最優先事項は「従業員の幸せ」。どのようにして、幸福度を計測するか?【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#07】

最優先事項は「従業員の幸せ」。どのようにして、幸福度を計測するか?【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#07】

ベトナムの大人気ピザ屋「Pizza 4P’s」のSustainability Managerである永田悠馬氏による、レストランのサステナブルなプロジェクトに焦点をあて、Pizza 4P’sがさらにサステナビリティを突き詰めていく「過程」を追っていくオリジナル記事シリーズ「Peace for Earth」。

前回は「サーキュラーエコノミー」をテーマに、ベトナム国内のごみ処理の現状や、ごみ問題に取り組む現地のスタートアップの紹介、Pizza 4P’sとのコラボレーション、レストランとしてのごみリサイクルの今後の課題など、サステナブルアクションに取り組む企業のリアルな現場をシェアしてきた。

▶︎レストランから出るプラごみを価値に。ベトナムのサーキュラーエコノミー【Pizza 4P’s「Peace for Earth」#06】

第7回目である今回の「Peace for Earth」のテーマは、Pizza 4P’sで働く従業員の「幸福度」に焦点を当てる。「Make the World Smile for Peace(平和のために世界を笑顔にする)」をビジョンとして掲げ、人々のインナーピースに貢献することを目指すPizza 4P’sは、まずは社内で働く従業員からそのポジティブな変化を生み出していこうと考えている。数年前から従業員の幸福度を定期的にモニタリングする「ハッピースコア」を始め、昨年は全社員に対して「ハピネスサーベイ」と呼ばれる幸福度に関する大規模なアンケートも実施。しかし、まだまだその道のりは平坦ではない。ベトナム国内でサステナブルアクションに取り組む企業のリアルな現場をシェアする。

※以下は、Pizza 4P’s Sustainability Managerである永田悠馬(ながた ゆうま)さんからの寄稿記事です。

なぜ、従業員の幸せを測るのか?

レストランであるPizza 4P’sが、なぜ従業員の幸福度を測っているのか。一番大きな理由としては、冒頭でも書いたように自分たちのビジョン「Make the World Smile for Peace」を達成するためだ。Pizza 4P’sはただのピザレストランとして経済的成功だけを目的にするのではなく、人々に「幸せ」や「インナーピース」を届けることに貢献したいと考えている。そして、それを達成するためには、まずは自分たち自身が幸せであること、インナーピースを心の中に持てること、それが実現されることが必要だ。お客様に幸せを届ける自分たちがそれを実践せずして、他の人々にそういった変化を起こすことはできないからだ。

また、近年「ウェルビーイング」という言葉が注目され始めている。ウェルビーイングとは、心身と社会的な健康を意味する概念のことをいう。WHOの定義を借りれば「肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態」のことを指す。ウェルビーイングという言葉が注目され始めた背景のひとつに、昨今の社会情勢がある。予測不可能な「VUCA時代」とも呼ばれるように今、物事が急速なスピードで変化・複雑化し、不安定になっている。現在の新型コロナがもたらした世界的パンデミックはその代表例だが、この変化の激しい社会におけるストレスが増加し、人々のウェルビーイングに注目が集まっている。

特に飲食店で働く人々は勤務時間が長くなりがちで、離職率が多い業種でもある。日本サステイナブル・レストラン協会も、持続可能なレストランのあり方の一つとして「従業員の公平な評価・処遇」を挙げており、「平等な機会、研修、明確な方針を提供して、従業員の満足度と生産性を向上する」ことを飲食店へ推奨している。

Pizza 4P's
Image via Pizza 4P’s

どのようにして、幸福度を計測するか?

Pizza 4P’sの経営会議では「どのようにビジョンを達成するか」そしてその実現のために「いかに幸福を計測していくか」というトピックが、経営陣と投資家の間で頻繁に議論される。実際、いかにしてPizza 4P’sは従業員の幸福度を計測することができるのか。これに対する明確な答えはまだ出ていないが、一つの方法として「ハピネスサーベイ」というアンケートを全ての従業員に毎月回答してもらっている。これは数年前から継続しているシンプルなアンケートで、質問はたった1つだけ。「あなたは現在の人生・仕事においてどれくらい幸せを感じていますか?」という問いに対し、5段階で評価してもらう。回答には1分もかからないため、従業員にとっても回答しやすい。この回答の平均値を「ハピネススコア」として、会社のKPIの一つとして設定している。

さらに昨年は、毎月行っている「ハピネスサーベイ」をさらに詳細化したアンケートを実施した。アンケートを詳細化するにあたり、ブータンのGNH(Gross National Happiness: 国民総幸福量)の基準を参照。通常、世界各国の経済規模を測定する指標としてGDP(国内総生産)が用いられるが、ブータンの場合は経済的指標だけではなく、国民がどれくらい幸せであるかを計測するGNHという指標を持つことで有名だ。Pizza 4P’sでは、そのブータンのGNH指標開発に携わり、GNHの考え方を企業にも応用する活動に取り組んでいるDr. Ha Vinh Tho (ハー・ビン・トー博士)の指導も仰ぎながら、アンケートを詳細化していった。

GNHをビジネスへ応用する場合、評価軸は主に2つのカテゴリー「従業員の幸福」と「組織の健全性」に分けられる。今回のPizza 4P’s全従業員向けアンケートでは「従業員の幸福」にフォーカスした。「従業員の幸福」は、5つのトピック「心理的ウェルビーイング」「健康」「時間の使い方」「教育」「生活水準」から構成されており、それぞれのトピックに多くの質問項目があり、GNH全体で112項目もの詳細な質問に回答してもらう形でアンケートを実施した。

Pizza 4P's
Image via Pizza 4P’s

Pizza 4P’sの従業員はどれくらい幸せか?

2020年5月、Pizza 4P’sではこのGNHを参照した詳細版ハピネスサーベイを会社として初めて実施。結果、従業員の回答率は76%、およそ1200人のPizza 4P’sの従業員から回答を集めることができた。数あるアンケートの質問の中でも、特に重要な質問「あなたは現在の人生・仕事においてどれくらい幸せを感じていますか?」に回答してもらった結果、5点満点中、人生の幸福度が平均「3.72」、仕事の幸福度が平均「3.32」という結果だった。

今回の詳細なアンケートでは、他にも下記のようなインサイトを得ることができた。

  • 店舗で働くアシスタントマネジャー以上の役職は、幸福度が高い傾向がある
  • ただし、アシスタントマネジャー以上の幸福度が高いのは「心理的ウェルビーイング」と「健康」が主で、「時間の使い方」「教育」に関しては低い傾向がある
  • 店舗で働く勤続年数1年以上2年未満の人は、幸福度が全体的に低めの傾向がある
  • 都市部ホーチミンの店舗で働く人は、他の地域で働く店舗の人と比べると、幸福度が低めの傾向がある
  • 事務所のスーパーバイザーやチームリーダーの役職の人は、幸福度が全体的に低めの傾向がある
  • 事務所で働く勤続年数1年以上2年未満の人は、「心理的ウェルビーイング」と「生活水準」に関して幸福度が高めの傾向がある
  • 生産部門で働くスーパーバイザーやチームリーダーの役職の人は、幸福度が全体的に高めの傾向がある
  • 生産部門で働く人では、2年以上働く人とそれ以下の勤続年数の人では「生活水準」に関して大きな差がある

今回の調査結果を元に、すぐに改善できるところは早速アクションを行った。たとえば、従業員が悩みを相談できるホットラインのリマインド、各店舗への医薬品箱の設置、従業員の意見を吸い上げる機会の増加、店舗トレーニングの改善、昇進基準の明確化、人材増強とシフトの最適化、などだ。

結果、2020年後半の平均ハッピースコアは、10月時点で「3.92」、11月「3.99」、12月「4.1」と、少しづつではあるが改善することができた。

変化の激しいビジネス現場にて、いかに幸福とインナーピースを追求できるか

上記のような取り組みや改善を継続的に行ってはいるものの、まだまだ会社として目指す場所には程遠い。特に昨年はパンデミックの影響が大きく、Pizza 4P’sにとってビジネス的に非常に苦しい年だった。ロックダウン期間中は店舗も閉め、リモートワークにならざるを得ないなど、ストレスとプレッシャーが大きくのしかかったのだ。その結果、昨年の従業員の離職率はとても大きく、正直、会社として誇れる状態ではなかった。

しかし、そんな状況だからこそ、自分たちが目指すインナーピースが大切であることを改めて感じた。こうした最もストレスフルな状況で、いかに心の中に平穏を取り戻せるかというのは、その人の幸福にとって非常に重要である。

昨年末には、マネジャー以上の従業員を対象に、ヨガと呼吸法の研修を3日間に渡って実施した。さらに、2021年3月現在、マインドフルネスに関する研修をマネジャー向けに実施中だ。マインドフルネスに関しては近年、脳科学的な研究や、ビジネスにおけるパフォーマンス向上の実証なども多く行われており、企業全体への導入に効果がありそうだと感じている。将来的には、マインドフルネスやヨガ、呼吸法などを組み合わせることで、自社オリジナルの研修プログラムを作り上げていきたいとも考えている。

変化の激しいビジネス現場にて、いかに幸福とインナーピースを追求できるか。まだまだ道半ばではあるが、一歩ずつ改善を進めていきたい。

筆者プロフィール:Pizza 4P’s Sustainability Manager 永田悠馬(ながた ゆうま)

1991年、神奈川生まれ。東京農業大学を卒業した後、カンボジアに渡航。2014年からカンボジアの有機農業や再エネ関連の仕事に携わったのち、2018年にベトナムへ移住。ケンブリッジ大学ビジネスサステナビリティ・マネジメントコース修了。現在はPizza 4P’sのサステナビリティ担当。著書に『カンボジア観光ガイドブック 知られざる魅力』。

【関連記事】 自分の幸せが、社会の幸せになる。ベトナムのピザ屋に学ぶサステナビリティの本質
【参照サイト】 Pizza 4P’s

Edited by Erika Tomiyama

本記事は、ハーチ株式会社が運営するIDEAS FOR GOODからの転載記事です。

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