【イベントレポート】アーキタイプベンチャーズ、カマンによるサーキュラー・インキュベーション第3回講義を実施!

【イベントレポート】アーキタイプベンチャーズ、カマンによるサーキュラー・インキュベーション第3回講義を実施!

※本記事は、ハーチ株式会社が運営する「CIRCULAR STARTUP TOKYO」からの転載記事です。

CIRCULAR STARTUP TOKYO」がインキュベーションプログラムの一環として行う全4回のサーキュラー・インキュベーション講義の第3回目が、5月21日に開催されました。

今回の講義内容は「サーキュラーエコノミーとファイナンス」そして「サーキュラーエコノミーとスタートアップ実践」の二本立てです。

サーキュラーエコノミーとファイナンス

講義は、社会課題を解決するスタートアップ企業への投資支援を行うベンチャーキャピタルであるアーキタイプベンチャーズの北原宏和氏の話から始まります。

グローバルの現況

日本国内においては直接的なデータやレポートが無く、サーキュラーエコノミーにどれだけ資金が投入されているか分からないものの、グローバルでは2022年に62億ドル、2024年の第1四半期には73億ドルもの資金がサーキュラーエコノミーに関連するスタートアップに投入されていると北原氏はデータを示しました。

分野においては、革新的なデジタル技術領域のスタートアップが多く、なかには評価額が10億ドル以上の未上場のスタートアップ「ユニコーン企業」も次々に登場しています。

ファイナンスと事業戦略の間の密接な絡みつき

ケーススタディとして紹介された「Vinted」は、個人が中古品を売買できる、日本の「メルカリ」に似たサービスを提供する、リトアニア発の企業。創業から5年の時間をかけて事業を作り込み、著名なベンチャーキャピタルから最初のファイナンスを受ける。以降事業構築をすすめながら調達額を拡大。19年以降はマーケットプレイス、データサイエンス、ロジスティクス領域で積極的にM&Aを展開しているといいます。

北原氏は「Vintedのように創業後しばらくは、自己資金で事業を進めている会社もある。ベンチャーキャピタルからの調達を急ぐ必要はない」と説きます。併せて、M&Aを積極的に進め、成長していく戦略にも注目を呼びかけました。
北原氏によるケーススタディ
続いてBack Market社の事例が紹介されました。Back Marketは、再販事業者とユーザーを繋ぐリファービッシュ(中古品や初期不良などで返品された製品を修理・調整して、新品に準じる状態に仕上げること)マーケットプレイス事業を展開。欧米、日本の16ヶ国、 800以上のリファービッシュ事業者をパートナー化し、600万人以上にサービスを提供しています。

Back Marketは先ほどのVintedと異なり、2014年の設立直後にシードファイナンスを行いその後も事業進捗に合わせる形で都度複数のベンチャーキャピタルから資金調達を継続的に多ないながらグローバルに事業展開を行ってきました。

この二つの事例を通して、ファイナンスと事業戦略には密接な絡みつきがあることを北原氏は示しました。「とりあえず資金調達」「2年ごとに調達」と定説に沿って進めるのではなく、事業進捗に合わせて柔軟に考えていく必要があるのです。

魅力的なストーリーを唱える重要性

これまで見てきたようにグローバルにおいては、サーキュラーエコノミーは投資可能な領域として捉えられていると北原氏は解釈します。ただ、グローバルに比べて日本の投資家のサーキュラーエコノミーへの関心は低い。だからこそ相手を見極めながら、それぞれの投資家に伝わるように事業説明を工夫するべきなのだといいます。

VintedやBack Markeもビジョンを語り、魅力的なエクイティストーリーを唱えることで高いバリュエーション、企業価値評価で資金調達ができ、柔軟な事業展開ができてユニコーン企業にまで発展した。だからこそ、投資家にとって魅力的なストーリーやビジョンを語れるようにすることもサーキュラーファイナンスにおいて重要であると北原氏は最後に話しました。

なぜ、今起業するのか?

北原氏からバトンを受け継ぎ、同社の中村聡志氏から、スタートアップの資金調達における基本的な考え方と起業一年目における実務的な留意点の解説がありました。具体的には、前者は自社の資金需要の把握の重要性や資金調達手法、資本政策の注意点など、後者は創業者間契約の締結のススメやベンチャーキャピタルの選び方など、スタートアップのファイナンスのベースとなる内容を参加者に共有しました。

そのうえで中村氏は、「サーキュラーエコノミーは耳目を集める領域だけれど、だからこそなぜ今、この領域で起業しようとしたのか、本当にやり抜く熱意があるかを示すことに繋がる起業背景にある想いや原体験といったエモい部分も投資家は重要視している」「また、ソフトウェアなどと異なり技術的優位性を示しづらい領域ということもあり、それに代わる競争優位性を社内外の協力関係の巻き込み状況などを示すことで補完していく必要がある」などのティップスを示しました。
中村氏

サーキュラーエコノミーとスタートアップ実践(株式会社カマン編)

後半は、株式会社カマンの代表取締役、善積真吾氏の登壇。ソニー株式会社で新規事業創出プログラムの立ち上げやスタートアップ・アクセラレーション・プログラムで100チーム以上の大企業・ベンチャー・大学・NPOの新規事業立ち上げを支援した後、地域循環型社会構築のため、株式会社カマンを創業しました。

カマンでは、テイクアウト用の使い捨て容器ごみ削減のため、地域共通のリユース容器シェアリングサービス「Megloo(メグルー)」を開始。廃棄プラスチックを無くす国際アライアンス (Alliance to End Plastic Waste, 略称AEPW) による初の日本国内プロジェクトに選出されました。

Meglooのユーザーは、地域共通のリユース容器をスマホで簡単に無料で使用でき、利用後は地域の対応店舗もしくは返却BOXであればどこにでも返却可能。昨今は日本でもプラスチックの使い捨て容器に代わり、紙製や堆肥可能な使い捨て容器が出てきていますが、リユース容器シェアリングサービスはオペレーションに手間がかかる部分はあるものの、それらに比べCO2もごみ排出も大幅に削減できて、コストも紙素材と同程度以下で実装可能となっています。

また世界のリユース容器に関する動きとしても、オランダでは2023年7月から使い捨て容器税が導入、ドイツでは2023年1月からテイクアウト時のリユース容器の選択肢付与が義務化されるなど取り組みが進んでいます。こうした潮流も受けつつ「捨てるからめぐる社会へ」を目指し、全国のインフラとなれるようMeglooは活動を続けています。

バリュープロボジションの重要性

善積氏は、前述の通り、株式会社カマンの創業前はソニー株式会社でアクセラレーション・プログラムの支援をしていました。メンターとして数々の事業を見てきたなかで、うまくいく事業に見出した方程式は、「バリュープロボジション(商品価値)」がはっきりしていること。

チームや資金、技術やビジネスモデルなど事業のポイントは様々ありますが、善積氏は「そもそも市場のニーズが無いものは何をしても上手くいかない。だからこそ、事業計画を立てる過程で随時ニーズを検証しながら、顧客が欲しがる商品・サービスを考えることが重要。また、顧客に関しても、新しいものであればどんなものであれ選択したいイノベーターでもマジョリティでもなく、現状切実なニーズがあり既に対策を始めているアーリーアダプターを対象に絞ること。そして検証を進めながら、『ある顧客の、ある課題があり、 代替案として**があるが、 ××という不満があり、 我々は、〇〇を提案します』といったようにバリュープロボジション(商品価値)を明確にしていく必要がある」と説きます。
善積氏

プログラムを最大限に使い倒そう

最後にCIRCULAR STARTUP TOKYOの参加者に向けて善積氏は「サーキュラーエコノミーはブームではなく避けては通れない市場。そのわりに、まだ日本で実践できている企業は少ない。何をやっても注目される大チャンス。このプログラムを最大限活かして、一緒に頑張れたら」とメッセージを伝えプレゼンテーションを終えました。
真剣に話を聞く参加者たち
講義終了後には講義の感想や学びがあった点、今後の事業づくりに生かしていきたいことなどを参加者同士でグループディスカッションしたうえで、登壇者への質疑応答時間が取られました。「インパクト投資家は今後のサーキュラーエコノミー業界にどう投資してくるか?」「事業スタート時の仲間探しはどのようにしたのか?」など、様々な議論が交わされる時間となりました。

次回は全4回のサーキュラー・インキュベーション講義の最終回。サーキュラーエコノミーとパートナーシップ」をテーマに、「ごみを通してわくわくする社会をつくろう」をミッションに、オンラインコミュニティやイベント運営、企業とのコラボレーションなどを手掛ける団体「ごみの学校」代表の寺井正幸氏と、一般社団法人ゼロ・ウェイスト・ジャパン 代表理事 坂野晶氏を講師に迎えた講義の様子をレポートします。

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