では、そんな方のためのヒントをご紹介します。

目次

1. SDGsウォッシュとは?

SDGsウォッシュ(SDGsウォッシング)とは、国連が定める17の持続可能な開発目標(SDGs)に取り組んでいるように見えて、実態が伴っていないビジネスのことを揶揄する言葉。実際はそうでないにも関わらず、広告などで環境に良いように思いこませる「グリーンウォッシュ」が元になっています。これらは、消費者に誤解を与えることから、問題視されています。

たとえば、事業の内容に直接関係のない「グリーンなイメージ(自然の写真や、緑色の包装など)」を使う石油企業や、衣服の製造過程で通常よりも多くのCO2を出すにも関わらず、「天然」または「リサイクル素材」でつくられている、と良い面だけをアピールするファッションブランド。

そして、海洋生物を守っているとアピールしながら、自社の東南アジア支社にいる従業員には低賃金で強制労働をさせるグローバル企業などが当てはまります。これらはすべて、上辺だけのアピールだと見られ、逆に企業のブランドイメージに傷をつけてしまうことになります。

ウォッシュ

近年、企業の多くは自社のCSR(社会的責任)活動を報告する「CSR・サステナビリティレポート」または「統合報告書(アニュアルレポート)」を発行していますが、近年はSDGsと関連づけた報告も増えています。既に行ってきた事業に17の目標のアイコンをつけて「私たちはSDGsに取り組んでいます」とアピールする企業も多く見られます。

世界中で1400を超える企業を調査した、英リサーチ&カンファレンス大手Ethical Corporationのレポートによると、企業の回答者のうち3分の2以上が、自社がSDGsを事業戦略に入れていると発表しています。しかし、明確な目標を設定し、SDGsが部署のなかでしっかりとビジネスに落とし込まれているのはわずか12%でした。

2. 誤解されやすいSDGsワード5選

企業がブランドイメージを向上させたいという理由で、実情が伴っていない“強み”をアピールした結果、NGOなどから「これはウォッシュだ」と批判されることがよくあります。ここでは、正しく根拠を持って説明しなければ誤解を与えかねない言葉を見ていきます。

2-1. エコ・サステナブル・エシカル

2009年、ヨーロッパのマクドナルドは赤と黄色のおなじみのロゴを少しでもエコ・フレンドリーに見えるようにと「緑と黄色」に変更しましたが、実態が伴ってないとして批判を受けました。

アパレルブランドでは「地球のために行動しよう」といったメッセージが書かれたエコバッグを販売していることがあります。しかし、それだけではバッグの素材がポリ袋と比べて環境負荷がどの程度抑えられるものなのか、何回以上の使用でポリ袋より環境負荷が減らせるのか、といった地球にやさしいエコバック使用の条件が不明瞭なままです。そのブランドがサステナブルな方向で売り出す、という意識がバッグに表れてはいますが、具体的に何が環境に良いのか分からないままに商品を販売するのであれば、消費者の誤解を招くことになります。

環境を再生する仕組みが設計された製品でなければ、どんな製品であっても何らかの環境負荷を生み出していると考えられます。この言葉を使うのであれば、何を根拠にどの程度エコなのかを明確に説明することが大切です。

2-2. 生分解性プラスチック

今、世界で脱プラスチックに向けた動きが加速しています。丈夫で軽く、透明で安価なプラスチックの利点は大きく、製品によっては代替素材が見つからないという課題もあります。そんな中で注目を集めるのが、生分解性プラスチック。生分解性プラスチックは植物由来の原料から製造されているため、使用後は自然に還すことのできる素材だと一般的には考えられています。

しかし、市場に流通している生分解性プラスチックのすべてがそのような素材ではありません。「生分解性プラスチック」を定義する明確な基準値が存在せず、実際に生分解性プラスチックと呼ばれていても、海中では分解されなかったり、埋め立て材となってから分解に100年近くの時間を要したりと、素材によって分解される条件はさまざまなのが現状です。必ずしも「生分解性プラスチックだから環境に優しい」わけではないため、表現には注意が必要です。

2-3. リサイクル素材・循環型素材

リサイクルプラスチックからできた服や容器の素材の説明は、適切にされているでしょうか。リサイクルプラスチックを使うことで、新品原料の使用を減らすことができますが、別の問題が発生することにも注意が必要です。

プラスチックでできた服は、洗濯するたびに微量のプラスチックが流れ、海に流れ着いたマイクロプラスチック全体の約35%を占めます。リサイクルプラスチックを使用して服を作っても、同様にマイクロプラスチックとして海に流れていってしまう可能性があるのです。

リサイクルプラスチックを使用した容器も、耐久性の補強のため新品の素材を含めることもあります。このような、リサイクル素材を使うことによるトレードオフも考慮して顧客に伝える必要があります。

2-4. ダイバーシティ

さまざまな企業が、多様性・ダイバーシティを掲げるようになっていますが、方針に基づいて実際に行動を起こしているでしょうか。役員の男女比はどうか、さまざまな背景を持つ人が本当に働きやすい環境であるか、従業員は、見た目の多様性だけでなく、中身の多様性もあるか、性的マイノリティの人々が困っているときに、すぐに行動できたか。

NIMBYという言葉があります。”Not In My Back Yard”(うちの裏庭にはやめてくれ)と訳され、主に“環境公害を起こすような施設が必要なのはわかるが、近所には置かないでほしい”といった主張のことを指すものです。それは多様性にも言えることで、企業が必要性を主張するものの、実際リーダー層が一定年齢以上の同じような考えを持った男性だけ、ということはよくある事例ではないでしょうか。

2-5. SDGs

SDGs(持続可能な開発目標)が世間に浸透してきた今、自社の製品とSDGsを結びつけ、会社のホームページ上に公表する企業が増えています。これまで提供してきた製品やサービスを、チェックリストのようにSDGsのゴールに結びつけるのみに留まらず、どれだけの人に、どのようなインパクトをもたらしているのかを定性的・定量的に明記する必要があります。

ここで注意したいのが、SDGsのうち1つのゴールに該当しても、他のゴールの観点からはその取り組みが適切ではない可能性があるということ。たとえば、安全な水へのアクセスがない地域に水処理施設を作ったとしても、そのために森林を多く伐採したのではSDGsのゴール15「陸の豊かさも守ろう」を蔑ろにしてしまうことになります。現地の人々の生活を改善することだけを考えるのではなく、どうすれば地球環境も守りながら現地の人々の生活を改善できるか、多角的な視点を持って考えることが重要です。

3. SDGsウォッシュはなぜ起こる?

企業によるSDGsウォッシュが起こる背景には、たとえばこのようなものがあります。

  • 単純にSDGsへの理解が浅い(多様性や環境など、一面だけを捉えている)
  • 企業として、短期的な影響にばかり注目している
  • 自社の事業とSDGsを上手く結びつけられない
  • 経営層からの指示で、企業をサステナブルだと見せなくてはいけない
  • 会社内での理解がなく、SDGsに取り組めていない

その結果、取り組みが少し弱いとわかっていながらも「良さそうに聞こえる」抽象的な表現を使ってしまったり、自社の事業を無理矢理SDGsの17の目標に結びつけたりして、ウォッシュとなってしまうのです。

4. 企業がSDGsウォッシュに陥らないための対策

では、自社のビジネスがSDGsウォッシュにならないためにはどうするべきなのでしょうか。電通が発行する「SDGsコミュニケーションガイド」では、SDGsウォッシュを避けるための4つのポイントが書かれています。

  • 根拠がない、情報源が不明な情報を避ける
    ・根拠となる情報の信頼性が希薄な場合、あるいは検証材料がない場合
  • 事実よりも誇張した表現を避ける
    ・それほどでもないSDGsへの取り組みを大きく強調して訴求したり、小さな取り組みを大げさに取り上げたりするケース
    ・法律で規制されている事項を、自主的に配慮しているように表現するケース
  • 言葉の意味が規定しにくいあいまいな表現を避ける
    ・言葉の意味が規定しにくく、SDSsへの対応の具体性に欠けるコピーワークなど
  • 事実と関係性の低いビジュアルを用いない
    ・SDGsへの配慮の事実がないにもかかわらず、「貧困」「教育」等の写真でSDGsイメージの付与・増幅を狙うことなど

また、SDGs導入における企業の行動指針を示した「SDGコンパス」では、SDGsと事業を紐づけて取り組むための方法として下記の5つのステップが紹介されています。

  1. SDGsを理解する(勉強会・外部イベントなど)
  2. 優先課題を決定する(企業としての方針を決める)
  3. 目標を設定する(長期的な未来のための、定量・定性目標を決める)
  4. 経営へ統合する(社内への理解を促す)
  5. 報告とコミュニケーションを行う(サステナビリティレポートなど)

5. 企業コミュニケーションの好例

ここからは、企業として顧客コミュニケーションに成功したといえる企業をポイントを絞ってご紹介します。

01. 三島食品

1971年から『青のり』を販売してきた三島食品が2020年7月、原材料の変更を理由に、パッケージを青色から黄緑に、商品名を『青のり』から『あおのり』に変更したことがSNS上で話題になりました。

一見気づかないような一部の材料変更。しかしプロとして誤解を防ぐため、原料が変更されたことをごまかすことなく、名前を変えるというわかりやすい手段で消費者に伝えたことが評価されています。

02. Allbirds

“世界一履きやすい”スニーカーブランドとして知られる「Allbirds(オールバーズ)」。

自社製品の開発にかかるカーボンフットプリントを計測し、サイト上で公開していることから、取り組みに根拠と透明性があるといえます。また、サイトを見なくても商品タグには「食品のカロリー表示」のように環境負荷表示をしています。

03. SANU

「自然と共に生きる」を掲げるライフスタイルブランド、SANU。定額制で森の中のキャビンを貸し出すサービスですが、建築時に排出されるCO2の計測と公開(結果、カーボンネガティブということがわかっている)、解体時のことを考えた建築設計などから、根拠のあるサステナビリティ施策といえます。

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まとめ

SDGsウォッシュという言葉が出てきたことは、情報を受け取る側の意識が向上してきたことを意味するといえるでしょう。上辺だけでない、本当に持続可能なビジネスを行う企業が評価される時代になってきているのです。

また一方で、グリーンウォッシュやSDGsウォッシュを恐れすぎて何も行動できなくなることも避けたいところです。サーキュラーエコノミーの情報発信に特化したCircular Economy Hubのコラムでは、このように書かれています。

「沈黙はグリーンウォッシュよりも危険である」

先日イギリス・グラスゴーで開催されたCOP26の場で、イケアグループ(インカ・ホールディングB.V. およびその管理下にある事業体)の社長兼CEOにジェスパー・ブロディーン氏が語った言葉です。

ブロディーン氏は他企業に対し、情報を開示しないこと、未来図を示さないこと、そのための企業努力をしないことはブランドにとっても環境にとっても危険だと訴えました。

ブランドにとって必要なのは、「グリーンである」と主張することでもグリーンウォッシュを恐れて歩みを止めることでもなく、正直に現在の環境負荷や目指す未来までの道のりを開示し、「何が正解であるかわからない」と認め、正解を探すために対話と協力を呼びかけるコミュニケーションを取っていくことのはずです。

現在はSDGsウォッシュだと言われたとしても、停滞するよりは、適切な情報開示を行い、さまざまな試行錯誤を続けながら自社ビジネスをよりサステナブルにしていくことを目指す方を優先するべきだという主張です。

企業の多くはまだサステナブル事業への「トランジション(移行)」フェーズにあり、完璧な企業は存在しません。これからの企業コミュニケーションのキーワードは、「根拠」と「正直さ」かもしれません。

【参照サイト】Microfiber release from real soiled consumer laundry and the impact of fabric care products and washing conditions
【関連記事】ブランドにとってグリーンウォッシュ以上の危機とは

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