*2021年1月号*サステナビリティをジブンゴト化する、余白とクリエイティビティと愛着

*2021年1月号*サステナビリティをジブンゴト化する、余白とクリエイティビティと愛着

IDEAS FOR GOOD Business Design Lab (以下、BDL)の会員の皆様、こんにちは!BDLでは、会員の皆様向けに毎月1本、会員限定ニュースレターをお届けしています。「IDEAS FOR GOOD」の運営を通じて日々世界中から膨大な情報収集・リサーチをしているエディトリアルチームが、IDEAS FOR GOODには掲載していないものの、注目すべきだと感じた最新情報をキュレーションしてお届けします。SDGs・サステナビリティ・サーキュラーエコノミー・ESG 領域の事業に関わる皆様は、ぜひ情報収集の参考にしてください。

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編集部が注目した2021年1月のおすすめニュース

2020年はサステナブルなライフスタイルが加速。8カ国の消費者を対象に仏ガルニエが調査(01/07)

フランスのヘアケア・スキンケアブランドであるガルニエは、米国・英国・ブラジル・ドイツなどを含む8カ国の18,000人を超える消費者を対象に、サステナブル行動に関する調査を実施しました。この調査によると、回答者の44%は新型コロナウイルスのパンデミックによって人々が環境問題についてより真剣に考えるようになったと感じており、サステナビリティへの第一歩を踏み出した一年と言えます。中でも、大多数の国ではプラスチックごみ削減の取り組みがもっとも重点的に行われました。ガルニエも、2020年にはプラスチックごみを出さない固形シャンプーバーやリサイクル可能な容器を導入するなどサステナビリティのために動き出していますが、消費者の多くはサステナブルなライフスタイルのためにブランドが重要な役割を果たすと考えているようです。

【URL】Garnier’s One Green Step Report Proves People Want More Sustainability

旅行抑制で米国温室効果ガス排出は戦後最大の10%削減に(01/12)

米国で排出される温室効果ガスが10%削減したというニュースで、これは戦後最大の減少とのことです。その要因の一つにあるのが米国の温室効果ガス排出量31%を占める新型コロナによる旅行の制限でした。規制期間中の2020年4-5月のジェット燃料の68%は減少し、主に乗用車からのガソリンは40%減少し、12月時点でもジェット燃料の需要は戻っていません。パリ協定の米国の目標に近づくためには毎年7%の温室効果ガス排出削減が目指されています。コロナウィルスワクチンが流通し始めた後の需要の急上昇には懸念がありますが、今回10%削減を達成したことをきっかけに、いかに永続的に7%削減しながらグリーンリカバリーを促進していくのかを考える道筋が見えることを期待したいです。

【URL】Preliminary US Greenhouse Gas Emissions Estimates for 2020

ファッションのサステナビリティを再定義。必要な目標とは?(01/14)

加速する気候変動への対応が迫られ、ファッション業界も環境負荷の削減を通じてサステナビリティに取り組んでいます。しかし、この業界でのサステナビリティへの取り組みは本質的ではないとの指摘も。オーガニックコットンやリサイクルなどの動きが加速する一方、「サステナビリティ」の言葉を用いたブランディングが結果として大量生産・大量消費に繋がっているという問題や、そのような商品が高価で手の届かないものになってしまっている現状があります。一体誰のためのサステナビリティなのかを再考し、より深い消費者との関係を築いていく必要がありそうです。

【URL】Redefining sustainability for 2021: The new priorities

WEF、グローバルリスク報告書発行(01/19)

世界経済フォーラム(WEF)がグローバルリスク報告書を公表しました。今後10年間で最も可能性の高いリスクとして、「異常気象」「気候変動対策の失敗」「人為的な環境被害」をあげています。さらに最も影響が大きいリスクとしてはやはり「感染症」がトップとなり、今後2年間で最も差し迫った脅威には、「雇用と生計の危機」、「広範な若者の幻滅」、「情報格差」などがあげられています。本レポートではグリーンリカバリーに向けたガバナンスのあり方として、リスク影響のフレームワークの策定、利害関係者を適切に分析できるリスクチャンピオンへの投資、正当なコミュニケーション、官民パートナーシップを提案しています。

【URL】The Global Risks Report 2021

ジョー・バイデン氏大統領就任(01/20)

ジョー・バイデン氏は1月20日、大統領に就任し、初日にはパリ協定への復帰に署名するなど、抜本的な気候変動対策に向けて乗り出しています。1月28日には、公約に掲げていた2050年までにカーボンニュートラルを実現する目標や公有地での石油や天然ガスの新たな掘削禁止や洋上風力発電の倍増などについて大統領令に署名しています。4月には気候変動サミットの主催も予定しており、世界を主導する米大統領としての再出発が期待されていますが、前政権からの急進的な変革内容にエネルギー業界の反発もあるなか、どのように両氏が誰も取り残さないコミュニケーションを取っていくのか、注目が高まります。

【URL】FACT SHEET: President Biden Takes Executive Actions to Tackle the Climate Crisis at Home and Abroad, Create Jobs, and Restore Scientific Integrity Across Federal Government

日産が2021年に発表する「ローグ」、生産工程にアルミニウムのリサイクルシステム採用(01/25)

日産は、新型車「ローグ」のボンネットやドアなどの部品に使用されるアルミニウムについて、環境負荷を抑えるためのシステムを構築しました。新たに採用した、空気圧を利用したプレス機械により、部品製造時に残ったアルミニウムを高品質な状態でサプライヤーに返却することが可能になり、新たなアルミニウム合金シートとして再び日産に供給される仕組みとなりました。スクラップとなるアルミニウムのリサイクルにより、原材料から同等の量を作り出すために必要なエネルギーの90%以上が削減されます。また、「日産グリーンプログラム」のもと、2022年に生産される自動車の原材料の30%を新規採掘資源に依存しない方法で調達することを目指すなど、サーキュラーエコノミーへの移行の動きを加速させています。

【URL】Nissan Rogue built using a ‘closed-loop’ recycling system for aluminium

2021年版「世界で最も持続可能な企業100社」が発表。コロナやBLMで新指標も導入(01/25)

カナダ・Corporate Knightsは、サステナビリティやESGの企業格付けランキングとして知られる「Global 100」の2021年版を発表しました。仏電気機器メーカーのシュナイダーエレクトリックが1位となったほか(前年29位)、日本企業からはエーザイ(16位・医薬品・初)、シスメックス(32位・医療機器・初)など5社がランクイン。ランクインした100企業の多くは気候変動対策のイニシアチブに参加し、再生可能エネルギーへの投資を進めているほか、容器包装のサーキュラーエコノミーへの対応も勢いを増していることが明らかになりました。また、パンデミックやBLM(Black Lives Matter)運動などの社会的状況を鑑み、有給の病欠制度や役員の人種の多様性といった新たな指標も追加されました。まさにサステナビリティの定義が常にアップデートされていることを示しており、企業もこれに対応していく必要があります。

【URL】The 2021 Global 100: How the world’s most sustainable companies outperform

サーキュラーエコノミー戦略で世界の温室効果ガス排出量39%削減可能(01/26)

オランダ・アムステルダムに本拠を置くサーキュラーエコノミー推進機関のCircle Economyは1月26日、世界経済フォーラムのダボス・アジェンダ・ウィークのなかで、最新の「Circularity Gap Report(サーキュラリティ・ギャップ・レポート)2021」を公表しました。その報告書によると、サーキュラー戦略によって、2019年の温室効果ガス排出量の39%にあたる228億トン(CO2換算)を削減し、気候崩壊を防ぐことに大きく寄与することが分かっています。この228億トンとはバージン資源からの製品製造によるもので、製造工程にサーキュラーエコノミーの戦略を用いることで、世界経済が採掘・消費している化石燃料・金属・バイオマスの量を飛躍的に削減できるとされています。

【URL】THE CIRCULARITY GAP REPORT 2021

IDEAS FOR GOOD Business Design Lab2021年1月のおすすめ記事

企業のパーパスを伝える。ソーシャルグッドな企業のコーポレートコミュニケーション事例とは?

SNSやデジタル技術の活用をはじめ、多様化する企業と消費者のつながり方。そしてサステナビリティへの取り組みも声高に叫ばれる中、「いかに一貫したブランドストーリーを伝えるか」の重要性が高まっています。本記事では、自社のパーパス(社会的存在意義)を伝え、人々の共感や幸福感を生む効果的なコミュニケーション事例やヒントをご紹介しています。

サステナブルなビジネスアイデアを高校生と考える。BRITA Japanと亀岡市のプラごみゼロアクション

高校生の視点から見えるサステナビリティ変革のヒントを行政や企業が学ぶというイベントのレポートです。パートナーシップと聞くと業種や組織を超えた連携を連想する方も多いかと思いますが、さらに世代を超えて学びあう姿勢の重要性について紐解きます。

ホテル業界必見!サステナブルなアメニティ選び、どう工夫する?

ホテルの宿泊客が変わるたびに取り換えられる、歯ブラシや石鹸などのアメニティ。衛生面の問題から、使いかけや未使用のものも廃棄されてきましたが、地球環境への影響を考慮し、アメニティのあり方も見直されつつあります。今回は、サステナブルなアメニティのアイデアをご紹介します。

IDEAS FOR GOOD 編集長のコラム

サステナビリティをジブンゴト化する、余白とクリエイティビティと愛着

皆さんこんにちは、IDEAS FOR GOOD編集長の加藤です。早いもので2021年もすでに1か月が経過しましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか?新年に今年の目標を立てたという方は、このタイミングで改めて目標を見返してみるのもよいかもしれません。

私は、弊社が運営する横浜のサーキュラーエコノミー推進メディア「Circular Yokohama」が主催する学習プログラム「Circular Economy Plus School」が今年の1月からスタートし、その準備と運営に追われてあっという間に1か月が終わってしまいました。本日は、1月27日に開催された同プログラムの第4回「サーキュラーエコノミーとまちづくり」のセッションで学んだことについてお話をしたいと思います。

地域のなかで循環経済を実現するうえで重要なことは、消費者としてではなく、生産者としてまちに関わる人々を増やしていくという点にあります。特に首都東京に隣接しており、労働人口の多くが東京へと通勤している横浜市は、約370万人という人口規模に対して産業が少なくほとんどの人々が消費者として暮らしており、少子高齢化と相まって生産と消費のバランスが偏っているという課題があります。

このような地域では、食やエネルギーの地産地消、地元や近隣からの建築資材調達なども含め、ただまちを消費するのではなく、まちのつくり手を増やしていく必要があり、第4回のセッションはまさにこの「まちのつくり手をどう増やすか?」がメインテーマとなりました。

セッションでは、横浜市青葉区に拠点を構え、ウェブメディアとリアル拠点の双方を活かして循環型のまちづくりを進めてきたNPO法人森ノオトの北原まどかさん、都筑区にある工場をリノベーションして「住む」「働く」「創る」が融合したものづくり拠点「THE GUILD IKONOBE NOISE」をオープンしたplan-Aの相澤毅さん、そして道路をテラス席にする「かんないテラス」など、ポストコロナにおける公共空間の新たな活用方法を模索しているオンデザイン・パートナーズの西田司さんをゲストに迎え、サーキュラーエコノミーとまちづくりの関係について様々なディスカッションを行いました。

ゲストの皆さんはそれぞれ異なる立場からまちづくりに関わっていますが、その中でも三者の取り組みには共通するキーワードが存在していました。それは、ずばり「余白」「クリエイティビティ」「愛着」の3つです。

いずれもまちづくりに限らず持続可能な商品・サービス開発において非常に参考になるエッセンスだと感じたので、一つ一つ説明していきます。

つくり手になれる「余白」のデザイン

三者のまちづくりにおけるアプローチで共通していたのは、まちで暮らす人々が、すでに作られたものや用意されたものを消費者として利用するだけではなく、自らが作り手となり、関われる「余白」がプロジェクトの中にデザインされているという点です。空間においても製品・サービスにおいても、それをどのように使用するかが最初から完全に設計されきってしまっていると、そこに関わる人々は設計者の意図通りに使うことしかできません。これは、まさに消費者として対象に関わっている状態です。用意された選択肢は使うか使わないか、買うか買わないかだけであり、生産活動とは分断された状態です。

このようにすでに完成されたものを提供するのではなく、人々と空間や製品・サービスの設計プロセスを共有し、そのプロセスに参加して一緒につくりあげていく余白を残しておくことで、消費者は生産者へと生まれ変わり、提供者と利用者は利害が対立するゼロサムの関係を脱却し、同じビジョンに向かって進む共創の関係を築き上げることができます。

別の言葉で言い換えると「関わりしろ」とも言えますし、英語では「Participatory Design(参加型デザイン)」という表現もあります。プロセスの共有は透明性の向上にもつながり、結果としてステークホルダーからの信頼を得やすくなります。まちづくりやビジネスの現場では日常茶飯事ですが、利害が対立しそうなステークホルダーとプロジェクトを進めていく上では、どのように相手に自分と同じ「つくり手」になってもらい、最終的なアウトプットに関与してもらうかが鍵を握ります。

「余白」が「クリエイティビティ」を刺激する

つくり手になれる「余白」は、そこに関わる人々のクリエイティビティを刺激します。何かを「つくる(クリエイトする)」という行為そのものが体験としての価値を持っており、それだけで人々はワクワクします。

しかし、余白とはいっても完全に真っ白なキャンパスを渡してしまうと、逆に何をしてよいか分からなくなってしまう人もいるため、余白の中に一定の制限を加える「補助線のデザイン」も重要となります。

また、余白があるということは、そこには多様な用途が生まれる可能性があるということでもあります。多様な用途が期待できる場所には、分野の違う多様な人々が集まりやすくなります。そして多様な人々が交わることで各自のインプットが多様化し、さらに人々のクリエイティビティは刺激されていきます。多様性はクリエイティビティの母とも言われますが、その多様性をつくり出すのもまた「余白」だと言えます。

オランダ・アムステルダムのサーキュラーエコノミーの事例を紹介すると、よくデザインやアイデアがお洒落で洗練されており、クリエイティブだという感想をいただきますが、アムステルダムという街が持つクリエイティビティも、まさにこの余白と多様性から生まれていると感じます。

それを象徴するのが、アムステルダム市のキャッチコピー「I amsterdam」です。一度でもアムステルダムを訪れたことがある方は、このキャッチコピーやロゴを目にしたことがあるかと思います。これは、アムステルダムというまちは「I(わたし)」という市民一人一人からできているという意味が込められています。つまり、まちをつくるのはそこで暮らす人々であり、行政が与えるものではないのです。

「愛着」がサステナビリティにつながる

余白が与えられることで人々はクリエイティビティを発揮し、「つくり手」としてまちに主体的に関わるようになります。そして、当然ながら人は自ら創作に携わったものには愛着を感じ、大切に扱おうと考えるようになります。自分で育てた野菜や果物、自分で作った料理や美味しく感じるというのも同じ理由です。

なぜそう感じるかというと、「つくり手」になることで、自分の思い通りのものが作れるというだけではなく、つくり手の苦労や手間が実感できるからではないかと思います。私たちが手書きの手紙をもらうとより嬉しく感じるのも、書き手の手間を実感できるからです。

このように、自分が作ったものの価値を高く見積もろうとする傾向は「IKEA効果」とも言われており(IKEAの家具は自分で組み立てる必要があり、それにより愛着が生まれる)、まちづくりだけではなく食や商品、組織づくりなどでも同様のことが言えます。つくり手になるという体験こそが対象に愛着を生み出し、それがよりサステナブルな消費行動につながるのです。

まとめ

いかがでしょうか。企業のサステナビリティ推進や商品開発の現場ではよく「サステナビリティをジブンゴト化すること(してもらうこと)が難しい」と耳にすることがありますが、その課題を解決するシンプルなアイデアは、相手に「つくり手になれる余白を与える」ということなのかもしれません。

消費者の視点に立つと、例えば「食」であれば野菜を育ててみる、コンポストをしてみるといった小さな取り組みからでもよいでしょうし、「エネルギー」であればオフグリッドの太陽光発電設備を自作してみるというのも一つかもしれません。他にも、DIYで家具を作ってみたり、ボランティアとしてまちの清掃活動に参加してみるなど、少しでも「つくり手」になるきっかけがあれば、消費者はどんどんサステナビリティをジブンゴト化していく可能性があります。

逆に持続可能なサービス・商品の開発に取り組む企業は、完成品を提供するのではなく、生産体験そのものを商品・サービスにしてしまうなど、消費者が「つくり手になれる余白」を提供するという選択肢を検討してみてはいかがでしょうか。つくるプロセスを共有することで顧客は共創パートナーとなり、よりブランドに対する愛着も高まります。

サーキュラーエコノミーは、使用後の製品回収、リユース/リファービッシュ/リサイクルなどを通じて消費者が生産プロセスの一部に取り込まれるという意味で、生産者と消費者の境目をなくす仕組みだとも言えます。最近では「Right to Repair(修理する権利)」という概念に注目が集まっていますが、これもある意味では消費者がリペア(修理)という行為を通じて生産の一部を担っていると捉えることもできます。

つくり手になれる余白のデザイン。サステナビリティやサーキュラーエコノミーをテーマにビジネスやまちづくりに取り組んでいる方は、ぜひ意識してみてはいかがでしょうか。

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