*2021年2月号*「脱」の先にある、サステナビリティの本質

*2021年2月号*「脱」の先にある、サステナビリティの本質

IDEAS FOR GOOD Business Design Lab (以下、BDL)の会員の皆様、こんにちは!BDLでは、会員の皆様向けに毎月1本、会員限定ニュースレターをお届けしています。「IDEAS FOR GOOD」の運営を通じて日々世界中から膨大な情報収集・リサーチをしているエディトリアルチームが、IDEAS FOR GOODには掲載していないものの、注目すべきだと感じた最新情報をキュレーションしてお届けします。SDGs・サステナビリティ・サーキュラーエコノミー・ESG 領域の事業に関わる皆様は、ぜひ情報収集の参考にしてください。

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編集部が注目した2021年2月のおすすめニュース

ブルームバーグが新レポート「BI100」発表(01/26)

ブルームバーグ・エル・ピーは1月26日、ブルームバーグ・インテリジェンスによるレポート「2021年に注目すべき投資アイデア100(BI100)」を発表しました。135業種の2000社以上を含む世界の全市場を網羅し、独立した立場から、インタラクティブなデータや投資に関するリサーチを提供しています。

今回のレポートでは、グリーン・リカバリー、スマートヘルスケア、 デジタルトランスフォーメーションといった重要テーマが公衆衛生や政策の変化によって、どのように影響を受けるかを分析しています。特にグリーン・リカバリーは「3兆ドル以上の刺激策が実施される可能性」を挙げており、また、米国の風力・太陽光発電事業の主要企業であるネクステラ・エナジー がバイデン新大統領のインフラ開発計画によってどのように影響を受けるかなど、視点が具体的なものになっています。

【URL】Bloomberg Intelligence (BI)

カナダのプラスチック協定が発足(01/27)

カナダでは、カナダプラスチック協定(CPP)が発足され、2025年までにプラスチックのサーキュラーエコノミー化を目指して動き始めています。具体的には、バリューチェーン全体で不要なプラスチック使用をやめ、最低限必要なプラスチックを再利用可能にし、さらに堆肥化可能にすることを促進しています。CPPでは、ダノン・カナダ、コカ・コーラ・カナダなどの企業や自治体といった40の組織が参加しています。カナダは、エレンマッカーサー財団が主導するプラスチック協定ネットワークに参加しており、今後さらなる加速が期待されます。

【URL】Canada plastic pact launched

欧州委、ウェブサイトにおける「グリーンウォッシング」の審査を実施(01/28)

欧州委員会と各国消費者当局は1月28日、オンライン市場におけるEU消費者法の違反事例を確認するため、毎年実施されるウェブサイトのスクリーニング結果を発表しました。企業が実際よりも環境のために多くのことを行っているように見せかける「グリーンウォッシング」に焦点を当てたスクリーニングが実施され、アパレル・化粧品・家電製品などさまざまな分野におけるオンライン上のエコに関する主張について解析しています。消費者当局は、スクリーニングの対象となったサイトの42%において、誇張された・正しくない・或いは見せかけのエコであると主張しました。消費者が「正しい」と判断するための材料・証拠を提示するといった透明性が重視されています。

【URL】Screening of websites for ‘greenwashing’: half of green claims lack evidence

コカ・コーラ、紙ボトルを開発(02/12)

コカ・コーラが炭酸飲料からのガスの漏れを防ぎ、かつ100%リサイクル可能なプラスチックフリーのボトルを開発しました。このボトルは紙繊維ベースの単一素材で作られており、ボトルの内側に植物ベースのコーティングが使用されています。この開発に携わったのが紙繊維の容器の開発を支えているデンマークの企業Paper Bottle Company(Paboco)です。7年以上の開発期間を経て、コカ・コーラは今夏、ハンガリーにて検証を行う予定です。この動きはコカ・コーラに限らず、ウォッカメーカーのアブソルートやビールメーカーのカールスバーグも紙ボトルの実証実験を行います。既に広く流通されているプラスチックの代替品となるのか、今後の動きに注目が集まっています。

【URL】Coca-Cola company trials first paper bottle

ゼロウェイストが、英国に5千もの雇用を生み出す可能性(02/16)

ロンドンの研究で、ゼロウェイスト化戦略により5000人もの新しい雇用を生む出すと発表されました。ここで注目したいのは、ただ多くの雇用を生み出すだけでなく、肉体労働ではない仕事内容で、高い賃金で生活の質を上げるものである点です。ゼロウェイスト化に関わる雇用の創出は環境問題の解決だけでなく、人のウェルビーイングに関わる重要な雇用であることで、グリーンリカバリーにおいて優先度が高い施策となりそうです。

【URL】Report: ‘Zero waste’ systems could create thousands of jobs for London

デンマーク、CO2排出を削減する新しい食事ガイドライン(02/22)

デンマーク獣医食品局で発行されたガイドラインによると、食品の二酸化炭素排出量を食品選びの推奨事項に入れています。その他にも、「肉の摂取量は1週間あたり350グラムに制限」「植物性タンパク質が豊富なマメ科植物の摂取量を1日100グラムに増やす」など具体的に記されています。「環境に良くない食事を非難するものではない」としながらも、デンマークは脱炭素に向けて一定の法的拘束力を持っており、豚肉の主要輸出国であるデンマークの積極的な姿勢が伺えます。

【URL】Denmark Recommends Carbon-Friendly Foods In New Dietary Guidelines

EU、2030年までに飲料パッケージのサーキュラー化(02/23)

ヨーロッパ全土に23の協会がある欧州ソフトドリンク協会(UNESDA)は、EU飲料パッケージが2030年までにサーキュラー化するとして「Circular Package Vision2030」を開始しました。このビジョンでは、収集・リサイクル・パッケージの削減と再利用という3つの目標を設定し、「2030年までに飲料パッケージを少なくとも90%取集」「2030年までにペットボトルは100%リサイクルあるいは再生可能な材料で作られること」など具体的なアクションが記されています。本ビジョンはコカ・コーラ、サントリー、ネスレなどイギリスやスイスなどを含むヨーロッパ全土を対象としており、着々とカーボンニュートラル化に向けた動きが進んでいます。

【URL】Europe pledges to make beverage packaging fully circular by 2030

マイクロソフト、データセンターで84%の資産再利用率を達成(02/25)

データセンターは温室効果ガスの総排出量のうち約2%を占めると推定されており、(航空業界と同等の数値)この数値は2030年までに世界の電力供給の10%以上を超える可能性があるという予測もあります。大手クラウドサービスを展開するGoogleやAmazonなど数多くの企業が掲げたカーボンニュートラルのために、データセンターのサステナビリティ化に向けた試みが加速しています。その中でMicrosoftでは、「Circular Centers」を立ち上げ、消費電力の削減だけでなくサーバーの長寿命化に着目し、データセンター自体の循環に取り組んでいます。

【URL】Microsoft hits 84% asset reuse rate in data centers

IDEAS FOR GOOD Business Design Lab2021年2月のおすすめ記事

EVだけじゃない!運送業者が実施するSDGsの取り組みとは?

近年ますます存在が大きくなっている物流業界。BtoCはもちろん、BtoBであっても自社のサステナビリティのスタンスを保つために、サプライチェーンマネジメントの一環としてサステナビリティに意識した物流・運送業者を選択することが重要です。今回は、物流・運送業者のSDGsへの取り組みや選ぶポイントについて解説します。

企業とNPOの関係をリデザインする「寄付」のニューノーマルとは?

先日行ったBusiness Design Labのイベント「企業とNPOの関係をリデザインする『寄付』のニューノーマルとは?」のレポートが公開されました。NPOと企業の両方がつながりあえるような、これからの時代に求められる「寄付のニューノーマル」について紐解いていきます。

SDGs目標3に取り組む、企業のユニークな先進事例

SDGsの目標3に定められている「すべての人に健康と福祉を」。先進国を含むすべての人々に健康や福祉を提供するために、企業はどう取り組めば良いのでしょうか。実際の事例を交えながらご紹介します。

IDEAS FOR GOOD 編集長のコラム

「脱」の先にある、サステナビリティの本質

皆さんこんにちは、IDEAS FOR GOOD編集長の加藤です。早いもので今年も2カ月が過ぎてしまいましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。今回のコラムでは、最近サステナビリティに関する話題で目に触れることが多い「脱」という言葉について考えてみたいと思います。

私が最近よく目にするのが、「脱炭素」「脱プラスチック」「脱成長」という3つのキーワードです。いずれもとてもキャッチ―で目を引く言葉なのですが、これらの言葉の取り扱いには少しだけ注意深くなる必要があるなと感じています。

一つ目の「脱炭素」。昨年10月に菅首相が2050年までの脱炭素宣言をして以降、メディアでもこの言葉を見かけないという日はないほど、数多くの企業や自治体が「脱炭素」を合言葉に取り組みを進めています。「脱炭素」と聞くと炭素が悪者のように感じてしまいますが、実際には炭素は私たち人間も含むあらゆる生命体や地球に欠かせない元素の一つであり、炭素自体が悪いわけではありません。問題は、数億年から数十億年の時間をかけて地中に蓄積・固定されていた炭素を私たち人間が急速なスピードで大気中に放出し、地球の炭素の循環を乱してしまっている点にあります。

現在、世界では大気中からCO2を吸収するDAC(Direct Air Capture)技術の開発や、植物由来のグリーンカーボン、藻類をはじめとする海洋資源由来のブルーカーボンの活用など、地中ではなくすでに地上にある炭素を活用して素材や製品をつくるという動きが加速しています。DACは大気中のCO2を削減するリジェネラティブ(再生的)な仕組みだと言えますし、グリーンカーボンやブルーカーボンは再生可能な炭素であり、これらの炭素をフルに活用することができるようになれば、持続可能な循環型の経済システムに近づくことができます。

大事なのは炭素の「由来」であり、今求められているのは、これ以上地下資源の炭素を採掘せずに地上資源の炭素を活用すること、また、植林やCO2回収・貯留技術などを通じて大気中に放出されてしまった炭素をもともとあった場所に戻していきながら、炭素の循環を整えていくことなのです。ドイツに拠点を置くRenewable Carbon InitiativeはこれをCircular carbon economy(炭素の循環経済)と表現しており、サステナビリティ先進企業として知られるユニリーバは、実際にこの炭素の循環経済の実現に向けた「カーボンレインボー」という戦略を掲げています。どのように自然界にもともと備わっている炭素の循環に自社の事業を整合させるのか。これこそが私たちが考えるべきテーマだと言えます。

二点目の「脱プラスチック」も同様です。2017年末に中国がプラスチックごみの輸入を禁止して以降、日本においても脱プラスチックに向けた動きが急速に活発化し、2020年7月にはプラスチック製レジ袋の有料化も実施されたことで一気に人々の意識も高まりました。

一方で、「脱プラスチック」と言われるとプラスチックが悪者のように感じてしまいますが、ここでも一度立ち止まって考える必要があると言えます。確かにこの50年で世界のプラスチック生産量は20倍に増加し、化石燃料の使用に伴う気候危機への悪影響や、海洋プラスチック・マイクロプラスチックによる海洋生態系・漁業・観光業への悪影響など、プラスチックが様々な社会課題を引き起こしていることは紛れもない事実です。

一方で、プラスチックの素材としての環境性能が他の素材と比較して低いかと言われると、必ずしもそうではありません。プラスチックには、軽量のため輸送時のCO2排出量が少ない、耐久性が高く内容物の保存ができるため食品ロスなどを防ぐことができるなど、様々なメリットもあります。実際にUNEP(国連環境計画)のLCA(ライフ・サイクル・アセスメント)によれば、コットン製のマイバッグであれば50回以上使用しないと使い捨てのプラスチックレジ袋よりも環境負荷が高くなってしまうといった調査結果も出ています。見た目が「サステナブル」かどうかと実際に「サステナブル」かどうかは違うのです。

ここでも問題となるのは、プラスチックという素材そのものではなく、私たち人間がプラスチックとどのように向き合い、付き合うかという点です。石油由来プラスチックの原料となっている原油は、もともとは植物やプランクトンなどの死骸が堆積し、数億年~数十億年という時間をかけてできたものです。人工物の代表のように語られることが多いプラスチックも、当たり前ながら長い時間軸で見れば自然からできている素材なのです。地球というシステムがそれだけ長い時間をかけて作り上げてきた貴重な資源を、たった一度使っただけで捨ててしまっては、地球の循環のバランスが崩れるのは当然です。プラスチックであれ紙であれガラスであれ、その素材を大切に扱い、できるかぎり愛情を持って長く使い続けること。また捨てるときは環境に流出させず、しっかりと責任をもって再び素材としてリユース・リサイクルできるように捨てること。それが、私たちがとりうる唯一の持続可能なアプローチだと言えます。“Love Plastic”と“Hate Plastic”のどちらがよりサステナブルな思考スタイルだと言えるのか。改めて自分なりの答えを考えてみるのもよいでしょう。

最後のキーワードが、「脱成長」です。「脱成長(Degrowth)」と「持続可能な成長(Green Growth)」をめぐる議論は日本だけではなく海外でも存在しています。この両者の違いの根本にあるのは、いわゆる経済成長と環境負荷の「デカップリング(分離)」が実現可能かどうかという点に対するスタンスの違いです。

脱成長と聞くと「成長」そのものに対するアンチテーゼのようにも聞こえますが、実際に脱成長という概念が問いかけているのは成長の「限界」であり、「無限」の成長を前提とした現在の経済・社会システム構造です。自然界を見てみても、植物であれ動物であれ、成長はするもののそのプロセスは無限ではありません。どのような命も一定の成長期間を経て衰退し、最後は寿命を全うして分解され、次の命へとつながっていきます。経済や社会のシステムも人間が創り出している有機的なシステムであり、そのシステムが自然資本を前提に作られている以上、自然の摂理から抜け出すことはできません。私たち人間が「成長」を目指すことは自然なことであり、同時にそれが「有限」だということもまた自明なのです。そのため、「成長」そのものには良いも悪いもありません。むしろ私たちがいま議論すべきは、何を「成長」と定義するのかという点です。脱成長と持続可能な成長のいずれの立場にせよ、最終的に目指しているのは人々の幸福です。現在、成長の指標として語られているのは「GDP」ですが、本当にこの指標が人間の幸福につながる「成長」の指標として適切なのかどうかを考えてみると、新たな経済の地平が見えてくるようにも感じます。

例えば、世界にはNew Economics Foundationが提供するHappy Planet Index(世界幸福度指数)という国別のランキング指標があります。このHPIという指標は「平均寿命×ウェルビーイング×格差/エコロジカルフットプリント」というユニークなロジックによって決まります。分母に「エコロジカルフットプリント(環境負荷)」が来ているため、仮に平均寿命が長く、ウェルビーイングも実現されていて、格差も少ない幸せな国だとしても、環境負荷が高い暮らしをしているとランキングの上には出てこないのです。例えばこの数値が前年度と比較してどの程度「成長」したのかを競争のルールにしたとすれば、いまとは全く違う世界が待っているはずです。

ちなみに、このHPIの2016年度版調査で世界第一位の国は、中南米のコスタリカです。コスタリカは世界で唯一軍隊を持たない平和国家であり、生物多様性にも恵まれ、最近ではリジェネラティブ・ツーリズムなど、経済活動を通じて環境とコミュニティを再生させる仕組みへの取り組みでも注目を浴びています。また、アジアで最もランキングが高いのはベトナムです。もしこのHPIを先進国の指標とするならば、私たちが持つ「大国」のイメージは大きく変わることになるでしょう。

「脱」の先にある、サステナビリティの本質

いかがでしょうか。脱炭素、脱プラスチック、脱成長。いずれも確からしく聞こえる言葉なのですが、これらの言葉を少しだけ注意深く咀嚼してみると、何が本当にサステナブルなのかという問いに真正面から向き合うことができるようになります。

IDEAS FOR GOOD Business Design Labでは、サステナビリティという答えのない問いに向き合いながら仕事をするからこそ、ぜひ皆様とも一緒に考えを深めていきながら、よりよい未来の実現に向けて取り組んでいきたいと考えています。こうしたテーマで議論を深めたいという方はぜひいつでもお声がけください。

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