ゼロウェイスト達成率9割。廃棄物ゼロレストラン10のアクション【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#12】

ゼロウェイスト達成率9割。廃棄物ゼロレストラン10のアクション【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#12】

ベトナムの大人気ピザ屋「Pizza 4P’s」のSustainability Managerである永田悠馬氏による、レストランのサステナブルなプロジェクトに焦点を当て、Pizza 4P’sがさらにサステナビリティを突き詰めていく「過程」を追っていくオリジナル記事シリーズ「Peace for Earth」。

前回は創業10周年記念プロジェクトとして立ち上がった特別企画「Letters to the Future(未来への手紙)」をテーマに、未来への手紙を通して伝えたかったメッセージや、どのようにしてプラごみから手紙を作ったか、現在のプラスチック使用に対する葛藤や本企画に込めた想いなど、サステナブルアクションに取り組む企業のリアルな現場をシェアしてきた。

▶ プラごみでつくられた「1000年後の未来へ向けた手紙」が伝えるメッセージとは?【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#11】

第12回目である今回の「Peace for Earth」のテーマは、「ゼロウェイスト」に焦点を当てる。Pizza 4P’sは2021年7月、海外初出店となるカンボジアの店舗を、首都プノンペンにオープンし、その店舗コンセプトをゼロウェイストとしたことは第9回目の記事「1日180キロのごみを出す飲食店が、カンボジアで「廃棄物ゼロレストラン」をつくるまで」でも紹介した。以前の記事では、カンボジア店をオープンさせるまでの過程を主に紹介してきたが、今回の記事では、オープン後の具体的なアクションを中心に紹介し、カンボジアでのゼロウェイストレストラン実践の舞台裏をシェアする。

Photo: Pizza 4P’s
Photo: Pizza 4P’s

1. 「生ごみ」は、ブラックソルジャーフライの餌に

レストランから出るごみの中でも、最も多くの量が出るのは生ごみだ。調理段階で出る廃棄食材やお客様の食べ残しなど、さまざまな種類の生ごみがあり、その量は店舗から出るごみ全体の半分以上を占める。

今回、カンボジア店から出る生ごみを再利用するために、Ruy Reach社とパートナーシップを結ぶことにした。彼らはブラックソルジャーフライと呼ばれるハエの幼虫を養殖する会社だ。ブラックソルジャーフライはタンパク質を多く含み、大きくなった幼虫は乾燥させられて魚やエビなどの餌として販売される。

Photo: Ruy Reach
Photo: Ruy Reach

ブラックソルジャーフライの良いところは、硬いもの以外はなんでも食べることだ。通常、コンポストにはあまり向いていない油を含んだ生ごみや、ソースがかかっているもの、お客様の食べ残しなども、ブラックソルジャーフライはなんでも食べてしまう。現在、カンボジア店から出る生ごみのほとんどをRuy Reach社に回収してもらい、ブラックソルジャーフライの餌として再利用してもらっている。

また、キッチンから出る紙ごみも同社に回収してもらっている。特に、キッチンペーパーのごみが多いが、ブラックソルジャーフライを肥育している土壌中に紙ごみを混ぜ込むことで、ブラックソルジャーフライにとってより良い生育環境が作れるという。

2. 廃棄ピザ生地はコオロギの餌に

現状、ほとんどの生ごみはブラックソルジャーフライの餌として回収してもらっているが、廃棄ピザ生地は、カンボジアを拠点にコオロギ養殖を行うエコロギー社に別途回収してもらい、コオロギの餌として再利用してもらっている。

実はピザ生地は、発酵がうまくいかなかったり、窯の温度を確かめるために試し焼きをする必要があったりと廃棄が出てしまいがちで、生ごみ全体に占める割合も高い。

Photo: Pizza 4P’s
Photo: Pizza 4P’s

同社は食用コオロギをカンボジア現地で養殖し、そのコオロギを使った加工品(パウダーやエキスなど)を日本向けに販売している。ブラックソルジャーフライほどではないが、コオロギも非常に食欲旺盛である。

3. 貝殻、カニ殻、卵殻は鶏の餌に

ほとんどの生ごみは上述したブラックソルジャーフライとコオロギの餌として再利用してもらうことができた。しかし、残る課題はそれらが食べることができない「硬いもの」だ。例えば、アサリの貝殻、カニの殻、卵の殻などがそんな硬いごみに該当する。特にアサリはPizza 4P’sのパスタなどのメニューで多用するため、その殻の廃棄量も多く、また殻は非常に硬いため、再利用方法を探すことが難しかった。

最終的に、これらの殻は全てPizza 4P’s側で大型ミキサーで粉末化し、それを養鶏場に与えることで鶏の餌として再利用してもらうことができた。現在、カンボジア店で使用する全ての卵は、シェムリアップでケージフリーの養鶏を行っているEggscellent社から購入している。今回のゼロウェイスト実践にあたり、同社に協力を依頼し、殻パウダーを再利用してもらうことが可能となった。殻から作ったパウダーは、鶏にとっても新しい卵を産むための重要なカルシウム源となっているため、お互いにとってwin-winの関係性を構築することができたといえる。

Photo: Pizza 4P’s, Eggscellent
Photo: Pizza 4P’s, Eggscellent

4. 食べて学ぶ、サーキュラーエコノミー

カンボジア店では、ベトナム側の店舗にはない特別なピザがある。それは、「Smoked Fish and Egg sauce, served with Cricket spice – Creative reuse waste pizza」だ。

このピザには、カンボジア店から出たごみを餌として与えられた食材が使用されている。廃棄ピザ生地を与えて育てられたエコロギー社のコオロギパウダー、殻パウダーを与えられて育てられたEggscellent社のケージフリーの卵、そして、傷んでしまって廃棄せざるを得ない有機ルッコラを餌として与えたティラピアなどがトッピングされているのだ。

Photo: Pizza 4P’s
Photo: Pizza 4P’s

つまり、4P’sからごみとして廃棄されるはずだったものが再利用され、それが食材としてまた4P’sへ戻ってくるという「循環型のピザ」ともいえる。生産地から消費地への直線的(リニア)な関係性ではなく、消費地から生産地へも資源を戻していくことができる循環型(サーキュラー)な仕組みをイメージして製作した。カンボジア店を訪れるお客様にはぜひ、実際にこのピザを食べることで、サーキュラーエコノミーが実現する社会に想いを馳せて欲しい。

5. プラごみは建材にリサイクル

プラごみは、なかなか切っても切り離せないごみの一つだ。これは、レストランが仕入れる食材はほとんどの場合、プラスチック製の包装に包まれているためである。Pizza 4P’sの場合、セントラルキッチンから送られてくるパスタソースなどのセミフードや、ベトナムのダラットにあるチーズ工房から送られてくる自家製チーズも、全てプラごみに包まれている。

今回、カンボジア店をオープンするにあたり、カンボジアで長年ごみ問題と向き合い、同国ではほぼ初となる大型リサイクル施設を稼働させたGomi Recycle社と協力し、店舗から出るプラごみをリサイクルしてもらうことにした。

Photo: Pizza 4P’s, Gomi Recycle
Photo: Pizza 4P’s, Gomi Recycle

同社はスヴァイリエン州とプノンペン経済特区内にプラごみのリサイクル工場を構えており、プラごみを建材にリサイクルさせることができる。すでに日本国内でも多くの実績を持ち、プラごみからリサイクルされた建材は、国立公園内のフェンスやベンチといった耐久性が必要となる部分にも多く活用されている。

現在、店舗から出るプラごみは、週1回の頻度で彼らのプノンペン経済特区内の工場へプラごみを輸送し、リサイクルしてもらっている。

6. 欠けたお皿はリペアして再利用

カンボジア店をオープンして数ヶ月たった頃、欠けたり割れたりしてしまったお皿が大量にあることがわかった。それらはお客様が怪我をする恐れがあるため、もはや捨てるしかないと倉庫に保管していたお皿だった。しかし、その全てのお皿の購入費用を合算すると、なんと日本円で6万円にも上ることがわかった。

どうにかして再利用できないかと思い、このお皿を作ってくれたKhmer Ceramics社を訪問。カンボジア人の職人さんにお皿を見せると、とても器用な手つきで欠けてしまったところをヤスリにかけ、うまく塗装し直すことで修理してくれたのだ。

真っ二つに割れてしまったお皿の修理は難しかったが、少し欠けている程度であれば十分修理して再利用できることがわかった。欠けた部分を補修して使い直すと、それはそれで味が出て美しいものである。

Photo: Pizza 4P’s
Photo: Pizza 4P’s

7. 現地のウェイストピッカーとの協力も欠かせない

カンボジアには、リサイクル可能な資源ごみを回収し、それをリサイクル業者へ販売することで生計を立てているウェイストピッカーと呼ばれる人々がいる。カンボジア国内にはリサイクル工場はほとんどないため、多くの場合、彼らは回収したごみを中間業者へ販売し、中間業者はベトナムやタイといった隣国のリサイクル工場へそれらを販売している。ここカンボジアでは、日本のように細かい分別や回収システムが整っているわけではないが、彼らの働きにより、お金になるものはきちんと回収されていることがわかる。

Pizza 4P’sカンボジア店としても、彼らとの協業は欠かせない。個人のウェイストピッカーや、小規模な会社として運営しているところもあるが、彼らには店舗から出る段ボール、ペットボトル、アルミ付き紙パックといったさまざまなごみを回収してもらっている。

8. ウェットティッシュと紙ナプキンを廃止

さて、これまでは出てしまったごみをいかに再利用するかという点について紹介してきたが、ゼロウェイストを実践する上で最も重要になるのは、そもそもごみを出さないようにすることだ。3Rの「リデュース」に該当する部分である。

ベトナム側のPizza 4P’sでは、これまでの慣習としてなかなかすぐにリデュースできないものが多々あった。しかし、今回のゼロウェイスト店舗はカンボジア国内で1店舗目であるため、これまでの既存の習慣などにとらわれず、全くゼロからスタートすることができた。そのため、ゼロウェイストを達成する上で障壁になりそうなものはどんどん減らした。

リデュースはお客様にはあまり見えない部分で、とても地味なアクションではあるが、リサイクルと比べてもはるかにそれにかかる費用や手間が減るため、実際は最も効果的なゼロウェイストアクションだといえる。

リデュースのアクションは主に、お客様のテーブルに常備しているアイテムだ。ベトナム側のPizza 4P’sでは、お客様が食事の際に不便がないよう、個別包装のウェットティッシュと紙ナプキンをテーブルに常備しているが、カンボジア店ではこれをやめることにした。

Photo: Pizza 4P’s
Photo: Pizza 4P’s

ウェットティッシュはおしぼりで代用。おしぼりは洗うことで何度も使うことができる。また、紙ナプキンに関しては、すでに布製のテーブルナプキンがあるので常備せずとも問題ないと判断した。もちろん、お客様からリクエストがあった場合は個別にお渡しすることにしている。実際、カンボジア店のオープン後、この方法で全く問題ないことがわかった。ベトナム側では大量のウェットティッシュと紙ナプキンのごみが毎日出ているため、これをそもそも出ないようにできたことは非常に大きなステップとなった。

9. 食材ロスは他のメニューに再利用

さらにカンボジア店では、食材ロスを可能な限り減らすことにも取り組み始めた。料理の準備段階で、普段はそのまま捨ててしまう食材の切れ端などを、他のメニューに使うことで、全体の食材ロス率を削減することができる。例えば、Demeterというハーブティーの会社と協業し、オレンジやライムといった柑橘類の皮は、乾燥させてハーブティーにして提供している。

Photo: Pizza 4P’s
Photo: Pizza 4P’s

10. 20種のごみ分別

これまで述べてきた方法でごみを減らしてきたが、埋立地に送らざるを得なかったごみもある。現状、使い捨てのごみ手袋、割れてしまったお皿、不綿布マスク、キッチンペーパー、キャンドルのごみ、お客様が持ち込んだごみなどだ。これらについてはまだリデュースやリユースの方法が見つかっておらず、引き続きより良い方法を模索している。カンボジア店でゼロウェイスト担当として働く中角はゼロウェイストの実践についてこう語る。

「カンボジアではごみを分別するという習慣が全くないので、最初は20種の分別をスタッフに協力してもらうことにかなり苦労しました。どれがプラスチックでどれがゴムなのかわからないスタッフもいましたが、ひとつずつ教えていくことで、今では全員がごみの種類を理解し、分別にも協力的になってくれています。」

オープンから2か月。ゼロウェイスト達成率は90.6%

これらの取り組みを実施したことにより、オープンから2か月が経過した9月末の時点ですでに90.6%のごみを埋立地行きから回避させることができた。その内訳は、9月末の1週間のごみ総量が434.45kgに対し、埋立地行きにせざるを得なかったごみの量は9.6kg、残りの424.85kgは上述した1〜9のような方法で再利用した。

まだ100%ゼロウェイストを達成することはできていないが、お客様からは「カンボジアで20種の分別はすごい」といった好意的なコメントをいただいている。カンボジア人のお客様からも「カンボジアの問題に向き合ってくれてありがとう」といった声を聞くことができている。

飲食店でゼロウェイストを目指すことは並大抵のことではない。レストランではお客様が食べるものを取り扱う以上、食品衛生や感染対策は絶対に遵守しなければならない。さらに、今までベトナムで築き上げてきたブランドがあるからこそ、料理やサービスのクオリティにも一切妥協することはできない。ロックダウンになり、店内営業ができない状況になれば、ゼロウェイストに割ける予算は大幅に削減されてしまうだろう。

──それでも、そんな私たちの取り組みを通して、カンボジアに住む人々がごみについて考えるきっかけ作りに少しでも貢献できたならば本望だ。今後、ベトナム側の店舗も含め、さらにごみ削減を推し進めていきたい。

次回は、カンボジア店舗のゼロウェイストを組み込んだ店舗デザインについてお届けする。

筆者プロフィール:Pizza 4P’s Sustainability Manager 永田悠馬(ながた ゆうま)

1991年、神奈川生まれ。東京農業大学を卒業後、カンボジアに渡航。2014年からカンボジアの有機農業や再エネ関連の仕事に携わったのち、2018年にベトナムへ移住。ケンブリッジ大学ビジネスサステナビリティ・マネジメントコース修了。現在はPizza 4P’sのサステナビリティ担当。著書に『カンボジア観光ガイドブック 知られざる魅力』。

Edited by Erika Tomiyama

※本記事は、ハーチ株式会社が運営するIDEAS FOR GOODからの転載記事です。

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